日本:国会議員に対して日本政府の国際刑事裁判所設置規程(ローマ規程)への加入を支持するようよびかける

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2006年12月 5日
国・地域:日本
トピック:死刑廃止
アムネスティ・インターナショナルは、本日、2007年の国際刑事裁判所設置規程(ローマ規程)への加入に向けた政府の前進を支持するよう、日本の国会議員全員に呼びかけた。政府は、加入とそれに必要な立法措置の法案を、承認に向けて近く国会に提出するとの意向を示した。したがって、議員の支持は、日本がこの国際司法制度に参加するためにきわめて重要である。

ローマ規程は、1998年7月17日、ジェノサイド、人道に対する犯罪、戦争犯罪の疑いのある人物を取り調べ、訴追するため、新たな常設の国際刑事裁判所を設立しようとして採択された。その後4年も経たないうちに、圧倒的な国際的支持を受け、裁判所が設立された。以来、裁判所は、コンゴ民主共和国、ウガンダ北部とスーダンのダルフールでおこなわれた犯罪の調査と訴追に焦点を当ててきた。コンゴ民主共和国における紛争で15歳以下の子どもを徴兵、徴募、または使用した罪で起訴されているトマス・ルバンガ・ディーロの最初の裁判が2007年に始まる予定である。

アムネスティは、国際的支持と協力を得て、責任がある人物がこの(国際刑事)裁判所、または補完性の原則のもと、国内裁判所で確実に裁かれるようにすることにより、裁判所はもっとも恐ろしい犯罪を阻止することができると確信している。1998年以来、アムネスティは、すべての国がローマ規程を批准ないし加入し、この新たな国際司法制度に参加するよう呼びかけるキャンペーンを展開してきた。現時点で、すべての大陸から、国際社会の半数以上である104か国がすでに締約国となっている。その他多数の国ぐにが、批准または加入に向けて準備中である。

当初、裁判所設立に反対していた米国さえも、その見解を再検討している。例えば、2006年9月18日には、米国務省法律顧問が「我われは、国際刑事司法と責務のための国際刑事裁判所という目標を共有」し、ダルフールの情勢に関しては、「ダルフールの残虐行為の責任者を裁くための国際刑事裁判所の使用を支持する」と述べている。

日本は、裁判所の設立を強く支持をしてきた。ローマ規程の起草にも関わった。以来、裁判所の監督機関である締約国会合にオブザーバーとして参加するなど、裁判所の動向を積極的に追ってきた。アムネスティ・インターナショナルは、ローマ規程への加入に向けた準備において、政府が2007年に裁判所予算に貢献するための資金を確保し、日本の協力を保証する立法措置を含めた議案を近く国会に提出予定であるという今年9月の報道を歓迎する。

日本が2007年に加入することになれば、締約国会合に完全参加することができ、また将来の選挙に判事候補を推薦する資格が得られるようにもなる。最も重要なのは、日本が加入すれば、人道上最悪の犯罪への免責を絶つ新しい国際司法制度によって日本の人びとが守られるということである。

アムネスティは、ICCに対する国会議員の幅広い支持が、国会内にすでに存在していることを承知している。実際、アムネスティは、これまで国会の各政党に対してこの問題を提起しており、日本の加入に対する圧倒的な支持が寄せられていることを知っている。しかし、アムネスティは、日本がローマ規程に加入すべきかどうかについて、若干の懸念が寄せられていることも承知している。アムネスティは、こうした懸念に応えたいと思う。

第一に、ICCは現在、アフリカの三つの事態に関して捜査中であり、日本には直接関係しないという懸念が指摘されている。当然のことながら、そのような重大な犯罪は、私たちすべてに影響を及すものであり、どこでその行為がおこなわれたかは関係なく全地球的に根絶に向けて取り組むべき人道全体への犯罪である。さらに、その最初の捜査だけを見て、ICCがアフリカにのみ焦点をあてると結論づけることは誤りである。ICCが取り上げた事件は、犯罪の最悪の状況を代表するものである。現在、ICCは他の事件の分析を進行中であり、遠からず他の地域の事件を取り上げることは間違いない。

