- 2025年12月10日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:チュニジア
- トピック:

チュニス控訴裁判所は、11月28日、政府に批判的な人びとが「国家安全保障に反する共謀」の罪に問われている件で、34人に対する有罪判決と、5年から45年の懲役刑を支持した。
いわゆる「共謀事件」とは、反体制派、弁護士、活動家ら37人が、政治的な理由で不当に起訴されている件だ。2025年4月、チュニス第一審裁判所は、彼らに4年から66年の厳しい刑を言い渡した。裁判は著しく公正さに欠き、不透明で、行政が干渉していると、大きな非難を浴びた。
いわゆる「共謀事件」で不当に下された有罪判決を控訴裁判所が支持する判決を下したのは、チュニジアの司法制度の深刻な状況を示す。この事件では当初から公正な裁判の権利が踏みにじられてきた。根拠のない容疑に基づいた見せかけの裁判で数十人に対して下された有罪判決を支持することで、控訴裁判所はこの権利侵害を故意に無視したのだ。
控訴裁判所は、政敵を排除するために政府が司法制度を利用することを、十分考慮せず、そのまま支持した。37人の被告のうち3人は無罪となり、数人の判決が減刑されたが、他の人びとの刑期は延長された。例えば、恣意的な勾留と不当な裁判に反対して31日間ハンストを行ったジョウハー・ベン・ムバラクさんは、18年の刑期が20年に延長された。今回の判決で、チュニジアでは相変わらず、平和的な反対運動に参加すれば長期刑に処されることがはっきりとした。
当局は、拘束されている被告人が出廷する権利を奪い、リモート審理を強行するなど、適正手続き違反を繰り返し、この裁判の公正性を損ねてきた。被告人の弁護士も、国から標的にされ続けている。一連の動きは、政府が反政府派の権利を損ね、異論を封じようと躍起になっていることを浮き彫りにする。
政治活動家のチャイマ・イッサさん、アフメド・ナジブ・チェビさん、人権擁護活動家のアヤチ・ハマミさんは、控訴裁判所で有罪判決と、それぞれ20年、12年、5年の刑期が確定したため、すぐにでも恣意的に逮捕されるおそれがある。
チュニジア当局は、この「共謀事件」の全被告人に対する不当な有罪判決を直ちに棄却しなければならない。ただ単に自分の人権を行使しただけで拘束されている全員を直ちに無条件に釈放し、批判者、反体制派、法律の専門家に対する、容赦のない、政治的な迫害をやめなければならない。司法が政府の弾圧を徹底して抑制しない限り、広がりつつある権威主義は勢いを増し、人権危機が深刻化する。
背景情報
10月24日、弁護団は最初の控訴審が10月27日に予定されており、拘禁中の12人の被告に対してはビデオ会議でのリモート審理になると知らされた。2024年4月以降、裁判所はすべてのテロ関連の裁判を「差し迫った危険」があるとして、正当な根拠なくリモート審議で行う決定をしていた。拘禁中の被告は審理当日に知らされ、他の人たちには出廷状は届かなかった。10月27日、審理は11月17日に延期され、さらに11月27日に再度延期された。
被告人が異議を唱えているにもかかわらず遠隔での参加を要求することは、物理的に出廷する権利を否定するものであり、被告人の防御権を侵害する。
この裁判で判決を受けた34人の中には、カヤム・トゥルキさん(35年の刑)、ジョウハー・ベン・ムバラクさん、イサム・チェビさん、ガジ・チャウアチさん、リダ・ベルハジさん(4人とも20年の刑)、アブデルハミド・ジェラシさん(10年の刑)の6人の反体制派もいる。6人は、2023年2月の捜査開始以降、恣意的に拘禁されている。
この事件で有罪判決を受けた人の中には、別の政治的意図から拘禁された人たちもいる。反体制派の長老、ヌレディーン・ビリさん(20年の刑)、サビ・アティグさん(10年の刑)、サイード・フェルジャニさん(10年の刑)など以前の与党、アンナハダ党の党員だ。また、海外に居住している20人も対象とされ、その中の1人、著名な人権擁護活動家のボクラ・ベルハジ・フミダさんは、33年の刑を宣告された。
アムネスティ国際ニュース
2025年11月28日
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