- 2010年8月17日
- 国・地域:セルビア(コソボを含む)
- トピック:強制立ち退き
少なくとも70家族が、セルビアの首都ベオグラード、ヴィディコヴァッツ地区の非公認居住区で生活している。大多数が他の居住区から強制的に立ち退かされた人びとだ。今回の取り壊しが進められれば、こうした人びとは再び住む家を失うおそれがある。
「何度も自分の家を取り壊される目に遭い、事前通告もなく、いつまた強制立退きにあうかわからない恐怖に晒されながら生きるロマの人びとに対して、当局は長期的な解決策をいまだに見出せていない」と、アムネスティのセルビア担当者、シャーン・ジョーンズは述べた。
国際法の下では、強制立ち退きは、他の代替手段をすべて講じた後の最終手段としてでなければ実施してはならないとされている。
ベオグラード当局はロマの家族に対して、補償も代替となる住居も提供していない。当局は、居住区の人びとと協議することもなく、4月と6月半ばの二回にわたって強制立ち退きを通告した。6月半ばの通告は、7月初旬に強制立ち退きを実施するというものだった。
7月30日にジョーンズ担当者がヴィディコヴァッツ地区を視察した際、強制立ち退きを恐れて匿名を希望するロマの活動家は次のように語った。「市当局には、ロマの人びとの尊厳や人権に対する配慮がまったくありません。あまりにも長い間、私たちはこの社会で差別に苦しんできました」。
「ヴィディコヴァッツ居住区の年少者たちは、強制立ち退きの最大の被害者です。私たちは、普通の生活をする機会を奪われた子どもたちについて話し合っています。この子たちには他の子どもたちのように学ぶ機会がなく、健康状態も危ういのです」。
2010年4月、反対側の通りに住んでいた35家族が、強制立ち退きでベオグラード当局に家を破壊され、ヴィディコヴァッツ居住区に加わった。彼らに対して、いかなる代替居住地の提供も、援助も、補償もなされなかった。
また近隣に住んでいた別の20家族は、事前通告もなく強制的立ち退きに遭い、わずかな身の回り品をかろうじて持ち出して同居住区に加わった。当局からの食料その他の援助の約束は反故にされたままだ。
「持続的な再定住計画を進め、被害をこうむる全居住民に対して十分な住宅供給をうける権利を保障することなしに、この強制立ち退きの悪循環を断ち切ることはできません」と、ジョーンズは述べた。
ヴィディコヴァッツ地区に住むロマの家族の多くは、2006年から2008年にかけて、EU諸国から強制的にセルビアに帰還させられた人びとである。
その大半は1990年代に仕事を求めてセルビア南部を去ったが、出身地に戻った時には十分な住居や雇用を得ることができず、首都ベオグラードに散在する非公認のロマ居住区に入居した人びとである。
公衆衛生設備が未整備なためロマ居住区を撤去すると、ベオグラード当局は述べたといわれている。しかし居住区の家族がどこに移住できるのか、家が壊されて居住民の人権がどのように保護されるのかを、当局は明らかにしていない。
「市当局は、まるで居住区に住むのは私たちの落度だ、自分で選んだことなのだ、といわんばかりに振舞っています。でも、他にどんな選択があるというのです? ロマの場合、選択肢は限られているのです」と、そのロマ活動家は語った。
アムネスティの「人間らしく生きたい」キャンペーンは、世界的な貧困を促進・深化させる人権侵害の終結をめざしています。このキャンペーンは世界中の人びとを喚起し、政府や企業その他権限をもつ諸組織が貧困に生きる人びとの声に耳を傾け、彼らの権利を認識し、保護するように求めています。詳細は以下のサイトをご覧ください。
http://demanddignity.amnesty.org/campaigns-en/
アムネスティ発表国際ニュース
2010年8月3日
関連ニュースリリース
- 2015年9月16日 [国際事務局発表ニュース]
セルビア(コソボを含む):政府の対応は送還されるロマをさらに貧困に - 2015年4月10日 [国際事務局発表ニュース]
セルビア(コソボを含む):ロマの強制立ち退き 3年経っても進まぬ再定住 - 2012年5月 7日
セルビア(コソボを含む):強制立ち退きにより、数百に上る家族が不安を抱く - 2011年11月 7日
セルビア(コソボを含む):立ち退きを迫られたロマの家族を守ろうとした活動家、逮捕される - 2011年10月14日
セルビア(コソボを含む):プライド・パレードの開催を禁止。セルビアの人権にとって、暗黒の日となる