ミャンマー(ビルマ):ロヒンギャの虐待は、人権の進展を妨げる

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2012年8月 2日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:ミャンマー(ビルマ)
トピック:先住民族/少数民族

ロヒンギャや他のイスラム教徒に対する、攻撃や暴行が増えている(C) UNHCR/Y Saita
ロヒンギャや他のイスラム教徒に対する、攻撃や暴行が増えている(C) UNHCR/Y Saita

ビルマのヤカイン州において緊急事態が宣言されてから6週間、保安軍による少数民族のロヒンギャや他のイスラム教徒に対する、集中的な攻撃や暴行が増えている。

州内における民族間の衝突も続いている。

「緊急事態を発動したからといって、人権を侵害をしてもいいというわけではありません」とアムネスティ・インターナショナルのビルマ調査員、ベンジャミン・ザワッキは述べた。

人権基準を遵守しながら、例外や差別なく、すべての人の権利を他者からの虐待から守ることは保安軍の責務である

ヤカイン州の仏教徒、イスラム教徒、ロヒンギャの各共同体間の衝突の発生を受け、ビルマ政府は6月10日、同州に緊急事態を宣言した。この宣言はいくつかの地域にわたって効力を発している状態だ。

宣言後、国境警備隊(ナサカ)、国軍、警察は、ロヒンギャが多数居住する複数の地域で大掃討作戦を展開した。成年、未成年問わず、何百人もの人びと(おもに男性)が勾留された。ほとんどが外部との接触を断たれ、一部の人は虐待を受けた。

秩序や治安、人権保護の回復は必要である一方で、ほとんどの逮捕は恣意的で差別的に行われ、自由に対する権利や宗教に基づいた差別を受けない権利を侵害してきたようだ。

「6週間にわたり、ビルマはロヒンギャに対し人権侵害を何度も何度も繰り返してきただけではなく、政治囚の収監の状況について180度方向転換も行ってきました」とザワッキは述べた。

「囚人の恩赦や解放を一年以上も行ってきたが、ビルマの政治囚の総数はまた増えています」

6月10日以降に逮捕された人はいかなる人も、国際的に認められている犯罪で起訴され独立した法廷によって再勾留されるか、釈放されるかどちらかでなければならない。いかなる司法的手続きも、公平性の国際基準を満たしている必要があり、死刑を宣告することはあってはならない。

またアムネスティは、ロヒンギャや他のイスラム教徒に対する人権侵害がヤカイン州の仏教徒や保安軍によって行われている、という信憑性の高い報告を受けている。この人権侵害には肉体的な虐待、強かん、所有物の破壊、法律に反した殺害も含まれている。当局はこういった行為をやめさせ、新たな侵害行為が起きないように防ぐべきである。

ヤカイン州の仏教徒の大集団は6月3日、同州のタウンゴー郡で10人のイスラム教徒を殺害した。殺害されたイスラム教徒は、バスでヤンゴンの自宅に帰る途中だった。

ビルマ国家人権委員会は7月11日、暴力行為が始まってから少なくとも78人が殺されたと発表したが、非公式な推定によると100人を越えたとされている。

5~9万の人びと(それぞれ政府と国連機関が発表した数字)が、強制的に退去させられたと推定されている。

発表された数字の格差は、主として、ビルマ政府が人道支援に従事している人だけでなく、独立した国際的な監視機関に対しても、極端にアクセスを制限しているためだ。

「暴力行為を受けている彼らの人権と人道的ニーズは、監視機関と人道支援者の存在いかんで状況が変わってくる」とザワッキは述べた。

「ビルマ当局は暴力行為や人権侵害によって強制退去させられている人びとの状況を悪化させることで、問題をさらに複雑にしている」

アムネスティはビルマ議会に対して、ロヒンギャがこれ以上無国籍状態にならないよう、1982年制定の市民権法を改正もしくは廃止することを要求している。

「国際人権法と国際基準に従い、いかなる人も無国籍状態のままで放置されたり、国籍を奪われたりすることはあってはならない。あまりにも長い間、ロヒンギャは市民権を終始一貫否定され、多数の差別的対応を受けてきた。ビルマの人権は侵害の歴史だ」とザワッキは述べた。

アムネスティ国際配信ニュース
2012年7月19日

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