イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:イスラエルのガザ攻撃 アパルトヘイトがもたらす惨劇

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2023年6月28日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争

5月初旬、被占領ガザ地区のパレスチナ人家屋を破壊したイスラエルの攻撃は、市民への集団的懲罰にあたる。子どもを含むパレスチナ市民を殺傷したイスラエルの空爆は、明らかに過剰なものだった。

5月9日の夜、イスラエルはパレスチナの住宅密集地区を精密誘導弾で攻撃した。この地区に住むアル=クッズ旅団幹部3人を狙ったものだが、住民10人が犠牲になり、20人以上が負傷した。攻撃時刻は、住民が就寝中の午前2時だった。イスラエルはこれまでにも同様の意図的で度を越こした攻撃を行っており、これは戦争犯罪だ。

一方、ガザ地区を拠点とするパレスチナのイスラム聖戦の武装部門、アル=クッズ旅団はロケット弾でイスラエル市内を攻撃し、イスラエル人2人、ガザ地区でパレスチナ人3人が死亡した。この攻撃も戦争犯罪として調査する必要がある。

イスラエル当局とパレスチナ武装集団の間の停戦合意から1カ月経ったが、戦禍が絶えることがない。

アムネスティは聞き取り調査で住民の生々しい証言を得た。爆弾で破壊された自宅の瓦礫の下から幼い娘を助け出した複数の父親の話やテディベアを抱いてベッドにいた娘が致命傷を負ったという証言もあった。

現実の問題として攻撃を加えた加害者側の責任が問われない限り、こうした悲惨な事態は再び繰り返されるに違いない。

アムネスティが違法な破壊と殺害を何度も記録し公表してきたのは、イスラエルの責任を追及しない国際社会に対する非難だ。なんの責任も問われないイスラエルは人権侵害を繰り返し、不当な攻撃を常態化させるばかりだ。

5日間の攻撃

5月9日、イスラエル軍はガザ地区を攻撃し始めたが、狙いはアル=クッズ旅団の団員やその施設だった。だが、5日間続いた攻撃でパレスチナ住民11人が亡くなり、子ども64人を含む190人が負傷した。また2,943戸の家屋が破壊され、1,244人以上が避難を余儀なくされた。

一方、アル=クッズ旅団は5月10日から4日間にわたり、イスラエルの住宅街に数百発のロケット弾を撃ち込み、犠牲者2人と負傷者40人を出した。誤射やロケット弾の突然の落下で、ガザ地区でも3人が亡くなった。

パレスチナ武装集団のロケット弾攻撃はもともと不正確で知られる。この無差別的な攻撃は戦争犯罪として調査されるべきであり、被害者には迅速かつ適切な救済を提供する必要がある。

言語道断の暴力

5月9日午前2時、イスラエル軍の空爆による砲弾がガザ市のアル=シャフ地区にある2階建ての住宅を直撃した。この家屋に住むアル=クッズ旅団幹部を狙った攻撃で、幹部とその妻、4歳の娘が亡くなった。

隣接する家屋も攻撃に巻き込まれ、室内にいた19歳と17歳の姉妹が犠牲になった。姉妹の父親の話によれば、寝室のドアが倒れてきて目が覚め、娘たちの部屋に駆けつけると、7月に挙式を控えていた上の娘はすでに息を引き取っていた。将来医師を目指していた下の娘は虫の息で、直ぐに病院に運び込まれたが、数時間後亡くなった。

イスラエルには、攻撃が市民や家屋に大きな被害を与えることが明らかな場合、攻撃を停止する義務がある。意図的に無用な攻撃を加えるのは戦争犯罪だ。

意図的な破壊

イスラエルがガザ地区の特定の家屋を攻撃した時も、障がい者宅が損壊するなど市民に大きな被害をもたらした。

5月13日、イスラエル軍はジャバリア難民キャンプにある4階建ての建物を攻撃した。建物にはナブハン一族の42人が住んでいた。42人中、5人に障がいがあり、うち3人が車椅子を使っていた。

攻撃を目の当たりにしたハッサム・ナブハンさんはアムネスティに、「午後6時頃、イスラエルの諜報員らしい人物から電話で、『建物の住人は15分以内に避難しろ』と言われた」と語った。電話の相手に、「障がい者がいるのでもっと時間がほしい」と訴えたが、相手は警告を繰り返すばかりだった。

攻撃を受けた後、トラウマで会話が困難になった女性(22歳)は「(自分の)車椅子ががれきで埋もれてしまい、自分で移動できなくなった」と話した。アムネスティは、ナブハン一族が暮らしていた建物やこの地域の他の建物が武器の保管に使われたことを示す証拠も、建物付近からロケット弾が発射された痕跡も確認できなかった。

この卑劣な暴力の根底にあるのは、パレスチナ人に対するイスラエルのアパルトヘイトにほかならない。イスラエルは、アパルトヘイト廃止とガザ地区の封鎖解除を直ちに実行し、アパルトヘイトや戦争犯罪などの国際法上の犯罪を行った者の責任を問わなければならない。

背景情報

アムネスティは、イスラエル当局からガザ地区への入域を禁止されているため、今回は現地在住の調査員が、イスラエルによる5日間の攻撃とその直後の状況の情報を収集し、住民に聞き取りをした。また衛星画像、攻撃時とその直後の映像、イスラエル政府関係者の声明など公開情報にもあたった。

パレスチナの家屋に対する不法な攻撃と、2007年以来続くガザ地区の違法な封鎖は、イスラエルのパレスチナ人に対するアパルトヘイトであり、アパルトヘイト条約と国際刑事裁判所に関するローマ規程の両方において、アパルトヘイトという人道に対する罪にあたる。

アムネスティ国際ニュース
2023年6月13日

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