ベトナム:新指導部は人権状況の改善を

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2021年1月27日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ベトナム
トピック:

(C) Kham / AFP
(C) Kham / AFP

ベトナム共産党の党大会が、1月25日から2月2日まで開催される。この大会を機にベトナムは、表現、結社、集会の自由に対する弾圧をやめるべきだ。政府批判への当局の弾圧は、現行の指導部の下で激しさを増した。党大会では次期指導部が選出される見通しであり、指導部の交代は人権状況を変えるまたとない機会だ。

党大会は、党の指導部を選び、取り組む政策の優先順位を決める重要な場だ。選ばれた指導部は後日、国会の承認を経て国の最高指導部になる。ベトナムでは、憲法で「共産党が国を治める」と定められているため、最高指導部が、強大な権力を握る。

ベトナムでは、多くの市民の経済的・社会的権利の実現に取り組み、それなりの成果をあげてきた。しかし一方で、表現、結社、集会の自由の権利が抑圧され損われてきた。

急増する良心の囚人

アムネスティは、自身の権利を平和的に行使しただけで拘束されている人を「良心の囚人」と呼んでいる。ベトナムには現在、170人の良心の囚人がいる。数値の比較が可能になった1996年以降で最も多く、前回の党大会の年の84人からこの5年で倍増した。

アムネスティは、ベトナムをはじめ世界各国に対して不当に拘束するすべての良心の囚人の即時無条件の釈放を求めている。

党大会目前の摘発

この数カ月、表現の自由への弾圧が激化している。1月5日には、ベトナム独立ジャーナリスト協会の会員3人が、刑法117条違反で実刑判決を言い渡された。117条は、「国家に敵対する目的で、情報、資料、記事を作成、保存、拡散する行為」を禁じている。

逮捕される前、協会はEU(欧州連合)への書簡の中で、ベトナム政府が人権状況を改善する措置を取るまで、ベトナムとの自由貿易協定を締結しないよう求めた。ジャーナリスト協会のこの行為が刑法117条に反するとみなされた模様で、書簡に署名した協会創設者が15年、会員2人が11年という禁錮刑を受けた。

この条項は、ベトナム共産党の利益に反する発言を許さない同党によって、ジャーナリストやブロガーの声を封じる手段として使われてきた。「ベトナムは国家批判を一切容認しない」というメッセージであり、活動家やジャーナリスト、ブロガーなどにとって極めて危険な国だと言える。

抑圧を許す法律をやめるべき

2018年に現刑法が施行されてから3年、117条違反で少なくとも36人が逮捕され、5年から15年の刑を受けている。刑法331条(民主的自由を乱用して、国の利益を侵害する)も、取り締まりでしばしば適用され、これまでに23人が、331条違反で6カ月から5年の判決を言い渡された。

いずれの条項も同国の人権義務に違反する。不当に自由を制限する他の法律同様、廃止または抜本的な改正が求められる。市民的および政治的権利に関する国際規約(自由権規約)の実施状況を審査する国連自由権規約委員会は、一昨年の審査で、「ベトナムの国内法の枠組みは、国際規約と相容れないままだ」と断じた。具体例として、117条と331条、サイバーセキュリティ法を指摘した。

大手IT企業は検閲加担をやめるべき

報道には厳格な検閲体制を取るベトナムだが、ソーシャルメディアはここ数年、急速に普及し、市民が広く議論し意見を交換できる場となった。

だがこの動きは、インターネット上の投稿や発言の検閲や規制の強化にもつながっている。アムネスティの調べでは、政府に批判的と見られる言動の摘発件数のうち41パーセントが、ソーシャルメディアの投稿や発言だった。当局はさらに、フェイスブックやユーチューブなどのIT大手に、検閲への一層の協力を求めている。

国の指導部の交代を間近に控え、当局とIT大手は、国際人権法と国際人権基準に従った対応を取り、インターネット上の表現の自由の権利を保護しなければならない。

長年の人権問題に終止符を

ベトナム共産党と指導部には、早急に取り組むべき人権問題が山積する。死刑制度がいまだに存続し、市民の生存権がおびやかされている。アムネスティはベトナムに対しても、残忍で非人道的、品位を傷つけるこの刑罰の廃止を繰り返し求めてきた。また、民族的・宗教的少数派は、深刻な差別にさらされ、女性や少女に対する暴力が絶えないという事実も深刻な問題だ。死刑制度の維持から女性の権利の侵害や表現の自由の制限まで、現行の政権による不正義は、ベトナム市民に絶え難い苦痛を与えている。

今後5年間の政策を決定する党大会を前に、共産党は、国際人権基準に沿った目標を設定し、市民一人ひとりへの不正義を正すべきだ。

アムネスティ国際ニュース
2021年1月20日

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