7月5日(土)、明治大学リバティタワーにて、全2回シリーズ冤罪と死刑2014(その2):映画『約束~名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯~』の上映会と、作家で映画監督の森達也さん、子ども人権ファシリテータなどの活動をしている浜田進士さんのお二人によるトークを開催しました。

トークの後には、アムネスティ日本の事務局長、若林が参加してシンポジウムを行ないました。主催の死刑廃止ネットワークのメンバーが報告します。

ドキュメンタリー映画『約束』

映画『約束...』は1961年に三重県名張で起こった事件で殺人の罪に問われ、一審無罪、控訴審で死刑を宣告された奥西勝さんを描いた映画です。

奥西さんは無罪を訴え続けてきました。2002年、第7次再審請求で一度は開いた再審の扉はあっけなく閉じてしまい、奥西さんは八王子医療刑務所で死に至る病と闘い、今も再審開始を目指しています。

映画は、事件当時からのドキュメンタリーフィルムと、仲代達也さんが演じる奥西勝さんを描くドラマ部分とで構成されています。映画全体を通じて奥西さんが冤罪であることを訴えており、なぜ裁判所は再審開始をしないのかと憤りを感じさせます。

特に、弁護団長の鈴木泉氏の名古屋高裁再審開始を決定した時の喜び声と、その同じ名古屋高裁が再審開始を棄却した時の悔し涙には、心底打ち震えました。この国の司法には「疑わしきは被告人の利益に」の大前提はまったく通じないのでしょうか。

森達也さんのお話

アフタートークで森達也さんは、リテラシーということを強調されていました。メデイア報道もいろんな人の話も、ネットの情報も一人ひとりが自分でよく吟味して考えること。いろんな角度から物事は見なければいけないということが必要である、と。

浜田進士さんのお話

浜田進士さんは毒ぶどう酒事件が起こったときに、被害者のひとりであるお母さんのお腹にいました。妊娠7カ月だったそうです。お母さんは被害にはあったけれど、幸いにも重傷ではなく無事に進士さんを出産。

浜田さんはこの映画を見るまでは、奥西さんが真犯人であると信じていたとのことでした。なぜなら事件のあったコミュニティは狭く、ほとんどの人が知り合いであり、奥西さんが冤罪であるとはとても言い出せないし、奥西さんが冤罪であれば、誰かほかの人が加害者であるということになります。 浜田さんはその後、生まれ育った土地を離れて自由になることで、やっと真実を見据えることができるようになった、と語られました。


お二人のお話を聞く中で、ひとつの事件が周りの人に与える影響は、私の考えをはるかに上回っているということを知りました。被害者、加害者だけではなくその家族やその地区の住民を含め、また事件当時だけではなく、その後の多くの人の人生にも多大な影響を与えているのです。

このことは、死刑廃止運動をする私たちは肝に銘じなくてはいけない、とお話を聞きながら感じました。
 

開催日 2014年7月5日(土)
開催場所 明治大学リバティタワー
主催 アムネスティ・インターナショナル日本
明治大学 情報コミュニケーション学部

「シリーズ冤罪と死刑2014」は、ソーシャル・ジャスティス基金の助成を受けています。

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