2022年2月のロシアのウクライナ侵攻は、世界に大きな衝撃を与えました。国際人道法・国際人権法を歯牙にかけない数々の軍事作戦がウクライナの人びとの人権を著しく危険にさらしていることを、アムネスティは精力的な調査・検証を通じて、広く世界に訴えました。アムネスティ日本も侵攻直後から署名活動やイベントなどを開催し、ロシア政府に対し直ちに戦争をやめるよう、強く働きかけました。

新型コロナウイルス感染症の爆発的な流行への対策を名目に人権を蔑ろにする動きは2022年も続き、加えて、正義、自由、平等を求めて声を上げた人びとに対して警察や軍隊が過剰な暴力や武力を用いて取り締まるなど、人権を守るために活動する人びとに対する弾圧も、深刻化しています。この事態に対しアムネスティは、抗議する権利を守るためのグローバルなキャンペーンを開始し、アムネスティ日本でも署名やセミナー、ワークショップなど、オンラインを中心に活動を展開しました。

国際的に行ったキャンペーン

パレスチナ人に対するアパルトヘイトに終止符を

20万筆の署名を提出!パレスチナ人に対するアパルトヘイトに終止符を

家を取り壊され、土地を取り上げられ、壁とフェンスや検問所で移動の自由を奪われる――イスラエルが推し進めるアパルトヘイトによって、パレスチナ人の人権は70年以上にわたって踏みにじられてきました。繰り返される紛争や人権侵害の結果、今も約600万人のパレスチナ人が難民として生きていくことを余儀なくされています。

アムネスティはアパルトヘイト解体の第一歩として、請願書「パレスチナ人の家ではなくアパルトヘイトを解体せよ」を署名とともにイスラエル当局に届け、パレスチナ人の家の取り壊しに終止符を打つよう要請しました。署名活動には、少なくとも174の国と地域の20万人以上の人たちが参加し、日本からも約1,300筆の署名が集まりました。

緊急対応

■ウクライナ

2月24日、ウクライナに侵攻したロシア政府に対し、アムネスティは、侵略を直ちに終わらせ、戦闘に関わっていない一般市民を保護し、国際法を遵守するよう求めるオンライン署名を世界中で展開。アムネスティ日本でも約7,500筆を集めました。現地の状況を知りたいという声に応え、ウクライナ人の人権活動家や現地で活動するジャーナリストなどを招いて、オンラインイベントを複数回開催しました。また、香港人ジャーナリストのクレ・カオルさんの写真展とトークを、東京、神奈川、岩手、愛知の4カ所で行いました。

■イラン

クルド系イラン人女性ジーナ・マフサ・アミニさんの拘束と急死を発端にイラン全土に広がった抗議デモ。イラン政府はこれを武力で弾圧し、多くの抗議者が殺害され、逮捕・起訴されました。この事態に、アムネスティは独立した調査機関の設置を求め、世界中で署名活動を展開、76万筆の署名が集まりました。こうした動きもあり、国連人権理事会は11月上旬、事実調査団の設置を決定。 アムネスティ日本は12月、外務大臣政務官と面会し、イラン政府の人権侵害への抗議、デモ参加者への武力弾圧の即時停止、国連調査団の受け入れ要求をイラン政府に働きかけるよう、前述した署名約3,500筆を添えて要請しました。

右から、外務大臣政務官の高木啓衆議院議員、アムネスティ日本活動活動マネージャー武田伸也、アムネスティ議連・牧山ひろえ参議院議員

国内法制度の取り組み

難民・移民の権利を守る

2021年3月にウィシュマ・サンダマリさんが死亡した事件に続き、2022年も入管施設に収容されていた外国人男性が命を失う事件があり、入管収容のあり方への批判が強まりました。アムネスティ日本は、「入管法は今が岐路――排除をやめて共生へ」などのイベントをパートナー団体と開催し、難民の受け入れ、および入管の現状とそのあり方の改善を訴えました。 11月には、入管施設の実態調査のためにアムネスティ国際事務局の調査員が来日し、収容中の外国人および仮放免中の人への聞き取り調査を行い、その結果をプレスリリースで全世界に配信しました。

