連続講座「世界のマイノリティ」の第5回/最終回、「世界と日本の少数民族、国際人権条約の視点で」が7月6日(土)に日本大学にて開催されました。

世界のマイノリティシリーズの第5回目となる今回のセミナーでは、前半部分では日本におけるマイノリティである在日コリアンに焦点をあて、後半部分では本シリーズの総括としてマイノリティを受け入れる社会の形成について考えました。

在日コリアンの方のお話

本セミナーの前半部では、在日4世である在日コリアンの大学院生の方にご自身の体験についてお伺いしました。

まずは港町診療所の山村先生の進行に沿って、朝鮮学校の学校生活や教育内容について紹介。ご自身の学生時代の写真を交えて説明いただくことで、朝鮮学校の授業風景や制服について学びました。

その後、山村先生の質問も、より具体的に日本社会が抱えるマイノリティに対する問題に入って行きました。在日コリアンであることによって、特定の仕事に就けない/就きづらいという現実や、以前は朝鮮学校で高校を卒業しても大学の受験資格を無かったこと、そしてもちろん高校無償化の対象外となったことについて等、在日コリアンに対してどのような社会的・制度的障害があるかについて聞くことが出来ました。

最後にはご自身の修論テーマである戦後の大村収容所について紹介していただき、日本の教育では知ることがなかなかできない、日本の過去の、そして現在まで続いている負の歴史について知ることができました。

阿部浩己先生のお話

休憩を挟んだ後半部では国際人権条約の視点から見たマイノリティの社会的内包について、神奈川大学法科大学院教授の阿部先生のお話をお伺いしました。

これまで世界のマイノリティの境遇について学んできた本シリーズを通じて、そもそもなぜマジョリティの社会がマイノリティを受け入れる必要があるかについての話は少なかったように思います。阿部先生に、その「そもそも」に対しての回答として、国際人権条約の意義についてご説明いただきました。

社会的弱者に対する同情や温情からではなく、マイノリティであるために不平等な扱いを受けることは人権の観点とは相容れず、マイノリティを対等なパートナーと位置づけることで社会がより豊かになっていくのであり、そのために国際人権条約はマイノリティに対する特別の配慮を求めているとのことでした。

社会の構成が複雑になり、個人のアイデンティティのレベルが多様化して来た近代社会では、国家という枠組みが不安定化し、それに対して不安を感じる人々を扇動するナショナリズムが多くの地域で人気を博しています。

しかし、単一文化の社会は脆く、多様化した社会の方がより安定して強固であるという理論に立った場合、現状のナショナリズムは国家とその国家が含まれる地域を不安定化させるものであると考えられます。人々がより豊かな人生を送ることができる多様で安定した社会を作っていくために、「単一文化の社会」という分かりやすいレトリックに対抗して、いかに多文化社会を受け入れる土壌を形成できるかという課題に対し、今後も考え、行動し続けて行く必要があると考えさせられる講義でした。

大変暑い中、当日会場にご来場頂いた皆様及び、セミナー再々にあたってご協力頂いた日本大学法学部教授の佐渡友哲先生、そしてご出演いただきました在日コリアンの方、山村先生、阿部先生、ありがとうございました。

開催日 2013年7月6日(土)
開催場所 日本大学法学部
主催 アムネスティ日本 子どもネットワーク
協力 日本大学 佐渡友ゼミナール

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