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イベント報告【イベント報告】シンポジウム「4つの街 4つの未来~地方から考える!LGBTの暮らしやすい街~」を開催しました

シンポジウムの様子シンポジウムの様子

2018年5月3日、明治大学駿河台キャンパスにて、シンポジウム「4つの街 4つの未来~地方から考える!LGBTの暮らしやすい街~」を開催しました。

いま、LGBTの人たちを支援しようとする前向きな動きが、国に先行して自治体レベルで広まっています。第一部では、地方での居場所づくりや地方自治体への働きかけを行なっている活動家4名をゲストにお招きして、取り組みの事例や活動する上での困難、成功体験などを伺いました。

■富山県の事例:林夏生さんのお話
(ダイバーシティラウンジ富山代表)

林夏生さん(ダイバーシティラウンジ富山代表)林夏生さん

地方の小さなコミュニティでは、『周囲と違う』だけで目立ち、すぐに噂が広まります。また、人口が減少傾向にあり、『異性と結婚し子供を産み育てることが"ふつう・あたりまえ"』という価値観が広く共有されているため、富山出身の性的マイノリティの方々からは、『故郷は大好きだけど、生きづらい、離れた方がいいかもしれない』、『(いったん離れ、別の場所で自分らしい生活を始めた後では)故郷に帰りたいのに帰れない』という気持ちになった、というお話をよくうかがいます。

そこで私たちは、誰もが安心して訪れることのできる拠点作りから始めました。このとき、『LGBTの人たちだけのための拠点』にしてしまうと、『そこに行ったら周囲に怪しまれるのでは』と心配になる人もいるため、セクシュアリティだけではなく、さまざまな多様性(民族的ルーツ、宗教など)を扱う拠点とした上で、匿名性を保ちやすいインターネットを活用するなど、工夫を重ねました。

その結果、多様性に関心を持つ人々と小規模ながらもイベントを開催できるようになり、これが県内の他団体・地元メディアなど、他の拠点とのネットワークづくりのきっかけになりました。

活動に際し留意しているのは、(LGBTだけでなく、ヘテロセクシュアル・シスジェンダーも含めた)『性の多様性』について知る機会を設けること、そして誰もが安心して参加できるよう、プライバシーや自己決定権を徹底的に尊重する、ということです。

また、『行政が、自分たちの存在や生きづらさに気づいてくれない、けれども顔や名前を出して行動するのは怖い』と感じている当事者も多いことから、地方自治体とのつながりづくりにも力を入れ、パブリックコメント応募などを通し『ここにいる』ことを伝え続けました。また、メディアからの取材には、プライバシーを守ってもらえるよう、慎重な相談を重ねた上で協力してきました。

その結果、地元紙を見た行政担当者から初の市民向け講座の依頼が届くなど、思いがけない反響がありました。また、他団体と共同で県議会に要望書を提出したことがきっかけで、行政との継続的な対話が始まり、県議会への要望が『富山県民男女共同参画計画<4次>』に反映されるなど、大きな成果につながりました。

しかし、課題もあります。富山県は『暮らしやすさ』『幸福度』調査でしばしば上位にランクづけられ、観光事業や地域活性化のためにも、肯定的な情報発信に熱心です。その中で、必ずしも『暮らしやすい』とは思えていない少数の人たちが『ここにいる』との声を上げづらく、『いないこと』にされたまま取り残されがちです。結果として、偏見や差別を解消するための取り組みも行われないままとなる。この『困っている人が声をあげづらい→いないことにされる→偏見・差別がなくならない』という悪循環をどう断ち切るかが、今後の大きな課題です。

■宮城県の事例:小浜耕治さんのお話
(東北HIVコミュニケーションズ代表、レインボーアドボケイツ東北代表)

小浜耕治さん(東北HIVコミュニケーションズ代表、レインボーアドボケイツ東北代表)小浜耕治さん

東北地方は、2011年の東日本大震災を経験してコミュニティが成長しました。そもそもコミュニティがないと何かあった時に自分を守れない、他人を守れない、という気づきから、震災前に比べ震災後は当事者交流会などのグループが3倍に増えました。グループはお互いに交流しながら活動し、イベントを開催するなどして、コミュニティ・ネットワークが広がりました。これに伴い、当事者と社会との接点ができ、問題が可視化される動きへとつながりました。

行政機関やNPOと関係を築くことで、政策提言だけではない効果が生まれています。具体的には、『東北HIVコミュニケーションズ』や人権関連団体などのNPO・NGO、中間支援組織である『せんだい・みやぎNPOセンター』、仙台市や宮城県の行政機関が情報を共有し、協働して課題の可視化を進めていこうとしています。

行政への取り組みのはじまりは、個人として「市長への手紙」を活用して同性パートナーシップに関連する仙台市への政策提言です。その後、2016年4月に男女共同参画せんだいプラン2016が施行し、翌年2017年4月には宮城県第3次男女共同参画基本計画が施行となりました。この施行に至るまでに議会陳情などを行いました。

施行後、宮城県は毎月2回、男女共同参画相談員によるLGBT相談を実施しています。相談員の研修に協力し、連携して支援に当たれる体制も整えています。仙台市では『にじいろ協働事業』を開始しました。市職員の研修を行うとともに、市民一人ひとりが『多様な性』を自分事としてとらえられるよう、活動に取り組んでいます。

