エチオピア:警官による蛮行が野放し

  1. ホーム
  2. ニュースリリース
  3. 国際事務局発表ニュース
  4. エチオピア:警官による蛮行が野放し
2020年6月18日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:エチオピア
トピック:

(C) Victor Ndula
(C) Victor Ndula

エチオピアの治安部隊は、武装集団の襲撃や部族間衝突への対応で、強かん、放火、超法規的処刑などの残虐行為を行っていた。アムネスティは北部アムハラ州と南部オロミア州で現地調査を行い、2018年12月の1年間に起きた人権侵害を報告書にまとめた。

同国では最近、改革政策の一環で数千人が釈放され、市民の政治や社会への参加機会が増え、人権を抑圧するような法律が廃止されるなどの進展があった。そんな動きに水を差すような事態である。治安部隊の行為が、不問のままで終わるようなことがあってはならない。

2018年、アビィ・アハメド・アリ政権は、テロ組織に指定されていた党を含む野党の活動を解禁し、選挙への参加を認めた。政治家たちは、支持を得る手段として部族間や宗教間の敵意、軋轢、暴力を煽ったため、全9州のうちアムハラ州とオロミア州を含む5州で衝突が始まった。

これに対して政府は、国軍、連邦警察、各州・県・郡の警察隊、村のケベレ自警団と呼ばれる警備団などの活動を取りまとめる治安司令部を設置した。

選挙は今年8月に予定されていたが、新型コロナウイルス感染症で延期されている。選挙がいずれ近づけば各勢力や部族間の活動が活発化し、治安部隊による人権侵害や暴力行為も激化するおそれがある。政府は、法に基づき公正で正当な治安活動を行うよう治安部隊や警察を指導すべきだ。

殺害の共謀

アムハラ州では、2017年に2つの村の間で部族間の衝突が発生して以来、緊張が高まっていた。

2017年、少数部族のケマント族が、自らが住む地域を自治行政区と定めたため、アムハラ族との間で緊張が高まった。ケマント族の排除を求める声が上がる中、2019年の1月と9月、ケマント族とアムハラ族間の衝突が何度か発生した。

1月には、銃や手榴弾で武装したアムハラ族の警察、地元民兵、青年自警団らが、ケマント族居住地を襲撃し、家屋を焼き払い、金品類を奪い、58人以上を殺害した。村人は軍に助けを求めたが、軍は出動しなかった。

9月にもケマント族が襲撃を受け、43人が亡くなった。生き残った人たちはアムネスティに、自警団らが家々を次々に襲撃したり、手榴弾を投げ込んで家屋を一瞬にして火ダルマにしたりした様子を語った。

超法規的処刑

オロミア州で少なくとも39人が治安当局に殺された。その中には、「警察が来る」と警告しただけで頭部を撃たれた少年もいた。

オロミア州デグダ・ダワ郡の村で2018年12月、トラックで乗り込んできた兵士が、村人を無差別に銃撃し、13人が亡くなった。目撃者によると、3週間前に兵士1人が村人に石打ちで殺されたことへの報復だった。

昨年1月と3月には、デグダ・ダワ郡の村でバイクに乗っていた若者計4人が射殺された。

残忍な殴打、消えない傷跡

政府は昨年、オロミア州での武力衝突や襲撃の取り締まりの一環として、少なくとも1万人を一斉検挙した。オロモ解放戦線から分裂した自称「オロモ解放軍」を支援し、情報を提供したという容疑だった。

拘束は、一家全員だったり、容疑者本人が不在のために妻や子どもたちだったりもした。多数が何度も逮捕され、5カ月間も勾留された人、暴行や政治的な洗脳を受けた人もいた。中には、妊娠中だと訴えても暴行を受けて流産した女性もいた。しかし、結局は誰一人起訴されずに解放された。

住民を守るべき治安当局が、住民の命を奪い、家屋を破壊するのは、決して許されることではない。殺人、放火、略奪などの犯罪を犯した兵士や警官は、法に基づいて裁かれるべきだ。また、国の治安関係者に対し、人権を軸に据えた警察活動に関する研修を受けさせるべきだ。

放火、強制立ち退き

昨年3月以降、警察はオロミア州グジ県内の少なくとも60世帯の家屋に火をつけて、住人を追い出した。家の中に人がいても容赦無く火を放った。

また、300世帯が、強制的に立ち退かされ、家財道具や収穫した農作物を残し、着の身着のままで都市郊外への引越しを強要された。

「コーヒーの収穫時期だったのに」と農民は嘆いた。長老が農村に戻してくれるよう役人に頼み込んだが、「オロモ解放軍を支持しているからダメだ」と言われた。

治安当局が、部族間や武装勢力間の衝突を阻止せず、住民には不法な武力を行使している状況は、悲劇としか言いようがない。当局は、強制立ち退きに遭った住民が直ちに自宅に戻れるよう手を打つべきだ。

人には、それぞれの政治的意見や信条を持つ自由がある。エチオピア当局は、このことを十分認識し尊重しなければならない。誰を支持するかの選択の権利や表現の自由の権利は、何人にも保障され、保護されている。政治的選択で殺されたり、犯罪者扱いを受けたりすることは、決してあってはならない。

アムネスティ国際ニュース
2020年5月29日

英語のニュースを読む

関連ニュースリリース