女性の権利

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女性への差別

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貧富や人種や文化の違いにかかわりなく、また平和なときでも紛争のときでも、国家、地域社会、そして家庭の中で、女性は絶えず差別と暴力に直面しています。

家庭内暴力、「名誉殺人」、拘禁施設内や紛争下における強かんなど性暴力・・・。女性への暴力は、ジェンダー差別(社会的・文化的ににつくられた性差別)に深く根ざしています。ジェンダー差別は、私たちの社会が、女性が男性と平等であることを否定していることによって支えられています。女性に対する暴力の撤廃に関する宣言は、「女性への暴力は、女性が男性に比べて従属的地位に置かれることを強いる重大な社会的構造の一つである」と明記しています。

女性への暴力は「自然」でも「避けられないもの」でもありません。それは、歴史的・文化的につくられた価値であり基準なのです。

女性への暴力が続く大きな要因の一つは、世界的にみても加害者に対する免責がはびこっていることです。ハンガリーでは、性犯罪の加害者の3分の2は被害者の知り合いですが、加害者が裁かれることはほとんどありません。ナイジェリアでは、警察や治安部隊による強かん事件が蔓延しています。しかしここでも、加害者を裁くことがまったくできていません。

女性への暴力

「慰安婦」問題

1930年代初めから第二次世界大戦の終結まで、日本・朝鮮・中国をはじめアジアの多くの少女や女性たちが日本軍の「慰安所」で性奴隷として働かされました。1990年に韓国の女性たちがこの問題を提起し、翌年、金学順(キムハクスン)さんが名乗り出たのをきっかけに、アジア・太平洋地域の多くの被害女性たちが声を上げ始めたのです。

日本政府は1993年、第二次調査結果に基づき「お詫びと反省の気持ち」を表し、1995年には<女性のためのアジア平和国民基金>を発足させました。しかし、日本政府の公式な謝罪と賠償という形ではなかったため、多くの被害者や支援団体から批判され、受け入れられませんでした。現在に至るまで、日本政府は、日韓条約などを盾に、被害者に対する誠意ある対応と再発防止に向けた取り組みを拒み続けています。

これに対して、2007年7月以降、米国、オランダ、カナダ、欧州連合(EU)、台湾、韓国などが次々と議会で、日本政府の取り組みを促す決議をあげ始めました。国連人権理事会や 各条約機関も繰り返し日本政府に対し、勧告を出しています。

また、こうした国際的な動きを受けて日本国内でも、2008年3月の宝塚市議会を皮切りに、 箕面、清瀬、札幌、福岡、三鷹、小金井、京田辺、生駒、泉南、国分寺、長岡京、船橋、国立、田川の15の市議会が日本政府の誠実な対応(真相究明、尊厳・名誉の回復、賠償・歴史教育、国会の決議・公聴会開催など)を求める意見書を採択しています。

日本政府は、国連や条約機関からの勧告を尊重し、ジェンダー平等に基づいた「慰安婦」問題の解決に取り組むべきだと、アムネスティ・インターナショナルは考えます。


近年の動き

2011年は、日本軍「慰安婦」の被害者本人が、初めて名乗り出てから20年、また、12月14日は、韓国の被害者と支援者が、韓国のソウルの日本大使館前で、毎週水曜日に抗議行動を続けてから1000回目に当たる、節目の年でした。

この日、アムネスティの事務総長の名前でプレスリリース「アムネスティ事務総長、日本軍性奴隷制のサバイバーに対する正義の要求を支持」が発表され、また、それと同時に、国連の「16日間行動」では、アムネスティの世界中の支部から、「慰安婦」問題を解決するよう求める数多くの要請ハガキが、日本政府へ送られました。

2011年8月、韓国の憲法裁判所は、韓国政府が「慰安婦」被害者の被害回復のために外交努力を行わないのは憲法違反であるとの判決を出しました。韓国政府は日韓請求権協定3条に基づき、9月と11月に、日本軍「慰安婦」被害者等の賠償請求権に関する二国間協議を、日本政府に正式に申入れました。

12月18日に京都で行われた日韓首脳会談においても、李明博大統領は、日本軍「慰安婦」問題の「優先的解決」を求めました。しかし、野田首相は「決着済み」とこれまでの文言の繰り返しにとどまり、「外交上の経路を通じて解決する」ための誠意ある態度を示しませんでした。逆に、1000回目を記念して日本大使館前に置かれた少女像「平和の碑」の撤去を求め、問題が解決される糸口は、未だ見えないままです。

被害者は韓国だけではなく、中国、台湾、フィリピン、インドネシア、東チモール、マレーシア、オランダなどの女性たちが名乗り出て、証言をしています。国連をはじめ国際社会からの相次ぐ勧告を受け入れ、日本が立法化によって一刻も早くこの問題を公式に解決するように、アムネスティの働きかけは続いています。

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