こうした活動は、行政や関連分野のNPO・NGOなどとの信頼関係なくしては成り立ちません。また、LGBTの人たちのニーズを本当に理解しているのか、また何が求められているのかを常に明確にしておくことも重要です。

■福岡県の事例:五十嵐ゆりさんのお話
(NPO法人Rainbow Soup)

五十嵐ゆりさん(NPO法人Rainbow Soup)

NPO法人Rainbow Soupは、『SOGIE・LGBTの見える化と支援の輪づくり』をテーマに関連課題、現状を社会に可視化し、支援の輪をつくる活動、イベント企画などを行なっています。

また、九州福岡にある8つのLGBT支援団体が集まり、『LGBTアライアンス福岡』として当事者の声や抱える悩みについて話し合うミーティングやイベントを実施し、弁護士や行政職員、議員がこうしたイベントに参加できる場所と機会を作りました。

その中で福岡市の人権推進課と繋がりができ、性的マイノリティ支援に関する要望書を『LGBTアライアンス福岡』の連名で提出、翌年、パートナーシップ宣誓制度をはじめとする性的マイノリティ支援施策が導入されました。この報道を機に家族へカミングアウトして、受け入れられた当事者から喜びの声が寄せられるなど、良い影響も与えました。

こうした一連の活動の中で、重要なポイントになるのは『継続的な機会づくり』です。行政や他団体などへの挨拶や意見交換会、記者会見、SNSなどを通して情報発信、情報共有などは常に行っています。

課題の一つは、福岡市の施策をいかに続けていくかです。そのためには、担当部署だけではなく、福岡市の施策をもっと広く周知していかなければなりません。もう一つは、LGBT当事者、そしてその家族への支援です。アウトリーチをさらにもっと行い、情報発信や対話の場づくりの機会もつくっていく予定です。

■北海道の事例:亮介さんのお話
(にじいろほっかいどう事務局長)

札幌市の強みは、制度を作ろうと呼びかけた人に応じて、一緒に活動してくれる仲間がいるということです。こうした強みの背景には、1990年代の『札幌ミーティング』、2000年代の『レインボーマーチ』、2010年台の『パートナーシップ制度』への一連の動きがあります。

札幌では1990年代に『札幌ミーティング』というグループが活動していました。これは、ゲイやレズビアンを中心とした当事者の交流の場で、特徴としては、政治的活動(同性愛者への差別に対する抗議活動など)や、娯楽的な活動(札幌で初めてのゲイナイトの開催など)が違和感なく同居する、他にはないめずらしい団体でした。これは、札幌の活動スタイルとして受け継がれました。

この流れが大きくなったのが、1996年に初めて開催された『レインボーマーチ』です。これはただ楽しむためだけのイベントではなく、LGBTの存在をアピールし、LGBTに対する一般の人たちの意識を変えるための側面も持っていました。このパレードで2005年、札幌市長が『札幌市を代表して、みなさまを歓迎します』と挨拶をされました。これは市民などにかなり大きなインパクトを与え、その後の行政交渉がやりやすくなりました。

パレードの成功には地元のゲイ・コミュニティとの連携も重要です。声をかけ続けることで、年々協力をしてくれる方が増えていきました。また、行政とは政治的な主張を維持しつつ、うまく連携を保つことで、コミュニティとの信頼関係も生まれました。

2010年代には『パートナーシップ制度』導入に向けての動きが活発になります。導入に賛同した当事者、支援者が『ドメスティックパートナー札幌』を作り、これに弁護士や大学教授なども加わり、要望書を札幌市長と市議会各会派に提出するなど、制度導入を呼びかけました。そして2016年『パートナーシップ制度』が札幌市で導入されました。

課題は、とにかく北海道は面積が広いので、札幌以外の街をどのように盛り上げていくかです。当事者がいない中で動き始める行政に地域の当事者がどう関わっていくか、その地域に住んでいない当事者がどのように関わっていけばいいのか、ということを考えていく必要があります。

■パネルディスカッション、グループワークショップ

第二部では、モデレーターに遠藤まめたさん(やっぱ愛ダホ!Idaho-net. 代表)をお招きして、パネルディスカッション&質疑応答をおこないました。「活動を始めたきっかけ」や「続けている理由・活動をしていて楽しいこと」、「当事者ではない人が講演などをする際に当事者に対して気をつけたほうがいいこと」など、ゲストの方々にさまざまな質問にお答えいただきました。

そして第三部では、グループワークショップ「課題別で考える!私たちができること」を実施しました。課題を

  1. 居場所を作る
  2. 活動拠点をつくる
  3. 行政とつながる
  4. パートナーシップ制度をつくる

の4つに分け、参加者はそれぞれ興味のあるグループに入り、理解を深めました。

グループワークショップの様子グループワークショップの様子

実施日 2018年5月3日(木・祝)
場所 明治大学駿河台キャンパス・グローバルホール
主催 公益社団法人アムネスティ・インターナショナル日本
やっぱ愛ダホ!idaho-net.
共催 明治大学現代中国研究所
後援 LGBT法連合会

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