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日本:東電社員殺害事件を機に、代用監獄制度を改善すべき

2012年8月 2日
[公開書簡]
国・地域:日本
トピック:取調べの可視化

バンコック カトマンズ機内でのゴビンダさん (C)無実のゴビンダさんを支える会
バンコック カトマンズ機内でのゴビンダさん (C)無実のゴビンダさんを支える会

東京高等裁判所は7月31日、東京電力の女性社員殺害事件で無期懲役が確定したゴビンダ・プラサド・マイナリさんに対して今年6月に出された、再審開始決定に対する東京高検の異議申し立てを棄却した。アムネスティ・インターナショナルは、この決定を歓迎する。マイナリさんは、殺害の罪で15年間拘禁されていた。

ネパールからの移住労働者であるマイナリさんは、当初、1997年3月にビザの失効を理由に逮捕された。しかし、警察はその後、マイナリさんに対し、東電女性社員(39歳)の殺害についても尋問。マイナリさんは1997年5月、殺人容疑で起訴された。

東京地裁は2000年4月14日、マイナリさんに無罪判決を言い渡した。しかし、東京高裁は同年12月、一審判決を覆し、殺害の罪でマイナリさんに無期懲役刑を言い渡した。アムネスティは以前より、マイナリさんが公正な裁判を受ける権利を侵害されている、との懸念を表明してきた。

マイナリさんは一貫して犯行を否認し、「検察は自分に有利な証拠を開示していない」と主張してきた。そして、2010年9月、検察はついに、被害者の体内から採取された精液のついた冷凍保存のガーゼを開示した。このガーゼのDNAは、犯行現場で発見され、第三者がいたことを示す精液と体毛に一致した。これによって、検察の主張とマイナリさんの有罪判決に重大な疑念が生じた。そして、東京高裁は今年6月7日、マイナリさんの釈放と再審開始の決定を言い渡した。

しかし、検察は誤判を招いた責任を受け入れるどころか、東京高裁に異議申し立てをした。今回、その異議申し立てが棄却された。アムネスティは現在、検察がこの異議申し立て棄却の決定に対し、最高裁に特別抗告をするのではないかという懸念を持っている。検察は、東京高裁の決定に対して特別抗告をせずに再審開始を受け入れ、マイナリさんに対する誤判を正すべきである。

日本の刑事司法制度の根本的な問題点

東京高裁は取り調べに関する問題に基づいて再審開始を決定したが、マイナリさんの事件は、改善に取り組まれていない日本の刑事司法制度の根本的な問題点を浮き彫りにした。

1997年の最初の逮捕後、マイナリさんの弁護士は取り調べの立会いを認められなかった。代用監獄制度の下では、被疑者は最大23日間にわたって拘禁され、弁護士との接見も制限される。弁護士は取り調べに立ち会うことは認められない。1997年4月、マイナリさんの弁護士の一人が彼を訪ねて渋谷警察署に行ったが、警察から接見を拒否された。マイナリさんは殺害事件の関係で、検察庁に行っているとのことだった。検察庁に着くと、その弁護士は再び接見を拒否され、依頼人が「任意で」取り調べに応じていると告げられた。

マイナリさんは、起訴前の代用監獄での拘禁中の取り調べで、「警察官に揺すられたり、押されたり、叩かれたり、蹴られたりし、テーブルを使って壁に抑えつけられたりした」と弁護士に告げた。

地裁は弁護人接見に対する妨害について、当局に35万円の支払いを命じたものの、当局は虐待を受けたとのマイナリさんの主張に対する独立した調査を行っていない。

アムネスティ・インターナショナルの要請

マイナリさんの事件は、日本で続く誤判事件の最も新しいものであり、日本の代用監獄制度に伴う深刻な問題点を浮き彫りにした。

そこで、アムネスティは日本政府に対し、以下を要請する。

  • 代用監獄制度を廃止する、または国際人権基準に沿った拘禁制度に改革すること
  • 被拘禁者に対し、取り調べ中の弁護人の立会いを確保すること
  • 立ち会った人物の判別ができる記録を含め、確実に取り調べの全過程の録音・録画、記録を行う。この録音録画、記録を被拘禁者と弁護人が間違いなく入手できるようにすること
  • さらに、被拘禁者がいる可能性のある拘禁施設のあらゆる場所を観察できるような録音・録画を取り入れること。ただし、拘禁者のプライバシー権や、弁護人や医師との秘密交通の権利を害する場所は除く
  • この記録は適切な期間、安全な施設に保管し、捜査官や被告人、その弁護人が申し立てをする際に入手できるようにすべきである

背景情報

菅家利和さんは、自分が犯してはいない罪によって17年間の拘禁後、2009年に無罪となった。菅家さんは代用監獄制度の下での警察による取り調べの後、犯罪を「自白」した。かつて菅谷さんの有罪判決を決定づけたDNA鑑定の証拠が不確かなことが判明し、無罪に覆った。菅家さんは原審の法廷で「自白」を撤回し、「自白を強要された」と主張していた。

日本の代用監獄制度の下で、被疑者は最大23日間にわたって起訴もないまま警察の留置場に拘禁される。拘禁されている間の取り調べの時間について規則はない。そして、取り調べのすべての記録が取られているわけではない。事実上、捜査官はしばしば、弁護人と協議する権利を制限している。弁護人は申請後、依頼人に接見できるのは数日後であることが多い。弁護人による接見はわずか15分程度に制限されることも珍しくない。

日本の刑事司法制度は自白偏重であり、自白は多くの場合、代用監獄制度の下で被疑者が勾留されている間に得られるものである。代用監獄制度は、拷問や虐待を通して自白を得るために日常的に利用されている。アムネスティは、殴打や脅迫、睡眠時間のはく奪、早朝から深夜に渡る取り調べ、被疑者を長時間不動で立たせたり座らせたりするなどのさまざまな方法を記録している。

2007年5月、国連の拷問禁止委員会は日本政府に対して、取り調べ中の弁護人の立会いと、すべての取り調べの録音・録画と、刑事裁判におけるそういった記録の公開が確実に行われるように勧告した。国連自由権規約委員会は2008年10月、日本政府への最終見解で、この勧告を再び繰り返した。しかし、政府はその勧告をいまだ実行に移していない。


アムネスティ・インターナショナル公開書簡
2012年7月31日

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