インドネシア:ムニールの暗殺に対する説明責任は人権活動家の保護に不可欠

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2010年9月 9日
国・地域:インドネシア
トピック:危機にある個人
著名なインドネシアの人権擁護活動家であるムニール・ビン・タリブの死から6年目を迎え、アムネスティ・インターナショナルは、ムニールの死に責任ある者すべてが裁判にかけられることを保証するため、その死について独立した新たな調査を開始するようインドネシア警察に要請する。真実をはっきりさせる重要な一歩として、政府は、ムニール殺害に関する事実調査チームの2005年報告書を公開しなければならない。

ムニールは2004年9月7日、ジャカルタからオランダに向かうガルーダ・インドネシア航空機の中で死亡した。オランダ当局による検視によって、ムニールの死は食事に混入されたヒ素によるものだと判明した。2人は殺害行為について有罪判決を受けたが、首謀者が裁かれていないという疑いが強く持たれている。

ムニールは、1998年のスハルト政権末期に強制失踪した何十人もの活動家の問題を取り上げた。ムニールはまた、アチェとティモール・レステにおける人権侵害について軍に責任があるという証拠を暴露するという重要な役割を担った。

2008年12月31日、ムフディ・プルウォプランジョノ元国家情報庁副長官は、ムニール殺害を教唆し幇助した嫌疑について無罪となった。検察側の重要証人3人が宣誓した証言を撤回したことなど、裁判が公正な裁判に関する国際基準を満たしていないことが危惧された。2010年2月、国家人権委員会(Komnas HAM)の特別チームは、警察捜査、起訴およびムフディ・プルウォプランジョノの裁判における欠陥を明らかにし、警察による新たな捜査を行うよう勧告した。ムニール事件について十分な説明責任が果たされていないことは、人権擁護活動家の間に今も広がる不安の風潮の一因となっている。人権擁護活動家の何人かは最近、攻撃の対象となっている。

2010年7月30日、ジャーナリストであるアルディアンシャ・マトラが、パプアのメラウケの川の中で、全裸で手錠をかけられた遺体となって発見された。警察の捜査によって、アルディアンシャ・マトラは川に落ちて溺れる前に数回殴られていたことが分かっている。地元の活動家は、マトラの死は、彼がパプアにおける汚職や違法伐採、メラウケの地方選挙を取材していたことと関連していると考えている。

2010年7月8日、ジャカルタのインドネシア汚職ウォッチの調査員であるタマ・サトゥヤ・ランクンは2人の正体不明の男に激しく殴られた。不審な銀行口座と複数の警察上層部との関連を追っていたタマ・サトゥヤ・ランクンは、この野蛮な襲撃によって重傷を負った。これらの襲撃事件では、誰一人として逮捕されず、裁判にもかけられていない。

生命に対する権利は重要な人権であり、インドネシア政府は批准している国際人権諸条約およびインドネシア憲法に基づいて、いかなる場合においてもこれを尊重し保護する義務がある。この権利を侵した疑いのある者が裁判にかけられるよう保証することは、インドネシア政府の人権に対する義務と不可分なのである。

人権擁護活動家は、恐れを抱かずに平和的に活動することが許されなければならない。ムニールの暗殺に対する説明責任は、人権擁護活動家に対する脅迫や襲撃は許されないというはっきりとしたメッセージを送ることになる。

ムニールの殺害に対する抗議を受け、スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は、独立した事実調査チームに警察捜査と並行して調査するよう命じた。調査チームは2005年6月に報告書を大統領に提出した。しかし、チームを設置した大統領令によって求められていたにも関わらず、報告書は公開されなかった。

ガルーダ・インドネシア航空の元パイロットであるポリカルプス・プリヤントは2008年1月、ムニール謀殺の罪で20年の刑を言い渡され、2010年8月、うち7カ月を減刑された。ガルーダ航空の元最高責任者であるインドラ・セティアワンは2008年2月、ムニールが搭乗した飛行機にポリカルプス・プリヤントが搭乗することを許可する書類を偽造した件について、殺人の共犯として1年の刑を受けた。

無罪となった後、 ムフディ・プルウォプランジョノは、行方不明者と被害者のための委員会(KONTRAS)の著名な人権擁護活動であるウスマン・ハミッドを名誉毀損で刑事告訴した(最高刑は5年以上の刑)。KONTRASは、ムニールが設立したNGOである。報道によると、ウスマン・ハミッドは裁判所の外で判決を強く批判し、ムフディ・プルウォプランジョノを殺人者であると主張したという。ウスマン・ハミッドに対する警察の捜査は継続中である。

アムネスティ発表国際ニュース
2010年9月6日

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