- 2020年6月 6日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:ネパール
- トピック:
© Amnesty International
ネパール中央部ルーパンデヒ郡の村で5月23日、12才の少女を含むダリット(カーストの最下層民)5人が惨殺される事件があった。少女の遺体は、木に吊るされている状態で発見された。
少女は事件前日、自分を強かんした上位カーストの男と無理やり結婚させられていた。警察の捜査で、殺される直前も強かんされていたことがわかっている。
同じ日、ルーパンデヒ郡北のルクム郡でも、ダリットの若者グループが、訪れた村で上位カーストの集団に襲われて5人が殺された。事件の背後には、5人のうちの1人の男性(21才)が、上位カーストの少女(17才)と交際していたことがあった。その男性は、撲殺された後、近くの川に捨てられた。
当局は、これらの事件を直ちに捜査し、加害者を裁き、犠牲者の死が報われるようにしなければならない。
ネパールでは、法律と政治が十分機能せず、ダリットへの暴力がまん延し、今回のような凄惨な事件が起きている。
いずれの事件もその背景には、カースト意識に基づくダリットへの根深い差別や暴力がある。また、両事件とも村の幹部の関与が取り沙汰されている。
ルーパンデヒの事件では、12才の少女に自分を強かんした男との結婚を強要したのは村の幹部だった。ルクムでも、村の幹部が襲撃に関与した疑いがあり、拘束されている。そのため、村とは独立した、実効性ある捜査が不可欠だ。
裁判にあたっては、被害者や犠牲者家族が納得できる司法手続きを踏んだ上で、容疑者は、裁きを受けなければならない。
2つの凄惨な集団殺人は、ダリットに対するカースト差別、暴力を助長する構造的な問題を浮き彫りにしている。
ダリットの保護対策にほとんど進展がないことも、さらなる暴力につながっている。法律や政策面でのダリットを保護する仕組みづくりが、早急に求められている。
背景情報
5月初め、公共施設での葬儀を予定していたダリット家族が、施設に入ることを拒否されて葬儀ができなかった。この2カ月間で報告されたカーストに基づく差別と暴力は10件以上に上っている。
あらゆる形態の人種差別撤廃に関する国際条約(人種差別撤廃条約)により、ネパールは、カーストに基づく暴力や差別を防止・処罰するための対策実施を義務付けられている。
ネパールの憲法と特別法は、カーストに基づく差別を禁止しているにもかかわらず、ダリットは、差別と暴力に直面する状況が続いている。法律は機能せず、ダリットを巻き込む犯罪が放置されることも少なくない。ダリットの権利のために活動する人たちは、加害者を保護する姿勢が犯罪を野放しにする大きな要因の一つだとしている。
ネパールは、ダリットの命と尊厳を保護するため、ダリットをめぐる犯罪の不処罰を断ち切らなければならない。
アムネスティ国際ニュース
2020年5月28日
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