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イベント報告【イベント報告】国連勧告「従う義務なし」に異議あり! 緊急集会を開催

緊急集会会場の様子緊急集会会場の様子

6月18日、日本政府は拷問禁止委員会の勧告について、「法的拘束力はない」「従う義務なし」という答弁書を閣議決定しました。

しかし、「従う義務なし」で切り捨てられることなのでしょうか? 国際条約を批准することはどういう意味を持つのでしょうか?

アムネスティは7月1日、緊急に集会を開き、日本政府の姿勢を問い直しました。
 

国際人権基準に背を向ける日本

今回の「従う義務なし」の閣議決定は、「慰安婦」問題について質問した国会議員に対するものでした。

しかし、日本政府が人権条約機関から出されたさまざまな勧告にほとんど対応してこなかったことを考えれば、ことは「慰安婦」問題に限らず、あらゆる勧告に「従う義務はない」と国際社会に言い放ったととられる決定です。

その少し前の5月下旬、拷問禁止委員会日本審査の最中に、上田人権人道大使が「シャラップ」と2回叫んだことが話題となっており(注1)、他団体との共催で急遽開催したこの集会では、その発言も含め、日本政府の姿勢と条約を批准する意味を考えました。

緊急の呼びかけにも関わらず、市民団体や一般の方々を含め、140人を超える参加がありました。
 

憲法に違反する?

寺中誠さん寺中誠さん

条約機関からの勧告は命令ではないので、その意味で「法的拘束力はない」というのは間違っているわけではありません。

しかし、寺中誠さん(東京経済大学/アムネスティ日本前事務局長)は、勧告の法的拘束力があるかないかを考えることは無意味で、条約を締結している意味、また国際法と国内法の関係をまとめて考えなければならない、と言います。

日本は憲法98条2項に基づいて、締結している条約を「誠実に順守する義務」があります(注2)。国際的に見ると、条約の内容を担保するのは国内法であり憲法です。さまざまな調整をして、国際条約でうたわれている内容を国内で実施できるように調整することが、憲法と国際法によって求められているのです。

したがって、その条約機関からの勧告を無視することは、条約の実施義務を果たしていないことになり、憲法違反となる可能性がある、と寺中さんは指摘します。
 

もっと国際法を理解して

寺中さんによると、日本の法曹(裁判官、検察官、弁護士)が条約について十分に理解していないことについても、実は条約機関から繰り返し懸念と勧告が出されているそうです。

つまり、上田人権人道大使の「シャラップ」発言や政府の「従う義務なし」という答弁書は、公務員、政治家、裁判官など法を執行する側が、国際人権条約の状況について理解しないまま、ああうるさい、面倒くさい、と思っている態度の現われであり、危険な兆候ではないかと、寺中さんは指摘しました。

【関連資料PDFダウンロード】

*未批准の条約一覧というのは不完全です。そもそもILO諸条約、人道法関係、難民関係はこの一覧の中に入っていません。

「尊重する」とは、勧告と向き合い、対話しながら実現していくこと

阿部浩己さん(神奈川大学法科大学院/ヒュマンライツ・ナウ代表)も、「勧告には法的拘束力がありますか?」という問いでは、人権条約の本当の意味を理解することはできない、と語りました。

憲法98条2項にある「誠実に順守する義務がある」が意味するところは、条約上の報告・審査の義務を受け入れる、ということであり、その報告・審査の結果出てきた勧告を、少なくとも国際法の一般的な考え方からすれば、「尊重する」ということです。「尊重する」とは、「その勧告と向き合い、受け入れるものは受け入れ、受け入れられないものは対話をする、建設的対話を通じてよりよく実現していくこと」だと、阿部さんは指摘します。
 

グローバルな立憲主義

阿部さんはまた、グローバルな立憲主義の台頭に触れました。

国家権力を縛り人権を守る仕組みは国内だけでなく、いまやグローバルになっている、その先頭に立っているのが人権条約機関であり、国連の人権メカニズムです。そして、国連人権理事会や条約機関の独立した専門家たち、NGO、先住民族や女性など今まで排除されてきた人たちが大きな役割を担ってきている、と言います。

こうして出てきた勧告は、主権国家を担ってきた人たちにとっては想定を超えたものであり、それゆえに危機感を持って攻撃する傾向があるそうです。

阿部さんは、自民党の憲法改正草案にも触れながら、日本国内の民主化をすすめ、立憲主義についてきちんと学び、その中で人権条約を位置づけることが必要だと締めくくりました。

お二人のほか、拷問禁止委員会日本審査の状況、日本の刑事司法、マイノリティの権利、原発問題、「慰安婦」問題と人権条約機関の勧告、という視点から、各発言者から報告がありました。
 

注1)上田人権人道大使の「シャラップ」発言

5月21日、22日、ジュネーブの国連で拷問禁止委員会の第2回日本政府報告書審査が行われた。日本の刑事司法について、取調べ中に弁護人の立会いが一切ないこと、自白偏重主義といった現状について、委員の一人から「これは中世のものだ。刑事手続きを国際水準に引き上げていくべき」というは発言があった。それに対し上田人権人道大使は、「日本は最も先進的な国の一つ」と反論、日本のオブザーバー参加者の間から苦笑が漏れたときに英語で「なぜ笑っているんだ」「シャラップ(黙れ)!」と2回叫んだ。

注2)日本国憲法第98条2項:「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」
 

【当日のプログラム】

  • 国連の勧告が持つ意味と役割とは?~日本に欠けている視点と姿勢~

    寺中 誠(東京経済大学/アムネスティ日本前事務局長/人権共同行動事務局長)
    阿部浩己(神奈川大学法科大学院/ヒューマンライツ・ナウ代表)
     
  • 国連は何を指摘し、日本政府はどう応えてきたのか?

    小池振一郎 (弁護士/日弁連えん罪原因究明第三者機関WG 副座長)
     ~拷問禁止委員会日本審査の状況から見える日本の姿勢~

    伊藤和子(ヒューマンライツ・ナウ事務局長)
    ~社会権規約委員会勧告と原発問題~

    海渡雄一(監獄人権センター代表)
    ~拷問禁止委員会勧告・特に死刑、代用監獄などから考える~

    原 由利子(反差別国際運動日本委員会事務局長)
    ~人種差別、朝鮮学校無償化排除、ヘイトスピーチから考える日本の姿勢~

    渡辺美奈 (アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam) 事務局長)
    ~国連は「慰安婦」問題をどう考え、勧告してきたか~
開催日時 2013年7月1日
開催場所 参議院議員会館 講堂
主催 アムネスティ・インターナショナル日本
ヒューマンライツ・ナウ
反差別国際運動日本委員会(IMADR-JC)
国内人権機関と選択議定書の実現を求める共同行動

 

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