1. ホーム
  2. ヒューマンライツコミュニティ
  3. イベント報告
  4. 【イベント報告】被害と加害の断絶は埋められるか 東海テレビ「ホーム」を見て考える

人権の「今」がわかるニュース

イベント報告【イベント報告】被害と加害の断絶は埋められるか 東海テレビ「ホーム」を見て考える

2019年6月29日(土)、明治大学和泉キャンパス和泉図書館1階ホールで、死刑廃止国際条約の批准を求めるFORUM90(死刑廃止フォーラム90)と森達也問題解決ゼミ4年の共催による「被害と加害の断絶は埋められるか 東海テレビ「ホーム」を見て考える」が行われました。

東海テレビ開局60周年記念ドキュメンタリードラマとして作成された「Home~闇サイト事件・娘の贈りもの」は、東海テレビが製作し、2018年12月25日に同局で放映されました。

6月29日当日は、最初に「Home」を見て、その後名古屋からお越しいただいた同作品の助監督・ドキュメンタリー取材をご担当の繁澤かおるさんに、映画監督の森達也さんと対談形式でお話をしていただくという構成でイベントが進みました。お二人には対談の最後に会場からの質問を受けていただく時間もありました。

作品のサブタイトルの「闇サイト事件」について簡単にご紹介しますと、インターネット上の闇サイトで知り合った3人の加害者が、2007年8月に名古屋で帰宅途中の若い女性を拉致し、銀行のキャッシュカードを奪った上に殺害、死体を遺棄したという事件です。殺害の残虐性と、被害者女性の母親が加害者3人の極刑を求めて、街頭で署名活動を繰り広げた経緯等から、地元を始め、全国のメディアでもかなり大きく取り上げられました。加害者3名のうちのひとり、神田司さんは2015年6月25日に死刑を執行され、無期懲役の判決を受けた2名のうち、堀慶末さんは余罪で一・二審死刑判決を言い渡され、最高裁に上告をしていました。(その後7月19日に上告が棄却され、死刑が確定しました。)

「ドキュメンタリードラマ」と名打つとおり、作品「Home」は事件に至るまでの日常を被害者と被害者家族の側と、加害者のひとり(神田さん)と彼の家族の側をそれぞれ再現ドラマとして作成した部分と、事件後直後の報道や東海テレビが独自に行っていた被害者遺族の母親への取材、そして今回の作品のために新たに被害者遺族と加害者家族へ取材、インタビューしたドキュメント部分から構成されています。

作品前半では、(のちに被害者となった)母娘が、祖母や叔母たちの愛情に守られ、仲睦まじく、お互いを大切に思い生活していた様子が描かれる一方、のちに加害者となった青年の子ども時代から青年に至るまでの不幸な境遇の年月が、対照的に描かれています。そして作品後半では、事件後被害者遺族となった母親やその支援者たちの街頭署名活動等の様子、そして助監督の繁澤さんが訪問した加害者家族のインタビューの様子などが克明に映し出されました。

みなさんもぜひ機会があれば、作品をご覧いただき、犯罪事件がもたらす多くの苦しみと悲しみを感じ、考えてみてください。

作品鑑賞後の対談では、主に森さんが繁澤さんに製作過程で大変だったこと、苦労したことなどをうかがうというかたちで進められました。ドキュメンタリー部分を担当された繁澤さんは、遺族の母親が「家」に対して強い思いを持っていらしたこと(タイトルにもなっています)、加害者家族のインタビューに行ったときの映像を見た同僚から横暴な態度だと言われたことなど具体的なエピソードを交えながら、被害者(遺族)の物語と加害者(家族)の物語を織り交ぜて製作する、見せるということの難しさについて話されました。

これに対し、森さんはご自分の思いとして、(製作者が)作品を作る際は、フェア(公平)である必要はない、例えばインパラを狙う子連れの母ライオンの側から作品を作るか、それとも(狙われている)インパラ親子の側から作品を作るか、それは製作者が決めることであって、それを両方の立場から必ずしも公平・平等(イーヴン)に見せる必要はないのだという話をされました。

日本のメディアは10対1の意見でも、両論併記を意識するあまりイーヴン(5対5)に扱い、それを見ている側が(真実だと)錯覚する。本来見る側・受け手側にメディアリテラシーがなくてはいけないのに、判断したり考えたりする力がないので製作者がすべてをイーヴンに見えるように作ってしまう状況になっている…とコメントをされていました。

受け手が成熟したメディアリテラシーを持つことで、製作者・表現者が自由に自分の考えを包み隠さず表現でき、その表現を受け手が享受し、感じ、考える。そうした「正」のスパイラルが、私たち一人一人が死刑制度の是非やなぜ人を殺める事件が起こるのかというようなことを考えるうえでも大切な視点であると思いました。

森さんと繁澤さんの対談の後は、フロアからの質疑応答やコメントもありました。当日の参加者は135名。立ち見もでるほどの盛況で会は終了しました。

(報告者:アムネスティ日本 死刑廃止ネットワーク東京 大島みどり)

 

実施日 2019年6月29日(土)
場所 明治大学和泉校舎
主催 死刑廃止国際条約の批准を求めるフォーラム90
森達也問題解決ゼミ(4年)
※アムネスティ日本はフォーラム90の構成団体です。

ヒューマンライツ・サポーターになりませんか?

このページの先頭へ戻る

今、必要なアクション

ニュースレターを無料でお届け!

メルマガに登録する(毎週木曜・無料配信)