「ジェンダー」という言葉を聞いたとき、皆さんはまず初めに、何を思い浮かべますか?「女性」や「LGBT」といった単語を思い浮かべる人が多いかもしれません。

そして次に「今、まさに私が関心のある話題の一つだな」とか、「最近話題になっているみたいだけど、自分とは関係ないかな...」など、さまざまに思いを巡らすのではないでしょうか。

2017年12月に開催した、ユース合宿「グローバルな視点でジェンダー問題を斬る!」には、そうしたさまざまな思いを持った高校生から社会人の方まで、約30名の方が参加され、2泊3日という短い期間にもかかわらず、同世代の仲間と意見交換や研修を通して、幅広い知識を身に着けることができました。

この合宿に参加した、アムネスティ日本 ユース・ネットワークの小野が報告します。

講師とスペシャルゲスト

講師のカロリーナ・バン・デ・メンスブルッゲさん講師のカロリーナ・バン・デ・メンスブルッゲさん

講師は、ジェンダーを専門に国際法や人権法の視点から、世界各地の人権教育プログラムの開発や人権状況の調査に取り組む弁護士のカロリーナ・バン・デ・メンスブルッゲさん。

スペシャルゲストには、松岡宗嗣さん(オープンリーゲイの大学生)、草野由貴さん(女性と人権全国ネットワーク事務局)、赤阪むつみさん(難民支援協会)の3名を迎え、とても濃密な合宿となりました。

研修の概要と目標

この合宿では事前に下記の目標を定め、参加者一人一人の理解を深めました。

  • ジェンダーと人権に関する基本的な知識を身に着ける
  • ジェンダー問題を人権の観点からとらえる力を身に着ける
  • ジェンダーを理由とした差別や暴力について知り、国内外の状況について理解を深める
  • 社会を変える活動のノウハウを知り、問題改善に向けた活動プランを立てる
  • 差別のない平等な社会のために、仲間とともに声を上げる

研修内容詳細

■イントロダクション

まず初めに、軽く自己紹介をして参加者同士お互いを知り、次にアムネスティ・インターナショナルとユース・ネットワークの活動の紹介などを行いました。また、合宿を実りあるものにするため、「人の話を遮らない」など、合宿中のグラウンドルールを作成しました。

■セッション1「ジェンダーと人権」

赤阪むつみさん赤阪むつみさん

このセッションでは、「ジェンダーを理解する」、「ジェンダー不平等と差別を知る」、「ジェンダーを人権の視点からとらえる」を3本柱に議論しました。

「『男の人』『女の人』とはどのような人を指すのか」について意見を出しあいました。それを踏まえ、講師カロリーナさんからジェンダーについての説明を受けました。普段の生活ではあまり気を留めて考えないことも、事前にじっくり考えた上で講師の説明を聞いたことで、なるほど、と深く理解することができたように思います。

その後、いくつかのCMを視聴し、それがジェンダーの観点からどのような問題があるのか、そしてどのようにすればCMが改善されるかについて議論をし、発表を行いました。

■セッション2「ジェンダー差別・不平等の実態を知る」

松岡宗嗣さん松岡宗嗣さん

このセッションのテーマは、「さまざまな形態のジェンダー差別、不平等。日本と他国の状況を知る」、「複合的差別について理解を深める」ことです。

性的・身体的暴力、性的嫌がらせの実態について学び、ケーススタディを通して理解を深めました。その後、家庭や職場における差別の実態、伝統的価値観、偏見に基づく差別の実態、日本における複合的差別の実態についての説明を受けました。

それを踏まえ、日本に滞在する難民の女性が置かれている状況についてゲストの赤阪さんから説明をしていただきました。難民の女性は「難民」であること、そして「女性」であるということで苦労をしていることを聞き、複合的差別の現実を知りました。

■セッション3「社会を動かすノウハウを知る」

草野由貴さん草野由貴さん

次のテーマは、「実例から学ぶ効果的な活動手法、世界のさまざまな活動手法を知る」ことです。

ユースの活動家である草野さんと松岡さんから、どのような活動をしているのかについて伺い、社会に影響を与えることができる効果的な活動について学びました。また、ユース・ネットワークのメンバーから、ILGAというジェンダーに関する国際会議の報告を受け、世界の活動についても知ることができました。

■セッション4「キャンペーンを企画し、仲間と行動する!」

最後は、「みんなでキャンペーンを考える」、「みんなで行動しよう」です。

まず、アムネスティがキャンペーンを行う際にどのようなプロセスを踏んでいるのか、について説明をしました。その上で、ジェンダー的に平等な社会を実現するためには、何をすべきなのか、どう行動を起こせるのか、について発表しあいました。最後は残念ながら時間が足りなかったため、持ち帰りの課題となりました。

■終わりに

研修のプログラムが一通り終わった後、3日間、一緒に過ごした参加者に感謝の気持ちを伝えるために、解散の時間まで参加者同士で手紙を書きました。満足のいく議論ができたためか、参加者全員が思い思いの人に熱心に手紙を書きすぎ、時間内で書ききることができない人が続出しました(笑)。また、多くの参加者が、講師や通訳を担当したアムネスティの職員にも感謝の気持ちを込めて手紙を書いていました。

帰りの電車で、講師のカロリーナさんが手紙を読んでとても喜び、「参加者のことを誇りに思う」と語っていたのがとても印象的でした。

この合宿を機に、新たな活動家が生まれることを願っています。

実施日 2017年12月15日(金)~17日(日)・2泊3日
場所 国立女性教育会館
主催 アムネスティ・インターナショナル日本

ヒューマンライツ・サポーターになりませんか?