米国:ウィキリークスの電文、イエメンにおける米国の空爆の事実を確証

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2010年12月 9日
国・地域:米国
トピック:「テロとの闘い」における人権侵害
漏洩した外交電文は、今年初めにアムネスティ・インターナショナルが発表した、2009年12月に米国軍が南イエメンをミサイル攻撃し、地元住民を数十人殺害したことを示す写真を確証することとなった。

ウィキリークスが2010年1月に公開した秘密外交電文によると、イエメンの大統領アリ・アブダラ・サーレハは米国司令官デビッド・ペトラウスに、「爆弾は米国のものではなくイエメンのものだと主張し続けるつもりだ」と保証していたという。

電文によると、これを聞いたイエメンの副首相ラシャード・アル・アリーミーは、「私は議会に対して、アハブ、アブヤン、シェブワに落とされた爆弾は、米国製ではあるがイエメン共和国政府(ROYG)が使用したのだと言ったが、あれは「嘘」だったというわけだな」とジョークをとばした。

「この電文は、アブバン攻撃は米国軍によるもので、イエメン政府軍によるものではないというアムネスティの調査結果を明らかに確証するものです」とアムネスティ中東・北アフリカ副部長、フィリップ・ルーサーは述べた。

2009年12月17日、アブヤン地区のアルマヤラハにあるアルカイダの訓練キャンプとされる場所が巡航ミサイルによって攻撃された。イエメン議会の調査によると、攻撃の結果41名の地元住民が殺害された。その中には14名の女性、21名の子ども、および14名のアルカイダのメンバーとされる者が含まれていた。1月4日の電文には、攻撃結果は「民間人の死者はたった3人だけ」とのペトラウス司令官の言葉が報告されている。

アムネスティは今年6月に行われたアブヤン攻撃直後の写真をメディアに提供した。その中には、米国供給のクラスター弾とそれを積載していたトマホーク巡航ミサイルの残骸も含まれている。アムネスティは米国防総省に対し、アルマヤラハ攻撃における米国軍の関与、および死傷者数を最小限に抑えるためにどのような予防措置がとられたのか、情報を要請した。

米国政府からアムネスティへの応答はないが、写真が発表された翌日の新聞記事の中で、「米国はイエメン攻撃に関してのコメントを拒否する。アルカイダに対する作戦についてはイエメン政府に質問すべきである」という米国防総省の報道官のコメントが引用されている。

フィリップ・ルーサーは「アブヤンの空爆において地元住民が数十人亡くなったことについて、すみやかな調査がなされるべきです。この空爆にどの程度米国が関与していたかも調査されなければなりません。これらの不法な殺戮に関する責任は問われ、裁かれるべきです」と述べた。

秘密電文において言及されているアーハブ攻撃は2009年12月17日に、シェブワ攻撃は2009年12月24日に実行された。イエメン政府は当時、イエメン軍が3度にわたる攻撃すべてを実行し、それらはアラビア半島におけるアルカイダを攻撃目標としたものだったと主張した。

漏洩した電文の中でサーレハ大統領は、目標に向けた空爆の方が、あまり正確でない巡航ミサイルより望ましいとほのめかし、そのために一般市民の犠牲者がでることについての懸念を表明していたと言われている。

電文によると、サーレハ大統領は、米国の固定翼爆撃機をいつでも敵を攻撃できるようにイエメン領域の外側を旋回させることで、諜報機関に実行力をもたせることができると合意し、また米国に12機の武装ヘリコプターの提供と、合計9000名の兵士からなる3個旅団の新しい共和国防衛軍を訓練し、装備させることを要請した。大統領は、イエメン軍が2008年に米国政府から提供された17台の「イラク製」の軽装甲車の操作に必要な訓練をいまだ受けていないと不満を漏らした。

漏洩した電文では、イエメンに対する米国の防衛助成金は実質的に2009年の6700万USドルから2010年の1億5000万USドルに増額する予定であることが語られている。また、米国はサーレハ大統領に、イエメンの沿岸警備隊に向けた完全装備の全長87フィートのパトロール船2隻は建造中で、一年以内にイエメンに到着する予定であると伝えた。

米国軍はまた、アルカイダの指導メンバーと疑われる人びとを殺害する目的で無人爆撃機を使ったとされている。2010年5月の攻撃では、イエメン政府とアラビア半島のアルカイダとの間の重要な仲介者が明らかに誤って殺害されたが、情報筋によると、殺害は無人爆撃機によるものであったと言われている。イエメンの外務大臣は後日、政府は無人爆撃儀が攻撃に使用されたかどうか、もしそれが本当であればイエメンの防衛軍によって使用されたのか、それとも米国など他国の軍によるものなのか、調査するつもりだと述べた。アムネスティはその調査結果が公表されたということを聞いていない。

アムネスティは米国政府に以下のことを要求する。

・イエメンにおいて、米国軍が個人を殺害する目的で無人爆撃機を使用したという容易ならぬ疑いについて調査し、このような無人爆撃機の使用に関する指揮系統と規則を明らかにすること。

・イエメンに対して米軍が提供したすべての軍事・治安支援、およびイエメンで行われた米国の軍事・治安作戦のすべては、関連する国際人権法と国際人権基準を完全に遵守して行われていること、およびこのような人権の規範が、訓練プログラムおよび監視、説明義務の制度の中で、完全に実施されていることを保証すること。

アムネスティ発表国際ニュース
2010年12月1日

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