中国:天安門の犠牲者を追悼して有罪 国際法・人権法を蔑ろにする香港政府

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2021年12月16日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:中国
トピック:表現の自由

昨年6月の天安門事件の犠牲者を追悼する集会をめぐり、香港の裁判所は12月9日、民主活動家の黎智英(ジミー・ライ)さん、 何桂藍(グウィネス・ホー)さん、鄒幸彤(チョウ・ハントゥン)さんの3人に対し、無許可とされる集会への扇動・参加の罪で有罪判決を言い渡した。

3人は、1989年に天安門での軍の暴力による犠牲者を追悼する集会を主催、あるいは集会に参加したというだけだ。この判決で香港政府は、またしても国際法を蔑ろにした。

当局は、警察の許可を得ていないという理由で追悼集会を違法とみなしたが、平和的集会は当局の許可を必要としない。今回の判決は、法律を悪用して著名な活動家の罪をでっち上げる香港当局の極端な姿勢を際立たせただけとなった。

天安門事件の犠牲者を偲び、哀悼するのは、香港市民の自由であり、その権利の行使を理由にした起訴と有罪は、表現と集会の自由の権利への途方もない攻撃だ。

背景情報

天安門事件の犠牲者を追悼する集会が無許可だとして、12月9日、黎さんは参加扇動の罪で、黎さんは、参加と参加扇動の罪で、何さんは参加の罪で、それぞれ有罪判決を言い渡された。

3人以外で起訴された活動家の中には、無許可とされる集会への参加の罪を認め、すでに実刑(最長10カ月)判決を受けた人たちもいる。黎さん、鄒さん、何さんは、他の多くの活動家と同様、複数の容疑で起訴されている。その中には、終身刑のおそれがある国家安全維持法(国安法)違反の容疑もある。3人は保釈を認められず、現在も勾留されたままだ。

黎智英さんは、政府批判で廃刊に追い込まれた「リンゴ日報」の創業者で、多数の容疑で起訴され、1年近く勾留されている。「外国勢力」との結託、扇動、詐欺の容疑で昨年8月、逮捕された。今年4月、2019年の違法集会の主催と参加の罪で1年2カ月の刑を受けた。5月には別の集会を無許可で主催した罪で、さらに1年2カ月の刑を言い渡された。外国勢力との結託、捜査妨害の謀略の容疑でも起訴されている。

鄒幸彤(チョウ・ハントゥン)さんは、香港市民支援愛国民主運動連合会(香港支連会)の元幹部だ。同会は、30年間、天安門追悼集会を行ってきたが、これが国家の安全を危険にさらしている証拠だとされ、解散した。

今年6月、鄒さんは、公共の場での追悼が今年も禁止されたことを受け、SNSで個人での追悼を呼びかけたことでも無許可の集会の広報活動で逮捕された。

9月には、香港支連会の元幹部2人とともに、国安法の国家転覆扇動罪で起訴された。これとは別に、香港支連会の会員や職員らの個人情報の提供を拒否したため、国案法違反で3人の元幹部と共に起訴されている。

ジャーナリストから活動家に転身した何桂藍(グウィネス・ホー)さんは、昨年7月民主派議員による「予備選挙」に出馬して議員になり、今年1月、国安法違反で逮捕・起訴された。他にも50人近い議員が逮捕された。

1989年6月4日、北京で政治的、経済的改革や汚職撲滅を訴える学生らに軍が発砲し、数百人から数千人が犠牲になった。中国全土でも抗議運動が起こり、数知れない市民が亡くなり、投獄されるなどした。

この30年間、中国政府は、天安門事件をめぐる議論を一切封じてきたため、正確な死者数は、今もわからない。

v香港では、天安門事件が起きた1990年から毎年、ビクトリア公園で追悼集会が開かれ、参加者は、中国政府に真相の解明や軍の市民への暴力と殺害の責任を明らかにするよう求めてきた。追悼集会はこの2年間、新型コロナウイルス対策を理由に禁止された。

国安法は、集会の実施には警察の許可を得ることを義務付け、許可のない集会は「無許可」とみなし、主催者だけでなく参加者も処罰する。国際法は、秩序ある集会を促進する一環として当局が集会主催者に求めるべきは、事前許可の取得ではなく、事前届けのみと定めているが、香港の対応は、この規定に反する。

アムネスティ国際ニュース
2021年12月9日

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