9月29日(日)、シンポジウム「使い捨てられるアフリカ 資源開発とコンゴ危機」を、青山学院大学で開催しました。

当日は、なんと100名を越える方が足を運んでくださり、活発な議論を繰り広げることができました。東京事務所、活動担当の山下からの報告です。

いま、コンゴは、大地に眠る金、銅、コバルトなどの資源物資をめぐり周辺国や大国、反政府勢力、が複雑に絡み合う状況にあります。近年では、中国を筆頭とした世界各国の企業が資源開発に乗り出しています。資源が豊富にあるが故に長年紛争で傷つき、不安定な情勢が続くコンゴ。

今回のシンポジウムでは、それぞれ異なるバックグラウンドをもつ3人のパネリストをお招きし、「人道支援」・「環境保護」・「法律」という視点からコンゴの資源開発をめぐる問題にアプローチしました。

米川正子さんのお話:紛争と政治からのアプローチ

米川さんは、2007年から2008年、コンゴ東部に位置する北ギブ州ゴマ市にて、UNHCRの所長を務めていた方です。コンゴで繰り返される紛争と人道に対する罪、押し寄せる避難民、国際社会の対応、について、コンゴ東部と歴史的・政治的に関係するルワンダの背景を交えながら語ってくれました。

コンゴ、特に資源が豊富な東部地域は、政府軍や反政府勢力、武装グループ、そして周辺国や大国が資源の支配権をめぐり争いが繰り返されています。資源から得られる資金をその国益や軍資金に当てるためです。国際社会は今まで国連からさまざまな調査団を送り、2012年にはICCが2002年後半から2003年にかけて行われた市民への虐殺行為に対してルバンガ氏に有罪判決をくだすなど、紛争関係者に圧力をかけてきました。しかし、2012年以降、コンゴの国内避難民は総人口の3分の1にあたる265万人に膨れ上がり、治安はさらに悪化しています。

米川さんはこう会場に訴えました。「コンゴの状況を変えるために、もっとコンゴやルワンダの政治を知って欲しい。政治が分からなければ、何も動かせない。」

コンゴで働いていた頃も現在も、脅迫を受けたことがある米川さん。それでも「コンゴ市民がより幸せな生活を過ごせるよう、今後も何ができるかを考えていきたい。」と言います。この言葉には誰もが感動し、拍手が湧きあがりました。

羽仁カンタさんのお話:「環境保護」からのアプローチ

羽仁カンタさんは、A SEED JAPANの創設者であり、ケータイゴリラのメンバーとして活躍している方です。コンゴにおける資源開発の環境や生物への影響に関して話してくれました。

ほとんどどの携帯の部品に使用されているレアメタル。コンゴは世界有数の鉱物資源国です。レアメタルもその一部として、採掘が進められ、各国に輸出されています。しかし、このレアメタルの採掘が進められる一方で、コンゴに生息する動物たちの生活が脅かされ続けています。住みかである森林が伐採され、さらには採掘に携わる鉱夫に食糧として捕獲されてしまうからです。特にコンゴにも生息するマウンテンゴリラは、世界で残り700頭、絶滅危惧種リストに載っています。

レアメタルは携帯の他、パソコンやテレビ、デジタルカメラ等、あらゆる電化製品に使用されています。私たちが何気なく日々使用しているものが、コンゴのマウンテンゴリラを殺しているなんて・・・。胸が苦しくなりました。

日本の東京は「都市鉱山」とも呼ばれ、廃棄となった製品からレアメタルも含めた有用な資源が多く採れます。しかしながら、企業が生産する製品にこのようなリサイクル資源はほとんど使用されず、輸入された新しい資源ばかりが使用されています。私たち消費者が、リサイクル資源を使用した商品を取り入れ、もっともっと企業にリサイクル資源を使用するよう求めていかなければならないと痛感しました。

寺中誠さんのお話:「法律」からのアプローチ

寺中誠さんは、元アムネスティ日本の事務局長であり、現在は東京経済大学非常勤講師として人権法や国際法を教えています。寺中さんは、「法律」という側面から、コンゴにおける資源開発にアプローチしました。

今やコンゴでは中国を筆頭にし、あらゆる大国の外国企業が資源開発を飛躍的に進めています。企業はインフラ整備、コンゴ人の雇用等を条件に資源開発の利権を得ています。しかし、実際は企業が行っているのは、資源を運ぶための道づくりであって、決して住民の水や食料へのアクセスを確保するためのインフラ整備ではありません。また、資源開発現場における低賃金、粗悪な労働環境も問題になっています。このような、企業の開発を制限する法律はないのだろうか。

その一つに、2010年に制定されたアメリカの連邦法、ドット・フランク法が挙げられます。これは、企業の説明責任と透明性の向上を目的とし、製品の製造過程において、コンゴ又はその隣接国で産出される鉱物を使用しているかどうか明白にしなければならないと規定しています。この法律は、コンゴにおける全ての鉱物を対象としていない点で不十分と言えます。しかし、今日、アメリカと全く関係をもっていない企業は数少なく、全世界の企業にコンゴの資源開発における問題を意識付けるという意味で画期的だと言えます。

hrs_20130929.jpgゲストの方がた(左から)アムネスティ日本事務局長:若林秀樹、米川正子さん、羽仁カンタさん、寺中誠さん

私たちに何ができるか

資源が豊富にあるにも関わらず、コンゴの人間開発指数は、2011年と2012年の2年連続で最貧国です。資源をめぐる紛争、企業の利益ばかりを追求する資源開発のあり方が要因の一つです。

このコンゴの状況を変えるためには、私たち一人一人の行動が必要であるということを改めて感じました。一人一人がコンゴのことに目を向け、問題をきちんと理解すること。その上で、リサイクル資源を使用した商品を買う、また各企業に使用している資源の原産地を明らかにするよう求める、などして具体的なアクションを起こす。決して簡単なことではありませんが、重要な一歩だと思います。


大変お忙しい中、当日会場にご来場いただいた皆さま、シンポジウム開催にあたりご協力いただいた青山学院大学大学院・法務研究家教授の新倉修先生、及び中国チームボランティアの方がた、そしてご出演いただきました米川正子さん、羽仁カンタさん、寺中誠さん、ありがとうございました。

開催日 2013年9月29日(日)
イベント名 「使い捨てられるアフリカ 資源開発とコンゴ危機」
主催 アムネスティ日本

 

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