- 2020年8月 3日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:チュニジア
- トピック:
(C) GettyImages
チュニジア南東部の都市タタウィンで6月20日から23日にかけて、高い失業率に対する国の無策に抗議する座り込みやその抗議への対応に反発する市民のデモがあり、多数の若者や市民が警官の暴行や催涙ガス攻撃を受けて病院に運び込まれた。
過剰な力で座り込みを排除し、抗議する市民に催涙ガスを発射した警察の対応は、言語道断であり、第三者による徹底した捜査を受けるべきだ。
アムネスティは、座り込みに参加した若者、見物人、現場にいた記者、催涙ガスで入院した人たちに対応した医療従事者など16人に聞き取りをした。また、座り込みや警察の対応を撮った写真や動画、内務省や地元当局の発言なども検証した。
その結果、警官が抗議する人たち多数を不当に拘束し、殴打したり、引きずったり、催涙ガスを発射したりするなど過剰な力を行使していたことを確認した。当局の対応は、集会や表現の自由の権利を踏みにじるものだった。
6月8日、就業機会を増やすという3年前の約束を守らない政府に抗議する人たちの座り込みが始まった。石油基地に通じる道を封鎖する形で多数の座り込みテントが張られた。その結果、タンクローリーの往来ができなくなった。
座り込みは平穏のうちに行われてきたが、6月20日夜、状況は一変した。
突然、警察が現れ、座り込みの排除に乗り出し、テントなどを取り崩しはじめた。若者たちを引きずり出し、警棒で殴りつけ、足で蹴り上げた。催涙ガスも使われた。
偶然、テント内にいあわせた支援者の男性(49才)は、逃げるときに警察車両に轢かれ大怪我を負った上に、激しい暴行を受けた。
警察に拘束された一人で、座り込みのリーダーを務める男性によると、11人が逮捕され、数時間留置された。ただ、その男性だけは3日間、留置された。
暴力的な排除の様子は、すぐにフェイスブックに投稿され、翌21日には、投稿を見た市民が続々と抗議のデモに参加した。警察の暴力的介入への抗議と拘束された人たちの釈放を求めるデモは、各地で始まった。
警察はそのデモ隊に催涙弾を発射したが、デモ隊は投石で応じた。この衝突が、23日まで続いた。
警察の催涙弾攻撃は凄まじかった。
アムネスティの会員の一人は、「3日間、街は灰色のガスに覆われた。多数の住民は、家の中に入り込んだ催涙ガスを吸って呼吸困難になり、救急車を呼んでいた」と証言している。
地元の人権団体の調べによると、少なくとも180人がガスを吸って入院し、26人が催涙弾を受けて負傷した。また、ボランティアが通りに散乱した催涙弾の薬きょうを集めて数えたところ、その数は18,000個近くになったという。
同じ都市の他の地域でも抗議デモがあり、同様に多数の催涙弾が使用されたことが、市民記者らが投稿した動画で明らかになっている。
市民は、国が対策を約束したにもかかわらず、一向に仕事につけないことに抗議しているのだ。政府は、抗議する者たちを排除するのではなく、彼らが何度も路上で訴えざるをえない雇用不足の問題にこそ取り組むべきだ。
警察の暴力的な排除に公正な捜査がなければ、警察による暴力の再発は避けられない。違法な力の行使を指示した者は、責任を問われなければならない。
背景情報
チュニジアの都市タタウィンは、チュニジアの中でも仕事に恵まれず、失業率は同国で最も高い30%だ。
2017年4月、失業者らからなる若者グループによる座り込みが石油基地周辺であり、2カ月間続いた。石油業界に雇用増を求めるものだった。
翌月、排除に乗り出した警察と抗議する人たちとの間で衝突が起こり、突っ込んできた警察車両に一人の若者が轢かれて亡くなった。
これを機に、国と石油業界、市民、それぞれの代表3者による話し合いの機会がもたれた。何度かの折衝の6月、3者の間で合意が成立し、市民は座り込みをやめた。
合意は、「国と業界は、数千人分の雇用機会を作りだすことを約束する」というものだった。
しかし、その後も失業状況は改善されず、市民の間に、国と業界は2017年の約束を反故にしたという思いが募り、6月の座り込みと市民デモになった。
その後、再度の話し合いの場が持たれることになった。
アムネスティ国際ニュース
2020年7月21日
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