ナイジェリアは世界有数の石油産出国であり、石油流出被害が最も多い国です。特にニジェール川河口の大デルタ地帯(ナイジャーデルタ)に被害が集中しています。

とりわけ2008年に起きたパイプラインの石油流出は、2カ月以上も止められることなく放置され、あたり一帯が深刻な汚染を被ります。豊かだったマングローブ林は見る影もなくなり、魚や貝類もいなくなりました。さらに翌年にも石油流出があり、農業・漁業で生計を立てていた村人の暮らしに、破壊的な打撃を与えました。健康被害も甚大でした。

しかし、パイプラインの操業会社とその親会社であるロイヤル・ダッチ・シェル社は、除染作業をせずに放置し、4,000ポンド(約75万円)というわずかな賠償金を提示しただけでした。

アムネスティはシェル社に対して、除染除去を実施し、正当な賠償金を払うよう、世界中でアクションを展開しました。日本でも、この問題に取り組む現地NGOの活動家を招いて、各地で講演を行いました。

アムネスティの支援でこのNGOは被害評価を行い、それをもとに地元ボド村の住民がシェル社を相手取って集団訴訟を起こしました。会社は責任を認めたものの、損害は調査会社のデータの60分の1であると主張。しかし裁判の過程で隠ぺいの事実が暴かれると、シェル社もついに自社の算定は誤りであると認めました。そして2015年1月、5,500万ポンド(約100億円)の賠償金で和解が成立。3,500ポンドは15,600世帯の住民に、2,000万ポンドは自治体に支払われました。

アムネスティはこの3月、ボド村を訪れました。そこには、笑顔が戻った人びとの喜びの声があふれていました。家が新しく建てられ、事故のせいで学費が払えなくなり学校に行けなくなっていた子どもたちも、また勉強ができるようになり、真新しい制服を着て楽しそうに走り回っていました。

シェル社は汚染の除去も約束しましたが、まだ始まっていません。アムネスティは今後も、地元の人びとと一緒に動向を見守っていきます。ヒューマンライツ・サポーターになりませんか?