- 2023年2月28日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:チュニジア
- トピック:表現の自由
チュニジア当局は、カイス・サイード大統領の批判者や対抗勢力への弾圧を強めており、政治の混迷が続いた1週間で少なくとも10人を逮捕した。
大統領は2月14日、フェースブックの公式ページに動画を投稿し、逮捕者を「テロリスト」と名指しした上で、「食料価格を操作して社会不安をあおるなど、国の基盤の弱体化を図っている」と非難した。弁護士や家族によると、逮捕者の中には、複数の弁護士、元大臣、主要ラジオ局のディレクターなどが含まれているという。
謀議などのあいまいな容疑で人びとを逮捕することは基本的人権への侵害だ。今回の一連の逮捕は、大統領批判をはじめとした反対意見を押しつぶそうという試みだ。
サイード大統領はこの魔女狩りをやめるべきだ。当局はむしろ、崩壊するチュニジア経済で打撃を受けた人びとの支援に向けた具体的な対策を打ち出すことに力を注ぐべきだ。
少なくとも3人は、死刑の適用が可能な容疑で逮捕された。弁護士によると、当局は少なくとも5人について、その犯行の証拠を示さず、他の逮捕者の容疑についても根拠はあいまいなままだ。
逮捕者5人の弁護士や家族によると、テロ取締り警察による早朝や夜間の家宅捜索が繰り返し行われたという。24時間以上、弁護士と接触できなかった人も数人いる。
特に注目されるのは、地元でシンクタンクを運営するエタカトル党の元党員カヤム・ターキーさんの逮捕だ。弁護士によると、2月11日早朝、テロ取締り警察がチュニスにあるターキーさん自宅を急襲し、その後ターキーさんは、野党政治家や外国人とのやり取り、外国の外交官の自宅などについて取り調べを受けた。
また、公然と大統領を批判していた元野党の古参党員アブデラハミド・ジュラシさんや、別の野党の党員ヌーディライン・ビヒリさんも逮捕された。弁護士によると、ビヒリさんは、独裁への抵抗を呼びかけた発言をめぐり、「国家の本質を変えようとする企み」の容疑で逮捕された。ビヒリさんは2022年初頭にも恣意的な容疑でほぼ70日間拘束され、起訴されず釈放されたことがある。
さらに2月中旬、治安当局は、メディアで当局を批判してきた著名な弁護士兼政治活動家ラザール・アクレミさんと、大統領批判の声を報道していた人気放送局ラジオ・モザイクのディレクター、ヌーレダイン・ブウターさんを恣意的に逮捕した。
彼の弁護士も放送局の編成方針などについての質問を受けた。大統領は昨年11月18日、ラジオ・モザイクの取材で、この放送局の大統領報道についての不満をレポーターにぶつけた。
これまでアムネスティは、2021年7月25日にサイード大統領が権力を掌握した経緯を詳しく報告してきた。その日以来当局は、政権を批判した少なくとも32人を逮捕、尋問、訴追していある。
アムネスティ国際ニュース
2023年2月17日
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