ウクライナ交流イベントに参加して

谷口舞優(国際基督教大学3年)

2022年2月24日。ロシアがウクライナに侵攻を始めました。現在も多くの罪のない人々の命が奪われています。ロシアのウクライナ侵攻開始から2カ月後の4月22日(金)、アムネスティ・インターナショナル日本主催のウクライナ交流イベントに参加しました。テーマは「人権が守られている日常」。私たちの日常がかけがえのないもので、いかに恵まれたものであるかを再認識する時間になりました。

イベントにはゲストスピーカーとして、ナタリヤ・マリコバさんが登壇しました。ナタリヤさんは、ロシア人の父とウクライナ人の母の間にウクライナで生まれました。彼女は、ロシアとウクライナの2つのルーツを持っていますが、ウクライナで生まれ育った彼女は、ウクライナ人としてのアイデンティティーを持っていると言います。

イベントでは、ウクライナから日本に避難した彼女の母の体験談を交えて、ウクライナの現状を話してくれました。私たちには普段、メディアや報道番組からしか情報が伝わってきません。しかし今回は、ウクライナ人のナタリヤさんから直接心境を伺うことができた、貴重な機会でした。

ナタリヤさんは、自身の故郷であるキーウの戦前の様子も説明してくれました。その時の、故郷を懐かしむ様子が印象に残っています。また彼女が、故郷の文化や美しい街並みに誇りを持っていることが感じられました。自分の思い出が詰まった街が、一瞬にして凄惨な戦場になると想像するだけで、胸が苦しくなりました。

交流会では、世代を超えたディスカッションも行いました。高校生から60代の方までの5-6人でグループを構成し、ウクライナ戦争に関する質問や、人権について話し合いました。 さまざまなお仕事に携わる方々の視点を伺えたことが有意義でした。例えば、中東難民を支援している方は、ヨーロッパの不平等な難民受け入れ態勢を疑問視していらっしゃいました。ヨーロッパが、中東難民よりもウクライナ難民の受け入れに、より積極的だからです。世界がウクライナに注目する最中で、世界各国で人権侵害に苦しんでいる方が大勢いることを忘れてはいけないのだと、改めて気付かされました。

また、普段大学生同士でしかディスカッションをしない私にとっては、初めて中高校生と意見交換する機会になりました。彼らの社会問題に対する関心の高さや、堂々と意見を発表する姿に刺激を受けました。 ウクライナのみならず、世界には人権が抑圧され、「日常」を奪われてしまっている人が大勢います。その凄惨な状況を報道で知り、「自分には何ができるのだろうか」と無力さを覚える方も多いでしょう。私を含め多くの人も、同じように悶々とした気持ちで、イベントに参加しました。

しかし今回、同じような思いの人と気持ちを共有したことで、多くの参加者がわかったことがありました。 それは、目に見える変化を起こすことができなくても、置かれた場所で、自分にできることから行動する大切さです。

あなたにとって「大切な日常」とはなんですか?
考えや思いを、家族や友人に話すことから、はじめてみませんか?

参加者の感想

▶︎中学生 Y.H.さん(東京)
テレビでしか流れない上辺の情報しか知らなかった私にとって、今回、ナタリヤさんの話を聞いて戦争の恐ろしさや、今の自分達の生活がどれだけ幸せなものなのかを知ることが出来ました。また、このイベントで学んだことを私の中学校でもシェアをし、人権や戦争について理解を深めていこうと思いました。 ディスカッションでは、幅広い年齢だからこそ色々な意見があって面白いと思いました。戦争問題はもちろん、ジェンダーの問題についても興味があるため、そのような活動がある際は、ぜひ参加させていただきたいです!

