インドネシア:軍が偽情報で異論封じ 活動家や記者を「外国の手先」とレッテル貼り

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2026年5月29日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:インドネシア
トピック:表現の自由

アムネスティは5月19日に発表した新たな報告書で、政府に批判的な人びとを「外国の手先」とする組織的な偽情報の拡散が、プラボウォ・スビアント大統領の下で異議を封じ、威嚇や暴力を助長していると指摘した。

この報告書は、軍を含めインドネシア当局が、ジャーナリスト、活動家、学者、抗議参加者らを標的にオンライン上で偽情報を拡散し、正当な活動や表現に対する報復を行っていることを明らかにしている。一方、メタやティックトック、X、ユーチューブといった巨大テック企業は、有害な偽情報を削除せずにいる。

プラボウォ・スビアント大統領政権下で、インドネシアにおける権威主義的な手法が加速している。政権を握ってから18カ月の間に、オンライン上の偽情報が、政府に批判的な人々の信用を組織的に失墜させ、公の議論を封じ、弾圧を正当化するための主要な手段として用いられるようになっている。一方、ソーシャルメディア企業はこうした事態を傍観し、放置している。

こうした偽情報は政治的な武器として、世論の批判が高まる中で政府の権力を強化するために用いられる一方で、果敢にも声を上げる人びとを悪者に仕立て上げ、その影響力を弱めている。抗議する人びとやジャーナリスト、人権活動家を「外国の手先」とレッテル貼りすることで、当局とその支持者は、市民の正当な不満から注意をそらそうとしているのだ。

人を欺く意図

2024年10月にプラボウォ大統領が就任して以来、インドネシアでは汚職、予算削減、環境破壊、軍の権限拡大などに反対するデモが相次いでいる。これに対し、大統領や政府高官らは、批判者たちが外国の利益団体から金を受け取り、操られ、支配されていると公の避難を繰り返し、批判の声を意図的に演出されたものにすり替えている。

オンライン上でも市民社会活動家を「外国の手先だ」とする中傷がまん延している。こうした中傷は、海外からの資金提供や支援を受けているという事実を理由に、活動家がインドネシアを「弱体化」させたり「分裂」させたりしようとしているという根拠のない主張が基になっている。

国際法のもと、市民社会組織やメディアは国際的な資金援助を受ける権利を有しており、結社の自由を行使するためにも欠かせない場合が多い。

市民社会を「外国の手先」に仕立てる偽情報による印象操作のほとんどで、数百のアカウントが連携して、同一の動画、画像、メッセージを立て続けに投稿していたことが調査で判明した。こうした偽情報はその後、インスタグラム、フェイスブック、X、ティックトック、ユーチューブを通じて拡散される。アムネスティは、キャンペーンの組織的な性質から、こうしたアカウントが人を欺くことを意図して偽情報を拡散していたと推察している。

「外国の手先」とレッテル貼りされた人びとが受ける影響は深刻だ。被害者たちはアムネスティに対し、活動が軽視され、信頼性が損なわれ、刑事訴追される危険が高まり、身体的危害にもさらされたと語っている。

実際の暴力に発展

オンラインでの偽情報拡散は、しばしば物理的な暴力へと発展している。2026年3月、行方不明者・暴力被害者委員会(KontraS)の副コーディネーターであるアンドリー・ユヌスさんは、ジャカルタで酸を浴びせられ、重度の化学熱傷を負った。

ユヌスさんは、インドネシアの軍事法改正に反対する平和的な抗議活動を主導したことで、数カ月にわたって、「外国の手先」というレッテル貼りの標的となった。インドネシア軍の一員を装う数十のアカウントと、数百の匿名アカウントが、さまざまなSNSプラットフォームでデマを拡散した。

