東南アジア:海で保護を求めていた難民らの支援を求めてアジア諸国に要請しました。アムネスティ日本活動担当職員山口が報告します。

今年5月、ビルマ(ミャンマー)やバングラデシュから船で逃れてきた6,000の人が、マレーシア・タイの沿岸を漂流するという緊急事態が発生しました。なかには2カ月もさまよっている船もあり、食糧や水が底を突き、すでに亡くなった人もいました。

2015年5月22日~6月26日にかけて、アムネスティでは緊急支援を近隣国に要請するオンラインアクションを行いました。

このアクションでは、マレーシア・インドネシア・タイの三カ国に対し、救助活動だけでなく、難民・移住者の尊厳を保障する扱いを求めました。多くの方のご協力により、1,306筆(重複分を除く)もの署名を集め、各国へ提出することができました。

5月29日には、タイで各国の対策会議が開催され、アジアのアムネスティ支部が中心となり、ハスの花を折り紙で作り、保護を求めるフォトアクションが行われました。タイ支部は会場で、各国政府に対し訴えかけました。

また、東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、バングラデシュの各国政府に対して、7月1日に日本を含む17カ国のアムネスティ支部の事務局長が、公開書簡(下記参照)を提出しました。

その内容は、下記の点が含まれています。

  • 捜索・救助作戦が継続されていることを保障する
  • 船が安全な国に到着するように支援する
  • 食料や水の供給をし、医療の提供をする
  • 難民申請者が難民認定手続きにアクセスでき、人権侵害の恐れのある国へ強制送還されない
  • ロヒンギャ族に対する差別を止めるようミャンマー政府に対し要求する

アムネスティをはじめとして、多くの国際団体や近隣国の団体が救助を呼びかけ、沿岸での保護が開始されました。しかし、差別に対する対応や難民申請者の保護などはまだ不十分です。再度緊急事態が生じることのないよう、失われる命がないように、注視していく必要があります。

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2015年7月1日 東南アジアの難民危機今行動しなければ悲惨な未来に

公開書簡 要旨

東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、バングラデシュの各国政府に対する要請

東南アジアの難民・移住者の危機について検討する目的で17カ国がバンコクに集まり一ヶ月が経った今、危機及びその長年の根本的原因に対応するための地域的協力の具体的な対策が依然としてとられていないことに対し、強い懸念を表明する。

命を救うという人道的原則に全面的に応え、移住者や難民申請者の人権を尊重することを保障し、危機の根本的原因に対応する地域の長期的な解決策を実施するためには、地域での協力による具体的な対策が必要不可欠である。

国際人権法などによれば、国は船で到着した難民申請者らを迫害や拷問にあう可能性がある国に強制送還してはならない義務がある。また、中にはミャンマーのロヒンギャ族がおり、難民および無国籍者として国際的な保護を必要としている。保護を受けることができるよう支援するため、各国で協力しなければならない。

さらに、難民・移住者は拘束せず、国際基準に従い収容代替措置を検討するよう要請する。

以下の対策を要請する。

  • 遭難している船の位置を特定し、捜索・救助が継続して行われていることを保障すること
  • 難民・移住者の乗った船が最も近くの安全な国へ到着するよう支援し、追い返したり、脅したりせずに、適切な接受環境を備えた安全な上陸地点を指定し設置すること
  • 迅速な人道的支援として、食糧、水、シェルターと医療の提供を行うこと
  • 難民申請者が公正な難民認定手続きにアクセスできることを保障し、国籍国を含めた深刻な人権侵害の恐れのあるいかなる国へも強制送還されないことを保障し、ノン・ルフールマン原則を遵守すること
  • 個人の入国方法を犯罪化し、拘束され罰せられることがないよう保障すること
  • 条約を批准していない国に対して、国連の難民の地位に関する条約、1967年の議定書及び無国籍条約を批准し、施行すること
  • ロヒンギャ族への差別を止めるようミャンマー政府に対して迅速に要求すること

以上

アジアのアムネスティ支部が中心になって行ったフォトアクション。ハスの花を折り紙で作り、難民の保護を求めたアジアのアムネスティ支部が中心になって行ったフォトアクション。ハスの花を折り紙で作り、難民の保護を求めた

 

アクション期間 2015年5月22日~6月26日
要請先 マレーシア・インドネシア・タイの三カ国、および東南アジア諸国連合(ASEAN)、オーストラリア、バングラデシュの各国政府

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