2019年6月9日(日)、森松明希子さん(原発事故自主避難者)を講師にお招きして、講演会「命を守る、自由を守る、笑顔を守る」を開催しました。

森松さんは、福島県郡山市在住中に東日本大震災で被災され、3歳と0歳の2児を連れ2011年5月に大阪市へ避難されました。その後、2018年に国連人権理事会にて避難の現状を訴えるとともに、国連勧告を日本政府が完全実施することを求めるスピーチをされました。

また、今年の3月には、被ばくから守る母子ツアーとして、フランス、ドイツ、英国などの欧州諸国を回られ、行政機関、小学校、中学校、高校などで講演をされています。

今回の講演では、原発によって被害を被った人たちの健康に対する権利や、移動を強いられた人たちの移動や移住の自由に対する権利などに焦点を当て、お話しくださいました。

講演する森松明希子さん講演する森松明希子さん

森松さんは、被ばくに最も脆弱な原発事故被災・避難者の子どもの権利状況について、子どもの権利条約の4つの基本原則全てに違反する状況が8年間続いている点を指摘されました。

  1. 子どもの「最善の利益」が第一次的に考慮されていない
    原発事故直後、放射能汚染は広範囲に広がるが、人々に情報は知らされず無用な被ばくを重ねた。さらに、区域外避難者(いわゆる自主避難者)はほとんど公的支援がない。
  2. 子どもの生きる、発達する、育つ権利の侵害
    「保養」は民間・ボランティア任せ、「避難」は自己責任という名の国・自治体の保護義務の放棄のため、区域外避難者は「自力」避難を強いられている。
  3. 子どもの差別されない権利の侵害
    「自主避難」は「自力避難」であるにもかかわらず根拠なき誹謗。「自主避難」=勝手に避難した人、と印象付けられているため、意見表明がより過酷な状況。政府の帰還政策のみの強化→望まない帰還→無力感→過去を黒塗りする人生(アイデンティティーの喪失)。
  4. 子どもの意見表明を認め尊重すること
    特に、避難や保養をしたい、もしくは続けたいという避難している子どもの意見表明を認め、尊重すべき。

また、福島原発事故の被害者の人権保護について、国連では少なくとも6回の勧告が出されていることに触れ、日本政府はこれらの勧告を直ちに受け入れ、完全に実施することの必要性を話されました。(2012年のUPR勧告(オーストリア) /2013年の人権理事会グローバー勧告/2016年の女性差別撤廃委員会勧告など)

国際社会からみれば、東日本大震災および原発避難者は「国内避難民」(「国内避難民(国内強制移動)に関する指導原則」GPID参照)に該当するそうです。

学校教育、社会教育、地域防災会議、自主防災活動などのあらゆる場面で、普段からこの指導原則を周知し、学ぶ機会をつくることが必要です。将来的に、この「国内避難民に関する指導原則」に対応した国内立法化が求められます。

講演会に参加された方達からは次の感想がありました。

森松さんの熱い思いがよく伝わってきました。特に印象的だったのは、国内と国外での関心の差でしょうか。

とても素晴らしい企画をありがとうございました。 国内避難民や原発事故被害者の人権をどのように守るべきか、日本政府に本当の情報を開示することを要求すべき。

ヨーロッパにおける関心の高さと教育現場の状況を知りました。アムネスティとして国連勧告を守るよう、日本政府に要請することを検討すべきでは。ちなみに、国連の人権委員会の勧告は、マスコミは殆ど取り上げていませんので、東京オリンピックにあわせると効果的だと思います。

とても貴重な学習会でした。森松さんの講演は素晴らしかったです。情熱家で、またdown to earth の方ですね。

人権についての基盤はやはり小さい時からの教育ではないかと(自分も含めて)。またメディアの人権に対する扱いの弱さも同じルーツではないのか?と考えこんでしまいました。

(報告者:アムネスティ日本 水戸グループ)

実施日 2019年6月9日(日)
場所 あむねすみと2F ハングルアカデミー
主催 アムネスティ・インターナショナル日本 水戸グループ

 

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