第二に、日本が多額の分担金をICCの予算として負担することになる、という懸念がある。分担金支払いの基準として、ICCは国連の基準に基づいており、日本が高額の分担金負担国の一つとあることは確かである。締約国会合は、最近、分担金に対する国連で採用されている上限制度がICCへの分担金にも適用されることを明らかにした。アムネスティは、予算問題が日本の加入を妨げないことを希望する。アムネスティは、ICCの年間予算が、他の国際機関と比較して小規模であり、ここ数年9千万ユーロ以下であることを指摘する。また、ICCでは強力な財政管理がおこなわれており、ICCの効率的で効果的な執行を確保する基盤であるという指摘も重要である。この効率的で効果的な執行については、内部監査人がICCの日常的な会計状況を国際的に監査するものや、年に一度、締約国会合や予算・財政に関する専門委員会に対して、外部監査人がICCの年間予算の要求やその他の財政問題を審査して報告するということが挙げられる。

第三に、ICC規程では、軍人および文民の上官は、その部下がおこなった犯罪についての刑事責任を、ほぼ自動的に、上官であるという事実だけで負うことになってしまうのではないかということが一部で心配されている。しかしそのような心配は杞憂である。なぜならば、確かにローマ規程は、上官がその部下のおこなった犯罪につき刑事責任を負うことを認めているが、28条で、上官責任に関する国内訴訟で問題となる可能性のある不当な問題を回避するための条項が注意深く定められているからである。具体的には、上官責任を問うには次のような要件が必要である;上官が効果的な指揮監督権限をその部下に対して保持していること、上官が部下に対し正当に指揮監督できなかったこと、上官が部下が犯罪をおこなっていること又はおこなおうとしていることを知っていたこと・知っているべきだったこと(ただしICC規程では、この過失要件については軍および非文民の上官に限って適用される)、そして上官が、犯罪を予防・抑止するために又は適格な部署へその犯罪の調査・訴追を依頼するために、その権限内で取りうるすべての合理的な手段を実行しなかったこと。

そして最後に、ICC規程では、部下は上官の命令に従ったことについて刑事責任を負うとされているが、そのような条項は、上官命令に従うことを部下に義務付けている日本の国内法と対立するのではないかということが一部で心配されている。しかしそのような心配は同じく杞憂である。なぜならば、一般的な上官命令に従う義務は日本法に存在するかもしれないが、そのような命令にジェノサイドや人道に対する罪、戦争犯罪が含まれると考えるのは合理的な解釈とは言えないからだ。実際ICC規程では、国内法で上官命令に従う義務が存在する限りにおいて、ICC規程の適用の例外を認めている。しかしその例外規定の適用には次の2つの要件が必要である;部下がその命令は違法であることを知らなかったこと、そしてその命令が明白に違法であるとは言えないこと。ICC規程はジェノサイド及び人道に対する罪の命令は、明らかに違法なものだとしている。

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日本のICC規程加入を考える際には、これらの情報が有用であろうとアムネスティは考える。ICCに関するより詳細な情報が必要な場合は、以下のサイトを参照のこと。(https://www.amnesty.or.jp/.)

また当文書について不明な点は、以下の連絡先まで。住所:〒101-0054 東京都千代田区神田錦町2-2共同ビル4階TEL: 03-3518-6777 FAX: 03-3518-6778Eメール: teramako@amnesty.or.jp (担当:寺中)

アムネスティ・インターナショナルは日本国のICC規程加入を歓迎する。加入を経て、日本は、不処罰の文化を打破するための国際社会の取り組みに、より積極的に参加していくことであろう。

アムネスティ発表国際ニュース
2006年12月5日