家事労働者として香港で働いていた、インドネシア人女性のエリウィアナ・スリスチャニンシさん(23歳)は、雇用主の夫妻から執拗な虐待を受け続け、自力でトイレに行くこともできないほどの重傷を負いました。
住み込みの家事労働者、いわゆるメイドを雇うことが一般的な香港では、こうした事件は決して珍しいことではありません。家事労働者の虐待は家の中で起こるため、問題が表に出にくく、また、香港政府は自国民でないからと真摯に対応することはありませんでした。
アムネスティは、香港政府に対し、こうした香港で働く家事労働者が雇用主から虐待を受けないように、政府が主導権をもって法を整備するよう求める署名活動実施。2014年4月、日本国内で集まった1,010筆をあわせ、アジア支部で集まった17,000筆の署名を香港政府に提出、改善を求めました。
こうした活動の結果、2015年2月、地方裁判所は、エリウィアナさんの雇用主であった羅允彤(Law Wan-tung)被告に対し、懲役6年および罰金15,000香港ドルの有罪判決を下しました。
この有罪判決は、家事労働者に対する虐待と搾取の悪循環を生む状況を放置していた政府の過ちを痛烈に非難しています。香港当局がこのような恐ろしい人権侵害に目をつぶることは、もはや許されません。
香港政府が虐待を助長する法律や規則の撤廃を実行するよう、アムネスティは引き続き注視していきます。
エリウィアナさんへの身体的虐待に対し抗議する人たち(C)Robert Godden
香港で働く、移住家事動労者の実態
香港には30万人以上の移住家事労働者がおり、そのほぼ半数がインドネシア人の女性です。高賃金の甘言につられたこうした女性が香港で直面するのはとても厳しい現実です。
給料は支払われず、休日がなく一日中こき使われ、外出も制限され、身分証明書等の書類を取り上げられ、性的な暴行を受け、食事も満足に与えられない・・・。
アムネスティが2013年11月に発表した、香港における移住家事労働者の虐待に関する報告書は、数万人のインドネシア人女性が搾取と強制労働を目的に売買されている実態を明らかにしています。
加えて、香港の法律では、移住家事労働者は契約終了後2週間以内に、新しい雇用主を見つけ就労ビザを取れなければ、香港を出なければならないという決まりがあります。
この制約があるため、女性たちは虐待される状況でもそこに留まらざるを得なくなっています。もし仕事を辞めれば、2週間以内に新しい仕事を見つけることは難しく、国外に出なければならないことがわかっているからです。
そしてそうなれば、多くの女性にとって、高額な就職あっせん料を返済したり、家族を養うことができなくなってしまうのです。
アクション期間 | 2014年1月31日~4月14日 |
署名提出日 | 2014年4月 |
署名提出先 |
中華人民共和国香港特別行政区 労働福利局 Matthew CHEUNG(張建宗)局長 |