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2020年12月20日(日)、オンライン・シンポジウム「LGBTと難民―誰もが生きやすい社会とは」を、アムネスティ日本と難民研究フォーラムの共催で開催しました。難民とLGBTという2つのテーマから、それぞれ専門家や実務者が集まり、「難民の人もLGBTの人も、すべての人が生きやすい日本社会とは?」という疑問に真剣に向き合いました。

■ LGBTってどんな人?:松岡宗嗣さん (一般社団法人fair代表理事)

多様な性の在り方の基礎知識について説明していただきました。LGBTQとはどのような人のことをさすのか、また「法律上の性別」、「性自認」、「性的指向」、「性表現」これら4つの性別を用い、性のあり方はグラデーションになっていること、LGBTQの他にもさまざまなセクシュアリティがあること、そして、LGBTQが直面する困難について、例を挙げてご説明いただきました。

■ 難民とは?:新島彩子さん (認定NPO法人 難民支援協会)

難民に関する基本的な情報を解説していただきました。難民とはどのような人たちなのか、難民条約の定義を用いた説明の後、日本に逃れてきた難民の状況を解説していただきました。日本は難民の認定率自体が低く、LGBT難民を受け入れる体制が整っているとはいえないことを、日本政府から難民認定されなかった1人のLGBT難民の例を取り上げ、ご説明いただきました。

■ 世界でのLGBTに対する迫害や差別:山田光樹さん(難民研究フォーラム事務局)

本シンポジウムの共催団体である難民研究フォーラムからは、75か国を対象とした『難民とLGBT:世界における人権侵害の状況』調査の内容が発表されました。LGBTまたは同性愛行為を犯罪と定めている国を中心に、LGBTに対する差別や迫害について、事例に基づき解説。また、LGBTを理由に迫害を受けた人が難民認定された事例の紹介もありました。

■ 難民条約はLGBTに対する迫害にどう向き合ってきたか-特定の社会的集団』としてのLGBT:小尾尚子さん (元UNHCR駐日事務所副代表)

「難民の定義の解釈の歴史的な流れ」と「性的指向とジェンダーアイデンティティを根拠とする難民申請の適正な審査のために」について説明していただきました。難民条約は国際人権条約の発展と密接に関連していること、女子差別撤廃条約をはじめとする女性保護の観点が男性目線で決められがちだった難民条約に影響を与えっていたことなどの歴史的な経緯に加え、LGBTI難民の解釈と適切に保護できるためにどう動くべきなのかを説明していただきました。

■ LGBTが日本で直面する課題や差別について-法制度の視点から:谷口洋幸さん (金沢大学准教授)

日本におけるLGBT差別に関して、法律、省庁・自治体、裁判所、それぞれのレベルでの対応と法整備の必要性についてわかりやすく解説していただきました。そして、国連人権高等弁務官事務所の提言「BORN FREE AND EQUAL」の観点から、LGBT難民の受け入れについて解説していただきました。「BORN FREE AND EQUAL」とは、世界中のLGBTIの生まれながらにして自由で平等に生きる権利を守るための、国・社会に対する5つの提言です。LGBT難民の人々が安心・安全に過ごせる環境のためには、実効的で包括的な差別禁止の法政策などが不可欠であるとおっしゃっていました。

パネルディスカッション

オンライン・シンポジウムの視聴者から寄せられた質問に登壇者が回答しました。「すべての人にとって生きやすい社会のために、自分たちに何ができるのか」について考えさせられるパネルディスカッションでした。さまざまな被害や差別の存在が可視化されていない現状を踏まえ、どんな困難があるのかを想像する力を持つ、学んでいること発信する、さまざまな団体を調べてサポートする、そして何よりも、日本社会に暮らす私たちが声を上げ、見て見ぬふりをしないことが大事、ということを学ぶことができました。

視聴者からの感想

シンポジウムでは多くの方がご視聴くださり、たくさんのご意見・ご感想をいただきました。一部をご紹介します。

「2時間があっという間に感じられるほど、それぞれの報告内容が充実していました。パネルディスカッションは、LGBTと難民に共通した人権課題で何が大切かを改めて参加者自身に振り返りを求めるものでした。大変貴重な学びの機会で企画と運営の皆さまに感謝申し上げます。」

「LGBT・難民、それぞれには関心があり、基礎知識は持っていましたが、今日初めて2つを関連づけた社会を知ることができ、大変有意義な時間になりました。LGBT差別をなくすために、1日でも早く法整備がされてほしいと思いました。」

「大変勉強になりましたし、より一層難民問題や多様なニーズを持つ方々が安心して暮らせる社会づくり、について自分が何を出来るだろうか、と考えるきっかけになりました。」

最後に

講師としてご登壇くださった方々、並びにご視聴くださったすべての皆さまに、心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

報告者:石川 亜純(キャンペーン補佐ボランティア)

 

実施日 2020年12月20日(日)
開催方法 youtubeライブ配信
主催 公益社団法人 アムネスティ・インターナショナル日本、難民研究フォーラム