2009年7月5日に中国新疆ウイグル自治区の首府ウルムチで多くのウイグル人が犠牲となった「ウルムチ事件」から10年。ウイグルの人たちの生活は凄惨なものとなっています。その原因となっているのは中国政府によって建設されている大規模な強制収容所です。

2019年7月6日、自身や親族、友人達が収容所に入れられ、悲惨な日々を送った体験を証言する集会「ウイグル人証言集会~中国新疆ウイグル自治区・ムスリム強制収容を語る~」を開催しました。

ウイグル人の魂の叫び

メヒルグル・トゥルスンさんのビデオ映像

冒頭、2015~18年に3回強制収容されたメヒルグル・トゥルスンさんが、アメリカで収録されたビデオ映像で収容所での体験を語りました。彼女達は、毎日、習近平と中国共産党を讃え、感謝する文言を唱和させられます。その時、使うのはウイグル語ではなく北京語です。間違いを犯すと懲罰として暴力を振るわれたり、食事を取らせないなどの虐待を受け、重度の精神疾患を患ったと訴えました。

その後、9名の方の証言が有りました。彼ら/彼女ら全てが訴えていたのは家族や友人達が、今どこにいるのか明らかにして欲しいということです。あまりにも多くの人が突然失踪するのです。少なく見積もっても100万人といわれています。証言者の中には、各村には強制収容する人数のノルマが課せられていると述べる人もいました。

「ウイグル人強制収容証言集会」で体験を語る証言者の一人

そして、ほぼ全ての人が拷問を経験しています。電気ショックを受けたり、不自然な姿勢で長時間拘束されたり、薬物を注射され気分が悪くなる人もいます。これまでも拷問によって命を失う人は後を断ちません。

そこでは何が?

中国政府は「収容所」の存在を公式に認めていますが、そこは職業訓練所であり強制収容所ではないと主張しています。しかし、行方不明となっている人の中には、社会的に高い評価を受けていたり、著名な教育関係者や研究者、芸術家、スポーツ選手など訓練など全く必要のない人が多く含まれています。

中国にとってウイグルとは

なぜ、彼ら/彼女らが強制収容所に入れられるのでしょうか? それは、彼ら/彼女らがウイグル人であったり、ムスリム・ムスリマだからです。新疆ウイグル自治区は中国の推し進める巨大な経済圏構想・一帯一路の出発地であり、要であること。また、石油や天然ガスが産出する地であり中国にとって重要な位置にあり共産党の支配が徹底されなければならないのです。そのためにも異文化や異なる宗教は認めることが出来ないのです。

中国には説明責任と調査に応じる義務がある

中国は1981年に人種差別撤廃条約に加盟しています。締約国ではないという理由は通用しません。速やかに国際機関や人権団体の自由な調査に応じるべきです。

在日ウイグル人の状況にも関心を

日本にも多くのウイグル人が居住しています。集会では、彼ら/彼女らが日本国内で中国当局から受ける扱いについての証言もありました。

例えば、パスポートが切れそうになっても、在日大使館や領事館は更新に応じす、いったん中国に帰国することを勧めると言います。しかし上述のような大量の強制収容が実施されている中で帰国することは、自身も強制収容される恐れが極めて高いことを意味します。帰国を見合わせ、パスポートの更新をうけられなくなった人が出てきているということです。

このような人たちが日本から中国へ強制送還された事例は、今のところはないようですが、彼ら/彼女らの日本における在留について、十分に注視しておくことが必要です。

(報告者:アムネスティ日本 中国チーム 渡辺哲生)

「ウイグル人強制収容証言集会」の様子

実施日 2019年7月6日(土)
場所 明治大学駿河台キャンパス リバティタワー
主催 明治大学現代中国研究所
アムネスティ日本 中国チーム

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