2014年7月15日・16日、ジュネーブにおいて、国連の自由権規約委員会による日本政府報告書審査が行われました。14日にはアムネスティを含むNGOが委員会へ情報を提供しました。

第6回となる今回の審査では、以前から取り上げられてきた死刑制度や代用監獄制度の問題に加え、ヘイトスピーチや特定秘密保護法などの問題が新たに取り上げられました。

その他にも、「慰安婦」問題や、ムスリムの人びとに対する情報収集、朝鮮学校に対する差別的な政策、福島第1原発の被害者への不十分な情報提供などの問題が議論されました。

代用監獄制度、死刑制度

袴田巌さんの再審を認める地裁決定を受け、代用監獄制度、死刑制度、死刑囚の処遇などについて、多くの委員から指摘があがりました。

委員会は、1988年から代用監獄制度の見直しを繰り返し勧告しています。代用監獄制度が公正な裁判を受ける権利を侵害し、冤罪の可能性を引き起こしていることから、アムネスティも同制度の問題点を強調しています。委員会は、代用監獄の廃止に向けて対策を取るべきであると述べました。また、ナイジェル・ロドリー議長は、同制度は「家族や弁護士に利益が一切なく、被拘禁者から自白を引き出すための制度」であり、「自由権規約とは到底相容れないもの」であると、厳しく非難しました。

委員会は、死刑制度の廃止とその間の改善措置、そして死刑廃止を目的とする自由権規約の第2選択議定書を日本が批准することを求めました。死刑確定者の外部との接触が制限されていることや、死刑当日まで執行が知らされないことについて、「精神の安定を守るため」と日本政府は説明しましたが、委員は「精神の安定のいかんは、政府が判断することではない」と言及しました。

特定秘密保護法

委員会は、秘密の対象範囲が曖昧なこと、表現や報道の自由がどのように保障されるのかについて質問しました。また、なぜ今このような法律が必要となったのか、という根本的な立法の動機を問う場面もあったようです。

一方、日本政府代表団は、情報公開制度は特定秘密保護法にも適用されること、そして自由権規約19条は、国家の安全や公共の秩序に基づく一定の制約を認めていることから、秘密保護法は19条に反していないことを強調しました。

ヘイトスピーチ

近年、日本国内で蔓延しているヘイトスピーチに対しては、名誉毀損以外の取締りや刑事法的な措置がないこと、そもそも包括的な差別禁止法が存在しないことが指摘されました。委員会は、自由権規約20条は、暴力防止のため人種差別を扇動するヘイトスピーチを抑制することを規定している、と述べています。

相次ぐ委員会からの苦言

ナイジェル議長は、日本政府は過去の委員会で審査・勧告を受けても、勧告実現に向けて積極的な行動をとっていないと苦言を呈しました。日本政府の解答は予め用意された文言を繰り返すことに終始しました。特に1日目は、事前に提出していた政府回答文書を読み上げるだけで、「協議の時間を一時間無駄にした」と委員から指摘されてしまいました。また、「慰安婦」問題については、「慰安婦」ではなく「性奴隷」と呼ぶべきであると委員会は強調しました。

締約国としての義務

委員会は、前回(2008年)よりも強い総括所見(最終見解・勧告)を出す姿勢を見せています。自由権規約の締約国である日本政府は、勧告に沿って、改善に向けた措置を取る義務があるのです。

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【関連資料】

▽7月24日に、総括所見が発表されました。国連人権委員会のオフィシャルサイトから全文(英語)が参照できます。
http://tbinternet.ohchr.org/_layouts/treatybodyexternal/Download.aspx?symbolno=CCPR%2fC%2fJPN%2fCO%2f6&Lang=en

▽日本審査に向けたアムネスティの提言書(日本語訳)
https://www.amnesty.or.jp/library/report/pdf/ICCPR2014.pdf

開催日 2014年7月15日・16日
場所 ジュネーブ国連欧州本部

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