イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:イスラエル/レバノン情勢に関する、国連安全保障理事会理事国への公開書簡

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2006年8月 8日
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争
理事国の国連大使の皆様へ

レバノン/イスラエル紛争下で紛争両当事者が起こしている露骨な国際人道法違反を止めるために安保理が何も行っていないことに対し、アムネスティ・インターナショナルは重大な懸念を表明します。

同紛争において、多数の市民が国境の両側で甚大な犠牲を払っています。両国の市民を保護するために、安保理は直ちに手段を講じなければなりません。

大多数の犠牲者が子どもたちであった、2006年7月30日のレバノン南部カナに対する破壊的な攻撃は、今までのこの紛争の在り様を表しています。

イスラエルは、市民を救うために必要な注意を払うことができていません。過剰な攻撃を実施し、多くの市民の死傷者を生じさせています。イスラエルは道路や橋、発電所のような民間施設を直接の標的としてきました。カナへの攻撃について、イスラエル当局はヒズボラが民間人を「人間の盾」(国際人道法で明確に禁止されている戦術)として利用している、と主張しています。しかし、イスラエルはその主張を裏付ける証拠を何も出してはいません。さらに、ヒズボラによるそのような国際人道法違反があるからといって、均衡性の原則を厳格に遵守し民間人を保護するというイスラエルの法的義務が免除されるわけではありません。一方で、イスラエルの市街地にヒズボラがロケット弾を発射していることは、一般市民への直接の攻撃を禁止している法に違反しています。

戦争犯罪の証拠が毎日のように明らかになってきていることに鑑み、人権高等弁務官が、紛争当事者は国際法上の説明責任を要求され、とりわけ指揮・監督に従事する人びとの個別の刑事責任が求められていると強調したことを、アムネスティは支持します。一方、安保理理事国に回覧された決議案が、紛争当事者が国際法上の義務を尊重する必要性についても、また説明責任を果たす必要性についても言及していないことを、アムネスティは懸念しています。これらの問題は、安保理が採択を準備している決議案において言及されなければなりません。また紛争当事者が、民間人の安全、軍民の区別、そして均衡性の原則を十分に尊重することで、民間人と民間の建造物を効果的に保護するためのすべての措置を直ちに講じるよう、安保理は要請しなければなりません。

カナでの市民の死について自軍で調査するというイスラエルの声明について、アムネスティは触れておきます。私たちは、市民が亡くなった他の出来事に関して何の調査も発表されていないことに、深く失望するものです。アムネスティは、イスラエルとヒズボラによる重大な国際人道法違反のすべての申し立てについて事実を明らかにするために、徹底的で独立した、そして公正な調査がなされることを要求します。1949年のジュネーブ諸条約の第1追加議定書の第90条に基づいた国際人道事実調査委員会によって、このような調査は実施されうるでしょう。決議A/RES/55/148を採択した際に、国連総会は、「武力紛争に関して、第1追加議定書の第90条に基づき国際事実調査委員会を利用する可能性」を強調し、「国際事実調査委員会は必要な場合、仲裁により、ジュネーブ諸条約と追加議定書を尊重する姿勢の回復を促進することができる」ことを想起させています。

現在、安保理理事国に回覧されている決議案において、敵対行為の即時停止および恒久的な停戦のための条件設定の必要性、現在の危機に対する持続的解決を求める条項があることを、アムネスティは歓迎します。そして、紛争の両者における民間人を保護するために、完全かつ効果的な即時停戦を求めます。また、採択される決議において、強力な条項が確保されるよう安保理に要求します。加えて、アムネスティは安全保障理事会に対して、以下の決議を遅滞なく採択するよう求めます。

 紛争当事者に対し、国際人道法上の義務を直ちに遵守し、軍民区別と均衡性の原則を尊重するように要請する。

 イスラエルとレバノンに対して、カナの事件のような重大な国際人道法違反の申し立てに対して徹底的、独立的かつ中立的な調査を実行する、ジュネーブ諸条約第1追加議定書第90条に基づく国際人道事実調査委員会の権能を受け入れ、委員会が自らの領域に入ることを招請するよう求める。

 現在の紛争における、国際法上の戦争犯罪と他の犯罪の容疑者たちに対して、全ての国家が司法権を行使するよう求め、個別の責任が問われることを保証する。

 紛争当事者に対しては、市民に人道支援が迅速に届くことを許可し、軍事行動地域から妨害なく安全に通行することができることを確実にするよう求める。また国際社会に対しては、現在の紛争によって避難民となったすべの人びとが保護と援助を受けられるよう、国連がその条件を整えるための支援を求める。

以上のことに注意を払ってくださることにアムネスティ・インターナショナルは深く感謝します。

敬具

アイリーン・カーン
アムネスティ・インターナショナル
事務総長

アムネスティ・インターナショナル
(2006年8月2日)
AI Index: IOR41/013/2006