- 2020年9月 5日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:カタール
- トピック:
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カタール政府は8月30日、移住労働者の搾取の温床であるカファラ制度の問題に切り込む2つの法案を成立させ、移民労働者の保護に向けた大きな一歩を踏み出した。
新法により、元雇用主の許可を必要としていた転職制限が廃止され、また、最低月給の引き上げ、一部の労働者に対する生活手当も導入される。
移住労働者は長年、雇用主の許可なく転職することができず、賃金も低く、横暴な雇用主の言いなりにならざるを得ない弱い立場に置かれてきた。
その意味で、今回の法案の成立は画期的であり、当局には、新法の早急かつ適切な実施が求められる。
法律が適切に実施されれば、労働者が自由に転職できるようになり、雇用主の虐待からも逃れることができる。
これは、カタールがようやく正しい方向に向かうことを示す心強い兆しであり、すべての労働者の権利が最大限守られるよう、失踪した労働者に対する逃亡罪の廃止を含め、さらなる法改正が望まれる。
今回の2つの法律は、昨年10月にカタール首長が導入を発表していたものだ。
1つ目の法律は、移住労働者が転職する際に必要とされていた、元の雇用主からの「異議なし証明書(No Objection Certificate : NOC)」の要件を撤廃するものだ。退職申し出時期も定められ、雇用期間が2年以下なら1カ月前に、2年以上の場合は2カ月前に書面で通知すれば、転職できるようになった。
しかし、許可なく離職した労働者を雇用主が逃亡罪で告発できるという制度は、残ったままだ。また、労働者の在留許可証の更新や取り消しの判断は、依然として雇用主に委ねられている。これらにより、雇用主は、依然として労働者に強い支配力を保持している。
2つ目の法律は、低賃金対策で、最低賃金を月額1,000カタール・リヤル(約2万9,200円)とした。
昨年ILOは、カタール政府に対して調査に基づく最低賃金額を提言した。公表はされていないが、メディアの報道によると、「少なくとも1,250カタール・リヤル(約3万6500円)」だったという。
これまでの最低賃金は、2017年に設定された750カタール・リヤルだが、カタールと労働者出身国との間の合意により、最低月額賃金がネパール人は月額900カタール・リヤル、フィリピン人は1,400カタール・リヤルなどと高めに設定されている場合もある。
今回の最低賃金の見直しにより、移住労働者の中でも特に低賃金の労働者の収入を押し上げることになるが、労働者全体の賃金水準は依然として低い。移住労働者の所得向上に本腰で取り組むなら、定期的に賃上げを行い、公正で労働者が納得できる労働環境に結び付けることが必要だ。
また、もう一つの重大な問題である賃金の未払いや遅延に対しては、特に厳しい対応を取る必要がある。移住労働者が多額の借金を背負う羽目になった違法な斡旋業者の摘発も不可欠だ。
今回の法律導入を受け、今後当局には、人権侵害を受けた労働者が、速やかに法的手段に訴え、救済を受けられる体制の整備が求められるだろう。
アムネスティ国際ニュース
2020年8月30日
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