ベトナム:総選挙を控え強まる取り締まり

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2021年4月13日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ベトナム
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(C) Reuters
(C) Reuters

5月23日に総選挙を控える中、ベトナム当局は、独立立候補者らを逮捕し起訴した。当局は、独立候補者や国に批判的市民の弾圧をやめるべきだ。

当局は、刑法117条(国家を批判する目的で情報や物品の作成、保管、拡散)の容疑で独立候補者2人と医師1人を逮捕・起訴した。有罪なら20年以下の刑を受ける。

また、選挙に関わる意見を言ったり、国の政策を批判したりした市民多数が、警察当局から嫌がらせや脅しを受けている。アムネスティは、こういった情報を信頼できる情報筋から多数、受け取っている。今後、取り締まりがさらに強化されることが懸念される。

当局は、弾圧を停止し、市民が報復をおそれることなく自由に発言できるようにしなければならない。最近行われたベトナム共産党新指導部の人選は、ベトナムの人権尊重への取り組みの先駆けになるべきだった。しかし、新指導部はこれまでのところ、従来と同様の嫌がらせや侵害に躍起になっているようにみえる。

ベトナム政府が、国連人権理事会の理事国に立候補を目指しているとき、足元では治安当局による大規模で露骨な人権侵害がはびこる事態になっている。

ベトナムは、表現や結社の自由、メディアの自由などの権利を尊重、保護、促進を実現する義務を負う。当局は、立候補者を含め全市民が、平等で差別のない扱いを受けるよう保障しなければならない。平等で差別のない扱いは、ベトナムが批准する各種の国際人権条約や基準の基本原則だ。

悪法の乱用

3月27日、ハノイの選挙区から立候補するレ・チョン・フン候補は、「国家に反対する目的で情報、資料を作成、保管、拡散した」として、刑法117条違反で、自宅付近で逮捕された。市民ジャーナリストのフンさんは、フェイスブックで政治や社会問題を配信する団体の一員でもある。

3月10日、立候補の意向を示していたニンビン省のチャン・コック・ハインさんが、逮捕・起訴された。ソーシャルメディアで人権や政治の問題で頻繁にコメントしており、3月6日には国の省庁批判を展開し、法の支配の尊重を求めていた。

3月22日、ゲアン省の医師グエン・ヅエン・フォンさんが逮捕された。フォンさんは、フェイスブックで国の政策についてコメントした。候補者だけでなく、ジャーナリストやブロガーら幅広い人びとが、取り締まりの対象になっていることがわかる。

3月30日には、ラムドン省の政治活動家ヴー・ティエン・チさんが、政府批判の投稿で実刑10年の有罪判決を言い渡された。

アムネスティは、刑法117条がベトナムの国際的人権義務に反しており、廃止あるいはベトナムも批准する自由権規約にそって大幅に改正することを繰り返し求めてきた。逮捕された人たちの容疑に何の根拠もないことは明らかで、権利を尊重する社会ではありえない暴挙だ。117条を速やかに廃止し、起訴された3人全員を直ちに釈放し、容疑を取り消すべきだ。

活動家への嫌がらせ強まる

他の活動家やブロガー、団体も、しばしばソーシャルメディアへの投稿をめぐり選挙前の嫌がらせや脅迫を受けている。また、他の候補者も、警察当局から嫌がらせや脅迫を受けているという。

3月11日、女性の人権擁護活動家が自宅前で逮捕され、15時間も拘束された。取り調べでは、選挙への関与について聞かれ、立候補しないと誓約する文書に署名を求められた。3月26日には、警察署で研修を受けさせられ、人権活動について取り調べを受けたという。

3月19日、政治活動家で市民ジャーナリストのレ・ヴァン・ズンさんが、逮捕され、フェイスブックのコメントについて聞かれ、3時間拘束された。

3月29日、情報通信省は選挙について誤情報を流布したとして、フェイスブックユーザーの1人に750万VND(約35,800円)の罰金を科した。

一連の当局の対応は、表現の自由や結社の自由などの人権行使に対する報復であり、国家の圧力をおそれて権利の自由な行使を自粛する空気を生み出している。

当局は、選挙をめぐる脅迫や嫌がらせを直ちにやめるべきだ。また、ベトナムが国連人権理事会の理事国に立候補を表明するのであれば、世界がベトナムの人権侵害を一層厳しく監視するようになることを覚悟しなければならない。

背景情報

ベトナムの憲法第4条は、ベトナム共産党を「国家と社会の指導的勢力」としており、あらゆる政治的批判を禁じることの正当化に、長い間、利用されてきたされてきた。

政府を批判・抗議すると常に弾圧を受けた。アムネスティは昨年12月、ソーシャルメディアなどを利用した活動への報復として、しばしば市民が当局の取り締まりを受けることを調査報告書で明らかにした。

ベトナムは2月、国連人権理事会の理事国に立候補する意向を表明した。人権理事会設置のきっかけとなった国連総会決議には、「人権理事国の選出にあたっては、候補国の人権の促進・保護への貢献度を考慮に入れること」とある。

アムネスティ国際ニュース
2021年4月1日

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