▶︎高校生 M.N. さん(京都)
私は、日本人とアメリカ人の両親の間に生まれました。アメリカ側の親戚には、ロシア人もウクライナ人もいるので、この戦争を他人事だと思う事は出来ません。しかし、今までは「一高校生だけの力で何が変わるのか?そもそも私に何が出来るのか?」等と色々考えてしまって、結局テレビやスマホのニュースを見て悩むだけでした。 そんな時にこのイベントに参加させていただいた事で、自分では思いつかない考え方や視点で物事を見る方々と出会い、視野が大きく広がりました。そして、「小さな1歩でも動けばその分世界は変わる。自分が動いたのを見て誰かが手を貸してくれるかも知れない。だから小さな1歩でもいいから自分に出来る事から活動していこう」と思えるようになりました。

▶︎高校生 K.K. さん(京都)
この交流会を通じて本当にウクライナ侵攻が起こっているのだと実感することができました。他の参加者の皆さんと違う見方から意見を共有できたことも非常に貴重な経験だと感じました。テレビやスマホなどから受け取る情報とはまた違う視点の情報を得ることができ、自分の無力さを感じるとともに、もっとウクライナの方々のために何かアクションを起こしたいと強く思いました。 もっと詳しく聞きたいと思ったナタリヤさんのお話は、これからの私の活動や考え方にとって、すごく意味のあるものになったと思います。今日学んだことをこれからの活動に活かし、若い世代としてもっと皆が「日常」や「人権」について考えられるような場や情報を自ら発信していきたいです。

▶︎30代 M.S. さん(福島)
地元では、ウクライナから4月上旬に単身で福島県に避難してきた女性のサポートをしています。持続的な自立に向かい、一緒に何かを作り上げるためのアイディアやサポートを模索しています。 今回の交流会では、ウクライナの歴史を知ることができてよかったです。当事者の声をもっと聞き、みんなで連帯して、情報交換、アップデートができるといいと思います。場を開いていただきありがとうございました。

▶︎50代 S.M. さん(東京)
大変刺激的でした。さまざまな世代の参加者が一堂に会しただけでなく、参加者が自らの境遇を基に自分の大切にしていることなどへの想いや、ウクライナ情勢について何ができるか、何をしているか、が話せたことがとても参考になり、エネルギーをもらいました。

以上

報告者:谷口 舞優(Mayu Taniguchi)さん

谷口 舞優

国際基督教大学教養学部3年。国際関係学専攻。高校時代の留学先で知り合ったメキシコ人大学生に憧れて、スペイン語も勉強中。英語の本やドラマから心に残るQuotesを見つけることが好き。お気に入りは “Take the sourest lemon that life has to offer and turn it into something resembling lemonade.”- from This Is Us

〜ブログを通して〜
「社会問題が山積していることはわかる。関心があって情報を集めることもする。けれど実際私に何ができるかはわからない…」同じ心境の方も多くいるのではないでしょうか?私も大学生になって以来、ずっと社会問題に対して受け身の姿勢でいました。今はAmnestyの活動に参加し、体験を皆さんに共有することで、より多くの人が “最初の一歩” を踏み出せるように、後押しできたらいいなと思っています。

 

開催日 2022年4月22日(金) 19:00-21:00
開催方法 オンライン(Google Meet)
主催 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本

ウクライナ関連イベント

アムネスティ日本ではロシアによるウクライナ侵攻以降、関連のウェビナーを行っています。1回目(3月10日)の「緊急ウェビナー:2人の活動家が語るウクライナの今」では、渋谷や新宿でデモを企画しているStand With Ukraine Japanの代表の一人、サーシャ・カヴェリナさんとアムネスティ・ウクライナのダリナ・ミジナさんが登壇。それぞれ違う状況にある二人から、今何が起こっていて、私たちに何ができるのか、について語ってもらいました。

 

2回目(3月18日)の「私たちはウクライナ危機にどう向き合うべきか? ~国際法と新時代のリサーチ手法"オシント"から学ぶ~」では、メディアやSNSを通して誰もが情報戦に巻き込まれている現代社会の中で、情勢や情報を冷静に判断するための心得に触れました。途中、香港人ジャーナリストのKaoru Ngさんが、まだ熱とオイルのにおいが漂う爆撃地の取材をしながらライブ登壇し、現実にどのような"破壊"が起きているかを実況中継しました。

 

ウクライナの市民の命を守って!

緊急署名:ウクライナの市民の命を守って!(change.org)

ロシア政府に対し、ウクライナ侵略を直ちに止め、戦闘に関わっていない市民を保護し、国際法を遵守するよう求める署名を開始しました。ウクライナの人たちの人権が重大な危機にさらされています。彼らのために日本からも声を上げてください!

参加する