- 2024年1月31日
- [国際事務局発表ニュース]
- 国・地域:イタリア
- トピック:難民と移民
イタリア議会では、アルバニアの海域でイタリア船に救助された人びとを拘束し、第3国へ移送する協定の批准をめぐる議論が1月22日に始まったが、議員はこの協定を認めてはならない。
国境管理と難民審査を第三国に移管する動きが国際的に広がる中、イタリアがアルバニアに移民の収容施設を建設する計画は、移民や難民にとって人権への脅威であり、一層の苦難を背負わせることになりかねない。協定は国際法とEU法を回避しようとするもので、恥ずべき対応と言える。
非現実的で有害かつ違法なこの協定が実施されれば、何日もの船での移動で疲弊した移民・難民が、さらに長い期間、拘束されるおそれがある。
アムネスティは、イタリア・アルバニア間の協定が移民・難民の人権に悪影響を及ぼすことを懸念している。
地中海中央部から数百キロ離れたアルバニアとの協定は、救助した人びとをできるだけ速やかに下船させるという義務に明らかに違反する。また、広範囲に捜索、救助する体制が弱体化し、救助を必要とする人びとの安全を脅かすおそれがある。
アルバニアとの協定では、イタリアがアルバニアの収容施設の司法管轄権を持つと定められ、英国のルワンダ移民法案(非正規に英国に到着した庇護希望者をルワンダに移送することを政府に許可する法案)など、他の欧州諸国が行おうとしている他国への委託とは異なる。また、イタリアの司法管轄権が適用されることでイタリアとEUの法律に従った手続きが約束され、難民の権利が遵守されるかのようにみえるが、現実には、難民の権利が保証されるかどうかは危うい。
庇護希望者を含め、アルバニアの収容施設に送られる人びとは、例外なく拘束される。有無を言わさない拘束はそもそも恣意的であり、従って違法だ。イタリアの法律の改正と相まって、この協定により庇護希望者が1年半以上も拘束されるおそれがある。その上、拘束の合法性をイタリアで争う場合にアルバニアから法的支援や法定代理人を利用するのが必然的に非常に難しくなり、恣意的な拘束の危険性が高まる。
またこの協定では、子ども、妊婦、人身売買など特に保護を必要とする人びとをどのように特定し保護するか明確になっておらず、保護制度が弱体化するおそれがある。
子ども、妊婦、人身売買や拷問の被害者は、長期の不必要な船での移動を強いられ、審査手続きの問題で、さらに苦難にさらされるかもしれない。アルバニアに移されれば、恣意的に拘束され、難民申請や人権侵害の救済を求める上で厚い壁にぶつかる。
イタリアの議員はこの協定を批准するのではなく、自国での受け入れや安全な入国ルートの確保など、国際的な保護を求める人たちへの支援策を打ち出すべきだ。
背景情報
2023年11月6日、イタリア政府はアルバニアと、イタリア船により救助や拘束された人びとを収容する施設をアルバニア領内に建設する協定に署名した。難民申請手続きの域外処理と強制送還される人びとの域外収容が目的で、庇護希望者の欧州への渡航を抑止する狙いがある。
アルバニアでは、手続きの合法性を憲法裁判所が見直す必要があるとして、協定の批准は一時、保留されている。
アムネスティ国際ニュース
2024年1月22日
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