イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ:ガザ紛争の犠牲者のための国際的な司法解決のとき

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2010年9月30日
国・地域:イスラエル/被占領パレスチナ地域/パレスチナ
トピック:地域紛争
人権理事会が2009年1月18日に終結したガザとイスラエル南部における22日間の紛争についての内部調査結果に関する国連独立専門家委員会による報告書を、9月27日に考究するための準備を進めている中、アムネスティ・インターナショナルは同理事会に対して、犠牲者のために国際的な司法解決を追求するよう要請する。

9月第4週に発表された報告書は、イスラエル政府とガザの事実上の統治者であるハマス双方によってなされたと申し立てのある国際法違反について両者が実施した内部調査が、独立性や中立性、徹底性、効果、迅速性など、必要な国際基準を満たしていないというアムネスティの評価を裏づけるものとなっている。

ガザでの軍事作戦に加わった人びとを含む軍部が担当および監督したイスラエルの調査は、独立性、適切な専門知識、透明性を欠いたものであった。軍が徹底調査すべき少なくとも65件が、犯罪捜査を開始することなくまとめられた。そのような事件には、国連施設や民間の建造物、インフラ、医療施設・職員へのイスラエルの攻撃、白リン弾を使用した攻撃、その他多くの民間人が死傷した攻撃などが含まれる。

ガザにおける事実上の統治者であるハマスは、紛争中にイスラエルへの無差別ロケット弾発射によって3名の民間人を殺害し他に負傷者を出すなどといった、ハマスと他のパレスチナ武装グループが行ったとされる違反行為の申し立てについて、信頼できる調査をしなかった。

リチャード・ゴールドストーン判事に率いられたガザ紛争に関する国連事実調査団が、双方が行った戦争犯罪、および人道に対する罪の可能性のある事件など、国際法への重大違反行為の申し立てを明らかにし、イスラエル政府とガザ地区の関係当局が信頼できる調査を行なうために6カ月の猶予を与えるよう勧告してから、1年余りが過ぎた。

アムネスティは、犠牲者のための裁きを実現するために、両当局は十分な時間と機会を与えられていたと考える。裁きが実現されなかったことは、国際的な司法解決の必要性を示している。

2009年1月22日時点で、イスラエルもパレスチナ自治政府も国際刑事裁判所(ICC)のローマ規程を批准していなかったが、パレスチナ自治政府(PA)を代表してパレスチナの法務大臣は「2002年7月1日以降にパレスチナの領域で犯された」犯罪についてのICCの管轄権を承認するとの宣言を出している。この宣言は、事実調査団の報告書に記載されたガザとイスラエル双方におけるすべての犯罪をカバーする可能性を秘めている。

ICCの管轄権の状態に関係なく、すべての国家は、国際法下の犯罪に対する普遍的管轄権を行使することで、国際法に基づき、自国の法廷で紛争中になされた犯罪を調査・訴追することが可能であり、またそうすべきであるとアムネスティは明記しておく。

よって、アムネスティは以下を人権理事会に対して要請する。

・イスラエルおよびガザの事実上の統治者であるハマスによってなされた調査が国際基準を満たしていないと認定する

・ICCがガザ紛争についての管轄権を持っているかどうかについて、ICC検察官に対し予審裁判部の決定を求めるよう緊急に要請する

・各国に対して、普遍的管轄権を行使することで自国の裁判所において紛争中に両者によってなされた犯罪を調査・訴追するよう要請する

・委員会の報告書を理事会の母体機関である総会に付託する

・国連事務総長が安全保障理事会に同報告書を提出するよう要請する

背景情報

国連の独立専門家委員会は、2010年3月25日に採択された人権理事会の決議13/9によって設置された。この委員会は国際法学者で国際人権法・人道法の専門家であるクリスチャン・トムシャット教授が議長を務め、メンバーにはニューヨーク州最高裁の元判事でICCとルワンダ国際刑事法廷の顧問であるメアリー・マクゴワン・デービッド、また法学者で人権の専門家であるパラム・クマラスワミも含まれている。委員会は西岸地区とガザ地区双方において調査を実行する責任があるパレスチナの機関と面会したが、イスラエル政府は委員会に協力することを拒んだ。

2010年9月21日、独立専門家委員会は報告書の改訂版(http://www2.ohchr.org/english/bodies/hrcouncil/docs/15session/A.HRC.15.50_AEV.pdfより閲覧可)を発表した。クリスチャン・トムシャットは、イスラエルとパレスチナによる調査は「いくつかのケースについて不完全であり、それ以外のケースでは国際基準をほぼ満たしていない」と報告書の結果を要約した。

委員会はイスラエルの調査の中立性と透明性両方に疑問を呈した。戦争犯罪を含むと申し立てられたいくつかのケースなど、2009年9月の国連事実調査団の報告書に記載された36件の具体的案件を、イスラエルがどれだけ実際に調査したのか、委員会にとって不明であった。また今までのところ、イスラエルの調査がもたらしたのは、たった1つの有罪判決(クレジットカード詐欺に関する)と3件の起訴だけで、そのすべてが階級の低い兵士たちが関与したケースである、と委員会は述べている。加えて、ガザ作戦の計画実行についての最高レベルでの意思決定についての調査をイスラエルが行なわなかったと、委員会は結んでいる。

委員会はまた、ガザの事実上の統治者であるハマスが実施した調査に対しては、国連事実調査団の勧告事項に真剣に取り組んでいないこと、パレスチナ武装グループによるイスラエル南部への無差別武器攻撃に十分対処しなかったことを述べ、強く批判した。

最後に委員会は、パレスチナ自治政府が設置した独立調査委員会が西岸地区における公務員の国際人権法違反について行なった調査を概して前向きに評価した。しかし、これらはまだいかなる刑事手続きにも結実していないと述べている。パレスチナ自治政府は22日間の紛争の当事者ではなく、その委員会はガザのパレスチナ武装グループによるイスラエル南部への無差別武器攻撃を調査することはできなかった。

ローマ規程によると、ICCは戦争犯罪や人道に対する罪など国際的懸念のある最も重大な犯罪を犯した人びとに対する管轄権を行使する権限がある。もしICCがパレスチナ自治政府の宣言を元に行動することはできないと決定するならば、国連安全保障理事会がこの状況をICC検察官に付託する法的資格を有することとなる。

2010年2月26日、国連総会は事務総長に対して、イスラエルとパレスチナの調査について5カ月以内に報告するよう要請した。しかし、7月26日と8月11日に事務総長によって発表された報告書はどちらも、内部調査についての実質的な評価を下していなかった。

アムネスティ発表国際ニュース
2010年9月23日