シエラレオネ教育担当大臣は2020年3月30日、2015年に出された妊娠している女生徒の登校禁止令を即日、停止すると発表しました。これにより、これまで通学ができなかった全国何千人もの妊娠中の少女たちが、新型コロナウイルス感染が収束し、学校が再開され次第、学校に通えるようになります。

望まない妊娠で未来を奪われた少女たち

2015年4月、シエラレオネ政府は「無垢な生徒たちに悪影響だ」として、妊娠した少女たちの通学を禁止しました。シエラレオネでは、エボラ出血熱の感染拡大を防ぐために2014年6月から学校が閉鎖されており、禁止令が出たのはちょうど学校が再開される直前のことでした。

もともとシエラレオネでは、性暴力が広くまん延していました。それに加えて学校が閉鎖されたことで、少女たちを守ってくれていた学校という場がなくなり、性暴力の被害が急激に拡大、10代女子の妊娠が急増しました。さらに学校では、妊娠を調べるために、生徒たちが屈辱的な検査を強いられていました。

登校禁止令が出されて以降、妊娠した女子生徒は、アイルランドや英国などの支援によって設けられた臨時の代替えクラスに通う以外に選択の余地はありませんでした。しかし、代替えクラスは通常の授業とは異なる建物や異なる時間に行われるため、学校の試験を受けることができませんでした。

アムネスティの取り組み

これまで、妊娠中の女生徒を他の生徒と違う場所で勉強させる措置や試験を受けることを禁止した措置は違法だとして、国内外の団体がこの不当な通学禁止令の撤回を求め、声を上げてきました。

アムネスティも、登校禁止措置がいかに多くの少女の人権を侵害しているかを調査し、報告書を公開。2019年5月に、地元のNGOウェイブス(WAVES)と国際NGOのイクオリティ・ナウが西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)裁判所に提訴した際には、アムネスティも法廷助言者として参加し、妊娠中の女生徒に対する措置は教育を受ける権利の明白な違反であることを国際法および国際基準面から明らかにしました。2019年12月、西アフリカ諸国経済共同体裁判所は教育を受ける権利の明白な違反であるとして通学禁止令を取り消すべきだと判決を下しました。

他にも、2015年から2016年にかけて、シエラレオネ政府に対し、登校禁止措置の撤回と屈辱的な妊娠検査の中止を求めて世界中で署名活動を行いました。日本支部でもオンライン、オフラインでの署名活動フォトアクションを行い、この問題を広く訴えました。

同じような差別を受けている少女たちへの希望の光

差別的な登校禁止令が出されてからほぼ5年間、あまりにも多くの女生徒が、教育を受ける権利や将来を選択する権利を奪われてきました。この誤ちにようやく終止符が打たれ、差別されていた子どもたちは、人としての尊厳を取り戻すことができます。

今回の政府の判断は、同じように差別や不当な扱いを受け、学校に行くこともできないかもしれない周辺諸国の少女にとっても、希望をもたらします。

新型コロナウイルスが大流行している現在、同様の悲劇が起こらないよう、アムネスティは引き続き注視していきます。