エチオピア:ティグレ州での暴虐を許す国際社会の緩慢な対応

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2021年5月19日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:エチオピア
トピック:地域紛争

© UNHCR/Hazim Elhag
© UNHCR/Hazim Elhag

この6カ月間、エチオピア北部ティグレ州では、武力衝突が激化し、凄まじい人権侵害や国際人道法違反の行為が繰り広げられてきた。アフリカ諸国をはじめとする国際社会は、違法行為に歯止めをかけるために直ちに声を上げ、踏み込んだ対応を取るべきだ。

昨年11月4日に戦闘が始まって以来、何千人もの市民が殺され、数十万人が州内の他地域へ避難し、6万3千人がスーダンに逃れた。アムネスティほか複数の団体が、戦争犯罪にあたる行為や人道に対する罪のおそれがある行為などが行われてきたことを確認している。女性や少女が、エチオピアやエリトリアの兵士らに集団強かんを含めた性暴力を受けたという信ぴょう性の高い報告もある。

人権侵害や国際法違反にあたる行為であることを示す証拠には事欠かない中、国連安全保障理事会は何カ月も静観するだけだった。しかし、ここにきて安保理はようやく、深刻さを増すティグレ州の事態に懸念を表明した。

全陣営が関わる違法行為

アムネスティは、エチオピア政府に対してティグレ州への立ち入り許可を求めたが、回答は得られず、現地に入ることができなかった。そのため、人権侵害を受けたという情報を得ても、通信も厳しく制限される中、情報の真偽の確認は容易ではなかった。

一方でアムネスティは、公開されている衛星写真や動画を利用したり、ティグレ州の市民に接触したりしてきた。州内の住民には電話で、スーダン東部に逃れている人びとには対面で、話を聞いた。これらの手法で、数々の残虐な行為についての詳細な情報を得ることができた。

なかでも凄惨を極めたのが、ティグレ州西部のマイカドラで昨年11月9日と10日にあった大規模な虐殺だ。ティグレ人民解放戦線(TPLF)とされる集団が、市民数百人を殺害した。その後、報復としてマイカドラのティグレ住民が襲われ、殺害されたり、金品略奪、監禁などの被害に遭ったりした。

エリトリア軍は昨年11月28日、アクスムの市民数百人を殺害した。この行為は、人道に対する罪にあたる可能性がある。さらに今年4月12日には、アドワの住民に対し無差別に発砲し、3人を殺し、19人を負傷させた。また、アムネスティとCNNの合同調査で、エチオピア軍が1月15日、アクスム近郊のマヒベレ・デゴで恣意的に住民を処刑していたこともわかった。

2月下旬、ティグレ州入りを許された国際メディアは、州内であった残虐行為を立て続けに報じた。その中には、アムネスティなどがすでに公表していた行為を裏付ける報道もあれば、新たに発覚した残虐行為の記事もあった。

新たに明らかになった残虐行為の一つが、民族浄化にあたる可能性があるティグレ州西部での襲撃だ。ティグレ州西部を実効支配する政府寄りのアムハラ人の特殊警察や民兵が、数万人のティグレ市民を襲撃し居住地から追い出した。この襲撃が民族浄化にあたるかどうか、アムネスティは現在、事実確認に向け情報を収集している。

大勢の女性や少女が、強かんやジェンダーに基づく暴力を受けたという報告もある。国連機関や現地で活動するNGOは、「女性や少女に対する暴力、特に痛ましい性暴力の急増に驚く」として、「被害住民への対応がまったく追いつかない」と語る。一方、複数の人道団体によると、ティグレ州各地の病院などの医療機関が、攻撃や略奪を受けているという。

世界が注視する中、ティグレ州の女性や少女が性的暴力に直面しているのは、理解を超える。一方、病院や人道支援団体は、紛争で物資の多くが破壊され、支援体制が整っていない。

人道支援への妨害と飢饉のおそれ

アムネスティは、ティグレ州の紛争に関わる全勢力に、現地での人道支援を無制限に認めるよう繰り返し求めてきた。4月27日現在、国連は、「状況は改善されつつある」としながらも、「依然不安定で、支援に関わる団体による迅速な活動が妨げられている」と述べた。

3月下旬、国境なき医師団のスタッフは、州都メケルで車で移動中に2度、妨害を受けた。1度目は、路傍で兵士らが恣意的な処刑をしている時だった。2回目はその後、走行中に兵士に止められた時で、エチオピア人運転手が引きずり出されて銃で殴られ、「殺すぞ」と脅された。

多数の農民が土地を追われたという情報や、作物が踏み潰され、穀物店が略奪されたという情報が届いており、国連機関などが、深刻な食糧不安や飢饉が起きるおそれがあるとして注意を呼びかける事態になっている。

一方、エチオピアの他の地域、特にアムハラ州、ベニシャングル・グムズ州、オロミア州などでは、市民に対する暴力や人権侵害が増えている。昨年11月以降、オロミア州西部で武装勢力がアムハラ州から逃れた住民を殺害したり、追放したりしている。

いずれの側が加害者かを問わず、重大な人権侵害の申し立てに対し、国際的で独立した立場からの調査が不可欠であり、違法行為をした者は、責任者を含めて必ず処罰されるという明確なメッセージを送る必要がある。

国際社会が、ティグレ州の紛争におざなりな対応を続ければ、すでに憂うべき状況が、まったく手の施しようがない事態に陥るおそれがあることを忘れてはならない。

アムネスティ国際ニュース
2021年5月4日

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