コンゴ民主共和国:子ども兵士の徴用に対する、ICCの画期的な評決

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2012年3月23日
[国際事務局発表ニュース]
国・地域:コンゴ民主共和国
トピック:子ども兵士

紛争下で子どもを兵士として徴用したとして、コンゴ人武装グループのリーダーであるトーマス・ルバンガ・ディロに有罪判決が下された。これにより国際刑事裁判所(ICC)は虐殺、人道に対する罪、戦争犯罪の罪を犯した、最悪の犯罪者を裁くことができることを示した、とアムネスティ・インターナショナルは述べた。

3人の裁判官で構成された第1審裁判部門は14日、トーマス・ルバンガ・ディロにICC初の評決を下した。罪状は、2002年と2003年の間にコンゴ民主共和国のイトゥリ地域における武力紛争において、コンゴ解放愛国軍(FPLC)に15歳未満の子どもを入隊・徴用させたという、戦争犯罪である。

数週間のうちに、ICCはルバンガに判決を宣告し、被害者への賠償審問を行う。この判決に対して被告は、30日以内に上訴することができる。
2006年3月17日、トーマス・ルバンガ・ディロは、ICCの逮捕状によって逮捕された最初の人物となった。裁判は、2009年1月26日に始まった。

彼は、コンゴ愛国者連合(UPC)の創設者兼代表であり、その武装部隊FPLCの最高司令官であると言われていた。 FPLCは、子どもを誘拐し、兵士として徴用するなど、多数の人権侵害に関与していた。

「今日の判決は、戦争にかかわる連中が、暴力で子どもを徴用するというおぞましい犯罪を抑止してくれるでしょう」と、アムネスティの法・政策部長のマイケル・ボヘネクは述べた。

「この種の犯罪者は、国際法で刑を免れることができました。その免責法の壁が、各国の捜査当局につねに立ちはだかっていたのです。したがって、その免責のはく奪は、当局にとって朗報です。今回の有罪判決でICCは、『犯罪者は裁きを受けることになる』ということを示したのです」

外人武装部隊やコンゴ人武装部隊による、武力紛争における児童の徴用は、コンゴ民主共和国の北東部・東部で今も続いている。コンゴ国軍もまた、子ども兵士を徴用している。

ICC検察官は、FPLCによる少女兵士や、拉致被害の少女への性的暴力などの犯罪を追求しなかった。アムネスティはこのことに大変失望している。これは、人権という正義を否定し、さらに多くの被害者への補償を否定することになる。

「検察庁は、とくに被害者に裁判に出て、賠償を得るのを妨げるようなことがないよう、ルバンガの事件で採用した、制約のある捜査戦略を見直す必要があります。今後の事件のために、教訓を学ばなければなりません」と、マイケル・ボヘネクは述べた。

また、手続きにかかる期間に関しても、見直されるべきである。 ICCが トーマス・ルバンガ・ディロに対して2007年1月29日告訴の承認を決定し、2009年1月26日に裁判が開始されるまでに、2年かかっている。検察庁の被告側へ情報公開をしていないことに対して、裁判官が訴訟手続きを止めたため、裁判は2度延期されている。

■ICCから逃れている者たち

残念なことに、各国が容疑者を逮捕・自首などにより拘束できないため、ICCは他の多くのケースで、本来の法律を執行することができていない。具体的には、次の事例である。

・ボスコ・ンタガンダ(コンゴ共和国)
ボスコ・ンタガンダは、トーマス・ルバンガ・ディロの補佐官だったといわれている。ICCは、子どもを徴用したとして、彼を起訴している。コンゴ政府は、彼のもとに国家軍を統合させようとしている。

・ジョセフ・コニー(ウガンダ)
ジョセフ・コニーと神の抵抗軍の他の幹部は、人道に対する罪と戦争犯罪で起訴された後、裁判を回避し続けている。現在、中央アフリカ共和国、コンゴ民主共和国の北東部と南スーダン間を移動している。

・オマル・バシル大統領(スーダン)
オマル・バシル大統領は、スーダンのダルフール地域における虐殺、人道に対する罪、戦争犯罪で起訴されている。彼は定期的に海外の公式訪問を行うにもかかわらず、逮捕されていない。

またICCは、ICC規程に署名はしたものの批准していないシリアのような状況で、犯罪を捜査することも妨害されている。国連安全保障理事会が、ICC検察官に事態を付託していないからである。

2010年、アムネスティは、これらすべての犯罪の犠牲者に正義の執行と真実と賠償を求める道筋を確保するために、公正な裁判を求めるキャンペーンを開始した。

当組織のメンバーや支持者は、政府が容疑者を逮捕し、裁判のために彼らを引き渡すために、ICCと全面協力しながら活動している。また、シリアおよびその他の国における人権状況をICCに委任するよう、国連安全保障理事会に呼びかけている。

「この1週間、ICCから逃げているジョセフ・コニーに世間が注目していることからもわかるように、戦争犯罪と人道に対する罪の犠牲者のために正義を実現することに関しては、世間の大きな支持があります」と、マイケル・ボヘネクは述べた。

「裁判所が各事案で直面している大きな課題を克服するためには、ICCの活動に対する世界的の支持が欠かせません」

アムネスティは、いまだに拘束されていない11人のICCの逃亡者を逮捕し、被災地の民間人を保護するという国連の重要な役割を支持している。そしてこのメッセージを、潘基文(パン・ギムン)国連事務総長に送るよう、世界中の人びとに呼びかけている。

当組織は、国家当局が虐殺、人道に対する罪、戦争犯罪を調査・訴追することができない、もしくは行うつもりがない場合、その役割を期待して2002年の国際刑事裁判所の設立を強く支持した。

アムネスティ発表国際ニュース
2012年3月15日

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