- 2025年5月 1日
- 国・地域:チュニジア
- トピック:変革を求める中東・北アフリカ
4月19日、チュニス第一審裁判所は、野党の政治家、弁護士、人権擁護活動家など40人に、でっち上げの容疑で有罪判決を下し、禁錮13年から66年を言い渡した。この判決は、当局が反政権派の弾圧に手段を選ばないという憂慮すべき兆候と言える。この判決は正義を装った茶番であり、チュニジア当局が、国際的な人権義務と法の支配を完全に無視している証である。
政治家らは、人権を平和的に行使しただけで有罪になった。裁判では度重なる手続き違反があり、弁護権も公然と無視され、根拠のない容疑に問われた。当局は、政治的意図に基づく起訴で批判者を沈黙させるのではなく、人権を平和的に行使しただけで拘束されているすべての人を即時無条件に釈放し、不当な判決と刑を破棄しなければならない。
この裁判で標的にされた40人のうち、ジョウハー・ベン・ムバラクさん、カヤム・トゥルキさん、イサム・チェビさん、ガジ・チャウアチさん、リダ・ベルハジさん、アブデルハミド・ジェラシさんの6人が野党の政治家で、2023年2月に捜査が始まって以来、恣意的に拘束されてきた。
禁錮刑を受けた人の中には他にも、元与党で今は野党のアンナハダ党の幹部、ヌレディーン・ビリさん、サビ・アティグさん、サイード・フェルジャニさんなどが、政治的動機で拘束されていた。その他、リアド・チャイビさん、アーメド・ナジーブ・チェビさんなどは、欠席裁判で有罪判決を受けた。この裁判では、カメル・ジェンドゥビさん、アヤチ・ハマミさん、ボクラ・ベルハジ・フミダさんなどの人権擁護活動家や実業家、民間メディアの株主も標的にされている。
チュニジアの司法の独立性が、深く懸念される。行政当局による司法制度の頻繁な濫用と司法への介入は、被告の公正な裁判を受ける権利と法の支配を根本的に損なうことになる。チュニジア当局が、表現と結社の自由の権利など、国際人権義務を遵守することは極めて重要であり、野党の政治家、人権擁護活動家、政権批判者を標的にしてはならない。
裁判手続き上の不備と適正手続きの欠如が目立った今回の裁判の初公判は、3月4日に被告人不在のまま開廷された。その後の審理は4月11日まで、さらに4月18日まで延期された。弁護士会が裁判所から、テロ裁判は「現実的危険性がある」という意味不明の理由で、被告人は3月と4月に行われる裁判に刑務所からリモートで出廷するという通達を受けていた。この対応に、被告人と弁護団は、対面での出廷をする権利があると抗弁した。
3月30日、ジャウハル・ベン・ムバレクさんが、リモート審理に抗議してハンストに入った。4月8日には他の5人の被告人もハンストの決行を宣言した。2月に別件で13年の実刑を言い渡されたエンナハダ党の幹部サイード・フェルジャニさんは、「不公正で偏った判断だ」として、4月10日にハンストに入った。
初公判では、裁判所が被告人は出廷を拒否したと説明したが、弁護団側は、求めていたのは対面での出廷だとして、異議を唱えた。また、被告人が対面で出廷できるまで裁判を延長して欲しいという要求も、長期にわたる拘束の違法性(法律が定める最長の勾留期間14カ月を超えている点)に言及した主張も無視された。裁判所は裁判を閉廷し、その後、4月11日に審理を再開すると発表した。
4月11日の審理では、国内外のジャーナリスト数名が入廷を拒否された。チュニジア記者協会から非難の声が上がった。アムネスティ・チュニジアなど市民団体の傍聴も認められなかった。
被告人に対する当局の捜査は、外交官や外国人との会合についての電話での協議や、彼らが言うところのサイード大統領の「クーデター」に反対することに関する内輪でのやり取りといった信頼性に欠ける証拠に基づいていた。
背景情報
2023年2月11日から25日まで、「テロ対策」警察隊が、チュニジア刑法とテロ対策法に基づき、野党政治家6人を逮捕した。「国家の治安を脅かす謀議」や「国家転覆の企て」などの容疑で、有罪なら死刑を受ける可能性もある。他の野党政治家、ラザール・アクレミさんとチャイマ・イッサさんも、2023年2月に逮捕された。2人は6カ月間、恣意的に拘束された後、2023年7月、厳しい条件付きで保釈された。
アムネスティ国際ニュース
2025年4月19日
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