6月29日、日本大学法学部にてセミナー「クルドの子供たち」を開催しました。 このセミナーを主催したアムネスティ難民チーム及び子供ネットワークからの報告です。

セミナーは、本セミナー開催にあたりご協力いただいた日本大学法学部佐渡友ゼミナールの佐渡友哲先生の挨拶で始まりました。

続いて、一ツ橋大学院生でクルド人ディアスポラ問題を研究されている武田歩さんより、トルコにおけるクルド人の厳しい差別状況、特にクルドの子どもたちがトルコ政府から受けている教育面での差別の現状についての報告がありました。

アムネスティ職員の庄司から、世界及び日本の難民認定状況並びに日本で生活している外国人の出産・子供の教育に関するアンケート結果の報告の後、2010年に在留特別許可を取得したクルド人クリンチ・エルマスさんから、港町診療所の山村医師との対話形式で、日本における生活面での苦労、子供の教育についての悩みといった生々しいお話をいただきました。

お二人には多数の質問が寄せられ、参加者の関心の高さが窺えました。

トルコで行われているクルド人差別とトルコ人への同化政策
~クルド人ディアスポラ問題研究者の武田歩さんの報告から~

1962年からトルコ語とトルコ文化を学ばせるためという理由で、クルド人居住区にトルコ人教師の派遣や学校(寄宿初等教育県学校:YIBO)の設立が始められました。

表向きは「貧しい家庭の子供たちに教育の機会を与える」ということになっていますが、実際はクルド語の使用を禁止し、公共の場での会話に罰金を科したり、学校では体罰や密告を奨励したりして、クルド人から彼らの言語を奪い取り、民族としてのアイデンティティを奪い去ろうとしているのです。

クルド人の家庭では日常会話はクルド語が使われており、子供たちはトルコ語を知らずに育ちます。しかし、小学校就学年齢に達すると、クルド人の子供たちはトルコ語の学校に通うことになります。

クルド人の子供たちはトルコ語が分からないので授業についていけません。トルコ語を話さないと、同級生のトルコ人の子供たちからいじめられたり、笑われたりもします。するとトルコ人教師は彼らに「知的障害」があると判断し、特殊学習施設(リハビリテーションセンター)に強制的に入れてしまいます。 そこでは一切クルド語を話すことは許されず、授業もすべてトルコ語で行われます。こうしてクルド語を話すこと、クルド文化について話すことに嫌悪感を抱く子どもたちが育っていきます。

最近では、こうした差別政策に対する内外の批判も高まり、2005年には、トルコ国内でのクルド語の放送・出版は解禁されましたが、クルド人同化政策は今も続いています。

在日クルド人が抱える問題

クリンチ・エルマスさんはトルコのクルド地区に生まれました。2000年にそれまでに難民として日本で生活していたクルド人の夫を頼って来日、日本で3人の子供を産み育てています。

日本に来た当初は言葉が全く分からなかったので、生活の範囲も狭く、日常生活での苦労が絶えなかったようです。

子供たちは現在日本の学校に通っていますが、言葉の問題で親として十分に子供たちの勉強の相談に乗ることが出来ないのがとても辛いと言っていました。

2010年に在留特別許可が下りた時は、全く予期していないことだったので、何のことかわからず、実感も後からじわじわと湧いてきたそうです。それ位希望を失い、諦めの気持ちで毎日を送っていたということだったようです。

2011年の東日本大震災と原発事故の時、日本にいるクルド人たちは東北に出かけ、炊き出しなどの支援活動を率先して行ったそうです。これも日本にいるクルド人たちが被災者の人々の辛さを自分たちが日常味わっている痛みと同じに思えたからだとエルマスさんが話していたのが印象に残っています。
 

当日は60名以上の方々がご参加されました。
お忙しい中、会場に足をお運びいただき、ありがとうございました。

開催日 2013年6月29日(土)
開催場所 日本大学法学部
主催 アムネスティ日本 難民チーム、子供ネットワーク
協力 日本大学 佐渡友ゼミナール、クルドを知る会

 

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