モロッコ/西サハラ:若者の抗議活動を弾圧 過剰な武力行使

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2025年10月 8日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:モロッコ/西サハラ
トピック:表現の自由

アムネスティが入手した信頼できる情報によれば、2025年9月下旬以降、モロッコ全土で少なくとも3人の抗議者が死亡し、数十人が負傷、400人以上が逮捕されている。モロッコ治安部隊による若者の抗議活動への暴力的な弾圧について、独立した調査を速やかに行わなければならない。

2025年9月下旬、カサブランカ、アガディール、マラケシュ、タンジェ、サレ、ウジダ、ラバトなど複数都市で抗議活動が広がっている。Z世代が主導しているとされ、背景には、公共サービスの不備、高い失業率、汚職、2030年ワールドカップへの巨額支出などに対する不満がある。

抗議活動は平和的に始まったが、当局は違法に武力を行使し、大勢を恣意的に逮捕した。例えば9月30日夜、アムネスティが検証した映像には治安部隊が意図的に車両で抗議者をひこうとしたり、暴力的に逮捕する様子が映っていた。目撃者も治安部隊による抗議者の強制逮捕の様子をアムネスティに語っている。その後の2日間では、抗議者側の暴力行為で警察施設が破壊される事例があったものの、その他の場所では抗議活動は平和的だった。

モロッコ治安部隊による過剰な武力行使や、抗議者やその場に居合わせた人たちの大量逮捕が明らかになってきている。憂慮すべきことだ。当局は死亡事例について透明性のある調査を実施するとともに、暴力事件への対応に関しては国際的な指針に沿い自制をもってあたる必要がある。モロッコ当局は平和的抗議の権利を確実に保障しなければならない。人権を行使し、経済的・社会的権利を要求し、汚職撲滅を訴えた人たちを処罰すべきではない。

国際法上、法執行官による致死的な武力行使は、命を守るために不可避な場合を除き禁止されている。当局は武力行使を回避するためにとり得る限りの措置を講じ、武力行使が避けられない場合には、目的と手段が不釣り合いであってはならないという比例原則に則り、危害を最小限に抑えるよう慎重にしなければならない。

アムネスティは、9月28日、29日に治安部隊が平和的な抗議者を強制的に逮捕し、警察車両へ連行する様子を捉えた数十本の動画を検証した。ソーシャルメディアで拡散されたものだ。

ある抗議者はアムネスティに対し、私服警官が個々の抗議者を包囲する様子をこう語った。「地面に座って何もせず、スローガンも叫んでいなかった少女が警官に強制的に運ばれるのを目撃した。『私が何をしたの?』『ここに立つ権利がある』と訴えていたが、警官は答えずに彼女を車両に押し込んだ」。

カサブランカでの抗議デモ参加者は、「警察は特にメディアと話す人を標的にしていた。2人の記者にインタビューされていた人物が、マイクに向かって話している最中に背後から警察に強制的に連行されたのを見た」と話す。オンラインで公開された動画には、抗議者がメディアに声明を発表中に逮捕される場面もあった。

こうした行為は、恣意的拘禁、適正手続きの欠如、集会の自由の権利行使に対する萎縮効果について深刻な懸念を引き起こしている。

アムネスティが検証した動画には、ウジダで9月30日から10月1日の夜間、治安部隊の車両が抗議者の集団にまっすぐに突っ込み、少なくとも1人が重傷を負った様子が映っている。このような行為は、生命を危険にさらし、暴力を激化させる、危険で違法な武力の行使である。

「武力および銃器の使用に関する国連基本原則」などの国際人権基準は、当局が常に被害を最小限に抑え、生命を保護することを義務づけている。生命に差し迫った脅威を与えないデモ参加者を意図的に車両でひくのは、明らかな違反行為だ。

公式発表によると、9月28日以降、409人が逮捕され、少なくとも193人が裁判にかけられており、その多くは保釈中だ。アムネスティが話を聞いた弁護士らは、数は絶えず変化しているため、依然として確認が難しいと述べている。

裁判にかけられている人たちは、刑法第591条に基づき起訴されている。未成年者もいる。同条は、暴力とみなされる集会への参加を犯罪としているが、彼らは暴力行為が報告される前に逮捕されている。

モロッコ当局は、平和的集会の権利を行使しただけで拘束された者全員に対する起訴を直ちに取り下げるべきだ。抗議の権利を尊重し保護するのは、国際的な人権義務だ。弾圧に頼るのではなく、政府は、より良い教育、公平な医療、適切な雇用機会、透明性、汚職防止などの若者の正当な要求に応えるべきだ。

背景情報

「Gen Z 212」と名乗る若者主導の運動は、TikTok、Instagram、DiscordなどのSNSを通じて組織化され、分散型で展開された。

数日間は平和裏に行われ、暴力行為が報告されたのは9月30日の夜からだ。衝突が激化し車両が放火され、治安部隊は催涙ガス、ゴム弾、実弾で対応した。内務省によれば、騒乱中に少なくとも治安部隊員263人と民間人23人が負傷した。

アムネスティ国際ニュース
2025年10月3日

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