日本:性的指向、性自認に基づく差別禁止に向けた法整備を求める要請書

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2018年3月19日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:性的指向と性自認

2018年3月19日

国会議員の皆様

公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
理事長 庄司 香

性的指向、性自認に基づく差別禁止に向けた法整備を求める要請書

アムネスティ・インターナショナル日本は、包括的な差別禁止法の制定を視野に入れ、性的指向、性自認 を理由とした差別を禁止し、すべての人に対し平等に法的に保障するよう要請いたします。

アムネスティは、同性カップルを公的に認証する制度の導入、性的指向や性自認に関する人権施策の明文化、自治体議員や教職員に対する人権と性の多様性に関する教育といった取り組みが自治体で広がっていることを歓迎します。さらに昨年、東京都がオリンピック憲章の差別禁止の理念を条例化することを言明しました。民間企業においても、日本経済団体連合会が加盟企業に対してLGBTに関する施策を提言するなど、LGBTの権利を守る取り組みが加速しています。

一方、国政のレベルでは、超党派の「LGBTに関する課題を考える議員連盟」が立ち上がるなど前向きな動きもあるものの、法制化に向けた歩みはまだ限られています。私たちは、性的指向や性自認を理由とした差別を明確に禁止し、被害を救済する法律がないことを深く憂慮しています。

日本政府は3月1日に、昨年11月に行われた国連人権理事会による普遍的・定期的レビューの場で各国から出された勧告に返答し、包括的な差別禁止法の導入については留意しました。差別を禁止し、あらゆる人びとが平等に権利を享受できるよう保障する責務は国にあります。今こそ自治体や民間での取り組みを超え、国が中心となって法整備を進めていくことを強く求めます。

多くのレズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー(LGBT)の人びとが、今もなお性的指向、性自認を理由に、日常生活のさまざまな場面で困難に直面しています。アムネスティが2017年5月に発表した報告書「日本におけるLGBTの人びとへの差別~人権保障の観点から~(原文:Human Rights Law and Discrimination against LGBT People in Japan)」では、その実態を明らかにしています。

根強い差別を受け、自身のアイデンティティを隠すことで受けるべき権利を放棄する人や、社会から孤立し、自傷行為に追いやられてしまう人も少なくありません。公の場においてもなお、LGBTの人びとに対する差別を助長するような公人の発言も続いています。

2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会に向けて日本の動きが国際的に注目される中、性的指向や性自認に基づく差別を禁止し、この国で暮らし、この国を訪れるだれもが、安心して自分らしくいられるような国になるよう、以下を要請いたします。

  • LGBT当事者の声に耳を傾け、国や地方公共団体、事業者等による性的指向、性自認を理由とした差別をなくし、すべての人に対する法的保護の保障を目的とした法案を策定し、今国会会期中の議題として上げること。
  • 法案には、国際人権基準に沿った差別の定義を導入し、あらゆる形の直接的および間接的な差別を禁止すること。
  • 公務員・国会議員に対して性の多様性と差別の禁止を含めた人権教育や研修を行い、公務員・国会議員による偏見、差別的言動の問題に取り組み、その行為を是正すること。
  • 同性カップルの婚姻を認め、同性カップルに異性間の婚姻で得られる権利を平等に保障すること。

以上

この件に関する問い合わせ先

アムネスティ・インターナショナル日本 山下瑛梨奈(やましたえりな)
TEL:03-3518-6777 E-mail:camp@amnesty.or.jp