LGBT差別をなくす!Z世代の意識調査と記者会見

7月の参議院選挙を前に「LGBT差別禁止を求めるユースの声を政治に届ける」ため、ユースのメンバーが中心となり、Z世代を対象に差別禁止の法制化に関する意識調査を実施しました。また、政治に届きにくいユースの声をメディアを通じて広く伝えてもらおうと、記者会見を行いました。意識調査では、Z世代の約8割が差別禁止法の制定に賛成しているという結果に。

記者会見を行ったユースのメンバー

死刑廃止

5月に2021年死刑統計(日本語抄訳)を発表したほか、7月の死刑執行の際には、抗議声明を発表するとともに、パートナー団体と抗議記者会見と集会を行いました。死刑廃止ネットワークチームが中心となり、東京と大阪で定期的に「死刑廃止を考える」入門セミナーやトークイベントを開催し、死刑廃止を訴えました。他にも、袴田巖さんの再審を求める活動を引き続き行い、12月にはパートナー団体とともに集会を開催しました。

気候変動に伴う人権侵害をなくす

7月、国連総会は「清潔で健全かつ持続可能な環境で暮らす権利」を認める画期的な決議を採択しました。それに先立つ2021年10月の人権理事会による同様の決議で日本が棄権にまわったことから、アムネスティ日本は、国連総会の決議では賛成票を投じるよう、日本政府に要請書を提出しました。12月には、気候変動の悪影響から現在および将来の世代の権利を守るために国家が負うべき義務とは何か、を明らかにすることを目的とした「気候変動に関する国家の義務について国際司法裁判所の勧告的意見を求める国連総会決議案」への支持を日本政府に要請しました。その他、日本政府に気候変動対策の強化と石炭利用の廃止を求める署名を昨年から継続して実施。また、ユースを対象としたワークショップや国際交流会を開催しました。

ビジネスと人権

昨年に引き続き、「ビジネスと人権市民社会プラットフォーム(BHRC)」の幹事団体のひとつとして活動を行いました。 他にも、9月には「責任あるサプライチェーンにおける人権尊重のためのガイドライン案」に対するパブリックコメントを経済産業省に提出。また、ビジネスと人権チームが中心となり、定期的に入門セミナーやイベントを開催。11月にはFIFAワールドカップカタールの開催に合わせ、その裏で踏みにじられてきた移民労働者の権利について広く伝えるオンラインイベントを開催しました。

参議院選挙の機会を活用した人権意識の啓発

7月の参議院選挙の機会を活用し、市民および立候補者の人権意識啓発に取り組みました。特設サイトで立候補者の人権意識のアンケートを公開、また、人権の視点で選挙を考えてもらおうと、ハッシュタグキャンペーン「#選挙は人権で考える」を行い、政治家に取り組んでほしい人権問題をツイートするよう呼びかけました。

オンラインアクションとセミナーの連動

2022年は10件のオンラインアクションを展開しました。このうち、米国イランアフガニスタンスリランカのケースではアムネスティ日本のEnglishグループが中心となり、オンラインセミナーを開催し、現地の活動家の声や私たちにできることをなどを一緒に考えました。

<2022年に展開した主なオンラインアクション>

イベント

ライティングマラソン2022

ライティングマラソン

暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人たちの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」。2022年はほとんどの国で新型コロナウイルスに関する規制がなくなり、世界中でオフラインイベントが復活。マラソン大会や音楽コンサートなど、さまざまなイベントが開催され、5,320,261通の手紙やハガキ、署名が関連当局や人権侵害に遭っている人たちに届けられました。日本国内でも、26のグループとチームが全国各地でイベントを行いました。

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