1. 実施日時
2024年5月31日(金) 10:00~12:30
2. 参加者
高木ひろし(愛知県議会議員)、須崎隆久・山田くるみ(名古屋成年後見センター職員)、山内奈知(NPOかわうそファミリー)、柘植将介(社会福祉士養成校教員)、石川徹・津田秀一・中島正人・稲野茂正・内藤裕子(アムネスティ日本の会員)
3. 院長からのセンター概要説明(看護部長、事務長、病院事業庁課長など幹部職員が列席)
- 1932年に設立された全国6番目の公立の精神病院である。
- 長期に入院させていた方が財政的には黒字になるが、病院の方針として早期の退院を行っている。一方で、退院3カ月以内の再入院が増加している。退院に際しては包括的地域生活支援プログラムを策定している。長期入院者は、現在では8人。
- 近年では、虐待・ネグレクトによる児童思春期病棟への入院者が増加している。
- 県立病院として、救急の最後の砦となっている(必ず受け入れる)。
- 研修機関としての役割も果たしている(医師、看護師、精神保健福祉士、作業療法士)。
- 行政機関として、名古屋市の児童相談所、警察、裁判所とも連携している。能登半島地震にも直後にチームとして派遣された(災害精神科医療)。
【診療の概要】
精神科治療の柱は以下のとおりである。 この3つを組み合わせて良質で信頼される精神科・医療を目指している。
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薬物療法
種々の向精神薬による症状の鎮静、改善を図るとともに、常に健康状態を観察しながら、諸検査を定期的.に実施し、副作用の発見と防止に努めている。 -
精神療法
治療者との面談を通.して心に安らぎを与え、現在の葛藤を処理し、自己洞察をも得ることを目指している。
4. 事前質問に対する回答及び質疑応答
5. 施設内見学(院長他の引率と説明の下、施設内を見学)
- 刑務所や入管では厳禁だった撮影も許可されたので貴重な写真が撮れた(患者さんの撮影は禁止)。
- 建物全体も廊下や壁も明るい色調で、広々として開放感があった。閉鎖病棟内も明るく広々としていた。
- 閉鎖病棟と他の区域の間のドアは二重になっていて、一方が閉じなければもう一方が開かない仕組みとなっていた。刑務所や入管収容施設と同じ仕組み。逃亡防止のためとのこと。
- 保護室は刑務所の保護房と同じような構造であるが、採光があり明るい部屋だった。
- 面会者は病棟には入れず、面会者用の面会室で面会する。
- 病棟個室は内側から施錠できるようになっていて入院者に安心感をもたらすと思った。
- 4人部屋も棚とカーテンで仕切られ、プライバシーが保たれるようになっていた。
- 開放病棟に入院できるような人は退院してもらうので、開放病棟は不要になり、全て閉鎖病棟になった。
- ナースセンターには保護室を監視するモニター画面がズラリと並んでいた。
- 廊下には保護室がずらりと並んでいて異様だった。刑務所や入管よりも保護室の数が非常に多い印象。
- 入院者はパソコンやスマホは原則持込み可。カメラはテープでふさいで使えないようにしていて、テープを剥がすなどした場合には以後使用を禁止されることもある。
- 電気けいれん療法は非常勤麻酔医の立ち会いの下、週3回、1日あたり6人実施。これしか効かない人もいる、薬よりも副作用が少なく、依存性もない、とのこと。
- 地域連携室は女性職員がほとんどでパソコンが並んでいた。
- 参観終了後に院内のカフェで食べた600円のスパゲティは手頃な価格でありながら本格的な味だった。
- 病院の入り口付近で、職員にシャッターを押してもらい、記念写真を撮った。
■ 参観報告者のコメント
- 医療保護入院者は、(以前は民間の移送業者を使って拉致のようにして連れてこられていたことがあったが、)現在どのようにして入院しているのかはっきりしないが、家族に騙されて入院したり、通院している人が入院したり、警察が同行して半ば強制的に連れてきたりしているようだ。(事前質問への回答参照)
- 社会的入院は基本的に0だというのは画期的。40%くらいはあるものと予測していたが、早期退院ポリシーの賜物だ。(事前質問への回答参照)
- 身体拘束は4カ月間で24件(実患者7人)、平均拘束時間7時間13分と乱用はされていないように感じた。また、身体拘束の際も排尿・排便に配慮されていると感じた。(事前質問への回答参照)
- インシデント発生数も程度別に把握されており、永続的な後遺症が残ったり、死亡したりした事例はなかった。(https://hospital.fujita-hu.ac.jp/about/safety/safety-management/grouping.html)
- 治療(服薬、・電気痙攣療法)への同意は病識(自分が病気だと認識していること)がない人については悩ましい問題だ。自己決定権は最も根源的な人権であり、(入院することも含めて)医師や家族に委ねることができるものなのだろうか。(事前質問への回答参照)
- 緊急入院者の大半(半年間で85人中65人)が保護室に入れられていた。隔離期間(保護室に入れられている期間)が平均49日間という数字には驚いた。保護室の壁に(日課表)が貼ってあり、毎食後と就寝前の服薬が書き込まれていて、日課の最重要事項が1日4回の服薬であることがわかる。内海聡医師によれば精神薬は覚醒剤とほぼ同じ劇薬とのことだが、そんなものを毎日4回きちんと飲んだらどうなるのだろうか。誰もいない保護室で平均49日間も過ごす間、食事と服薬以外はどのように過ごしているのだろうか。保護室は24時間カメラでモニターされているので、少なくともプライバシー権は皆無だ。(写真参照)
- 玄関付近に「基本理念」「基本方針」「患者の皆様の権利」が掲げられていたが、特に「患者の皆様の権利」は重要だと感じた。(写真参照)
(文責:内藤裕子、津田秀一)
<愛知県精神医療センターの基本理念等の掲示の本文>
■ 基本理念
持てる資源と知識と技術を総動員し、知恵と工夫を加えて、疾患や障害からの回復をお手伝いします。
■ 基本方針
- 安全で良質な模範的医療を提供し、保健・医療・福祉機関、地域との連携に努めます。
- 急性期、救急医療に力を注ぎ、社会参加の促進と生活の支援に努めます。
- 情報公開に努め、開かれた精神医療センターを目指します。
- センター職員及び県内の精神科医療関係者の皆様の教育・研修を積極的に行い、資質の向上に努めます。
- 経営改善に努め、効率的な運営を目指します。
■ 患者の皆様の権利
- ひとりの人として尊重される権利があります。
- 公平で安全かつ良質な医療を受ける権利があります。
- 治療内容や方針について、充分な説明を受ける権利及び第三者に対し不服を申し立てる権利があります。
- 治療上必要な範囲を超えた行動制限をされない権利があります。
- 個人情報を保護される権利があります。