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黎智英(ジミー・ライ)氏逮捕翌日のアップルデイリー(蘋果日報)紙。©Kaoru Ng

 

香港国家安全維持法(国安法)が2020年6月30日に公布、即日施行されてから4カ月が過ぎようとしていた11月8日、アムネスティ日本・中国チームはオンライン集会を開催しました。

同法の施行前から、香港の自由を守ろうとする市民への弾圧は続いています。最近では、香港から逃れようとした12人の活動家が海上で拘束されたり、授業で香港独立をめぐる議論を取り上げた小学校教員の免許が取り消されたりしています。

これらの弾圧は、必ずしも国安法を適用したものではありませんが、法がどのように運用されるのか分からない恐れと相まって、人々の自由な意見表明や活動を妨げ、萎縮させています。

国安法施行後、香港の人々は何を考えているのか、表現の自由に影響はあるのか、ビジネスやアートにどのような影響があるのか。香港在住の香港人・日本人に、現在の香港について語っていただきました。

最初に、香港中文大学大学院在学中の石井大智さんが、この2カ月に香港で起きた出来事を解説しました。

国安法のビジネスへの影響

次に、香港在住の日本人弁護士「香港のおじさん律師」(仮名)さんが、国安法のビジネスへ影響について報告しました。

2020年7月に実施された在香港日本総領事館と香港日本人商工会議所の調査によれば、日系企業の8割超が国安法に懸念を示し、3割が事業にマイナスになると回答したとのことです。理由として、情報に制限がかかること、法の支配・司法の独立が失われること、アメリカの制裁の影響や米中関係の悪化が考えられることがあげられました。

香港のおじさん律師さんは、法律の条文が曖昧なため、具体的にどう適用されるかは不透明であること、現時点ではビジネスにはさほど影響は出ていないが今後も懸念材料であること、などを指摘しました。

アートで国安法に抵抗

日本の美大を卒業後に香港へ渡った「kanatinさん」(仮名)は、国安法に抵抗する香港のアートシーンや広告事情について報告しました。

kanatinさんは、香港の新聞アップルデイリー(蘋果日報)に掲載された広告を紹介し、今や、アップルデイリーが民主派の砦として市民の支持を集め、部数を大幅に伸ばしていると言います。

アップルデイリー紙の創業者で社主の黎智英(ジミー・ライ)氏は8月10日に国安法違反容疑で逮捕されました(*1)。彼の逮捕翌日の同紙は1面中央に大きく「蘋果一定撐落去」という文字を掲げ、同紙が民主派市民のための新聞として「これからも持ちこたえていく(撐)」という姿勢を鮮明に打ち出しました。

アップルデイリー紙は市民の声を代弁すべく紙面を広く開放し、様々な意見を掲載したり、国安法に対抗するデザインを取り入れた企業の広告を載せたりしています。香港の自由への思いを市民が綴ったポストイットを壁一面に貼り付けていたレノンウォールが奪われた今、アップルデイリーに意見を載せることは、市民の意思表示の場としてなくてはならないものとなっているとkanatinさんは言います。

なお、黎智英氏はその後12月2日に別件で逮捕され、12月16日時点で保釈されていません。国安法違反については12月11日に起訴されました。

香港からベラルーシへ

最後に、香港人カメラマンのカオルさん、アレックスさんが、ベラルーシ(*2)の独裁政権と民主派の衝突の様子を、自ら撮った多くの写真を使って紹介しました。

カオルさんは、ベラルーシの市民による抗議行動が香港の状況と似ていると思ったそうです。ベラルーシは資源に乏しくロシアに経済的に依存しており、それをルカシェンコ大統領らに利用され長期独裁政権を許してきました。これに対し、2020年8月に行われた大統領選挙を足がかりに民主派が団結して抗議行動に出ました。しかし、警察の激しい弾圧にあっています。

参加者からの声

オンライン集会は、予定より30分ほど超過したにもかかわらず、ほとんどの参加者が最後まで視聴してくださいました。事前アンケートでも、新型コロナウイルス感染症流行を理由に5人以上の集まりを香港政府が禁止したことでデモが極端に少なくなり、日本でも香港についてほとんど報道されなくなり、現状を知りたい、自分たちに何ができるか、という声が多く聞かれました。

また、次の企画を計画しております。どうぞご期待ください。

※安全上の理由により、お二方を仮名とさせていただいております。
※香港の状況は日々変化しています。最新の状況はアムネスティのウェブサイト等でご確認ください。

中国チームからのお願い

中国関連のオンラインアクションや緊急行動の要請がアムネスティのサイトに掲載されています。ご協力お願いします。

 

実施日 2020年11月8日(日) 13:00-15:00
開催方法 YouTubeにてライブストリーミング配信
ゲスト 香港在住の学生、会社員、ジャーナリスト、弁護士
主催 アムネスティ日本 中国チーム