その後、国家による捜査の結果、軍将校4人が逮捕されたが、酸による襲撃や逮捕後も、外国から資金を得るために襲撃を仕組んだなどのデマは続いた。

独立系メディアも激しい標的となっている。インドネシアで最も信頼されている報道機関の一つ、テンポは、政策を批判的に報じた後、軍部隊を装ったインスタグラムのアカウントなどから、外国の資金提供者に操られていると非難するデマにさらされた。

オンラインでの誹謗中傷には、恐ろしい脅迫行為も伴った。例えば、テンポの編集部に切断された豚の頭部や首を切られたネズミが送られたりした。その後オンラインでは、こうした脅迫が「外国からの支援を得るための演出」であるかのように描かれた。

グリーンピース・インドネシアの活動家イクバル・ダマニクさんは、西パプア州ラジャアンパットでの政府のニッケル採掘に反対する平和的な抗議行動を主導した後、標的にされた。SNSで武装組織と関係があり、活動家を装って独立を呼び掛けていると非難され、匿名で大量のダイレクトメッセージが届いた。その中には殺害の脅しもあった。

威圧的な環境

偽情報のまん延は、直接、標的とされた人たちだけでなく、社会全体に恐怖を生む。抗議活動に参加したり、市民団体に協力したり、オンラインで批判的な意見を表明したりすることを躊躇するようになっているのだ。

あるジャーナリストは、「これは私たち全員にとって危険なこと。もし外国の手先というレッテルを張られることを恐れて政府を批判する報道をやめてしまったら、権威主義的な時代に逆戻りしてしまう」と言う。

インドネシアの国内法は、偽情報の標的となった人びとを保護できておらず、むしろ批判者を起訴し犯罪者扱いするために利用される可能性が高い。新たに提案されている「偽情報および外国プロパガンダ対策」に関する法案は、表現の自由をさらに制限するために利用され、今の権威主義的な傾向を加速させるおそれがある。

表現の自由、結社の自由、平和的な集会の自由といった基本的権利を守るどころか、インドネシア当局はあらゆる場面でその責務を怠っている。国家機関が攻撃に加担し、被害者は保護を受けられず、威圧的な状況が放置されている。

インドネシア政府は、ジャーナリスト、活動家、抗議者に対する有害な偽情報を助長・拡散させるのではなく、彼らを保護しなければならない。

ソーシャルメディア企業の責任

また、この報告書は、メタ、ティックトック、X、ユーチューブによる不十分なコンテンツ管理、エンゲージメント(いいね、コメント、シェアなどの反応)重視のアルゴリズム、そしてインドネシアで高まる人権リスクへの対応の欠如が、偽情報の急速な拡散を助長したと指摘する。確認した投稿の大部分は数カ月間、中には1年以上も削除されずに、多くが拡散された。

巨大テック企業の失敗は、報告書で記した人権侵害の一因だ。偽情報が事実よりも急速に広まるという現状の中、こうした企業が提供するプラットフォームは、偽情報や検閲、暴力がまん延しやすい環境を助長してきた。

アムネスティは、メタ、ティックトック、X、ユーチューブに対し、調査段階での情報提供を求めるため、そして報告書公表前に調査結果を共有するため2度にわたり書簡を送付した。調査結果を詳述した書簡に対し回答したのはティックトックのみで、「この特定の問題について追加の監視体制を構築する」と約束した。

人権活動を取り巻く環境がますます敵対的になり、政府やソーシャルメディア企業が偽情報に十分に対応できていないにもかかわらず、アムネスティが聞き取り調査を行った活動家の多くは今なお粘り強く活動している、状況に適応し、互いに支え合い、抵抗し続けているのだ。しかし、その負担を彼らだけに負わせてはならない。

プラボウォ大統領政権下で危険性が高まる中、メタ、ティックトック、X、ユーチューブは、偽情報の拡散を阻止し、コンテンツ管理を強化し、インドネシア特有の状況を踏まえた人権デューデリジェンスを実施するとともに、自社の不作為によって被害を受けた人びとに対し救済を提供しなければならない。

アムネスティ国際ニュース
2026年5月19日

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