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死刑廃止 - 著名人メッセージ:中道武美さん

中道武美さん(弁護士)

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■死刑には反対です

人間にとって、もっとも大切な人権の根幹である生命を、その人の意に反して国家が奪うということは、刑罰としては許せません。そして、人間の裁判である以上、まちがうこともありうるわけで、まちがって命を奪ったら、とりかえしがつきません。

また、命を奪う事によって世の中の秩序が保たれるわけではないので、死刑は、刑罰としては不必要で残酷だといえます。

■裁判制度としての死刑には矛盾があります

日本では、無期懲役の次が死刑で、その間にはたいへん大きな格差があります。そして、判決では、その間の基準があいまいで、結局は、裁判所や裁判官の考え方によって、ある時は死刑、ある時は無期となります。

とりかえしのつかない命を奪うということが、そのように恣意的に行われてよいのでしょうか。

実際の事件で、証拠はほとんど同じなのに、一審では死刑、二審では無期ということがありました。判決の言葉などからみると、このちがいは、裁判官がどういう人間観、人生観をもっているかで決まったといえます。つまり、人間の未来の可能性を信じているか、人間は犯罪をおかすものと宿命論的に信じているか、このちがいで、判決にあまりにも大きな差がうまれるのです。

被告人の命は、裁判官のこの人間観に左右されています。つまり、裁判官の主観的で個人的な考え方で決まるといえるのです。

しかし、司法制度、刑罰制度で大切なことは、客観的であるということが、その正当性の根拠であるということです。 それなのに、裁判官のいわば人生観で変わりうるという制度はおかしくないでしょうか。

たとえば、政治的な反対者を死刑にするということは、恣意的な権力の行使といえますが、つきつめて考えてみると、恣意的という意味ではそれとほとんど同じようなものだといえないでしょうか。

■被害者の人権や、無念さについて

死刑廃止というのは、加害者の命を救うというより、国家権力が人の命を奪ってはいけないといっていると思います。その意味では、被害者の人権や命を奪ってはいけないというところと、同じ基盤に立っているのです。

もちろん、被害者の人権は100%保障されるべきで、それを前提にして、死刑廃止をいっているのです。対立するのではなく、並存するものです。

被害者に対する差別やケアなどが、今、日本社会の問題になっていますが、それに真剣に取り組む事と死刑廃止は同じ基盤に立っていて、両方を尊重しているのです。

■被害者の救援について

被害者のご遺族は、事件がおこった時点で、人生のすべてが変わってしまいます。物理的にも、精神的にもたいへんな苦痛を被ります。

そして、犯罪という点からみれば、それは必然的な確率で社会におこることであって、これは、個人的な問題というより、社会的な問題だと思います。犯罪を社会的なものとして、またその被害も社会の問題として引き受けなければならないと思います。

しかし、今、被害者は、補償など物理的にも精神的にも、ほとんどなにも社会からしてもらってないに等しいです。ケアが本当に必要です。

■死刑執行について

法律上は、確定後6ヶ月以内と決まっていますが、運用上それは無視されています。実際の基準はなく、拘置所の所長が死刑囚の様子を見て、法務省との相談で決めるのです。死刑囚からみれば、これも恣意的に決められてしまうという意味で、問題だと思います。

■冤罪と死刑

国家の法治主義にとって、冤罪者を処刑してしまうことは、絶対にやってはならないことです。 人間の文化としても同様です。だからこそ、永い人類の知恵の中で、10人の真犯人を逃がしても、1人の無実の人を罰してはならないという教訓を得てきたのです。

無罪の推定、疑わしきは罰せずということです。

人間の事実認識には、限界があります。たとえ、最高裁で確定しても、法律上は確定かもしれませんが、事実と真理の上でも完全に確定といいきれるのでしょうか。誤りがあるかもしれないと考えれば、当然、確定後の再審も視野にいれなければならないはずですが、死刑はその可能性を遮断してしまうのです。

刑事司法制度は、推定無罪、疑わしきは罰せずという人間の知恵の中で、法律を作ってきたのに、死刑だけがその枠をはみだしているのです。 

■犯罪に対する抑止力について

犯罪をおかす人は、その時点で、理性的、論理的思考などできない状態です。無期だろうが、死刑だろうが、そんなことは考えていません。犯罪を減らそうと思ったら、刑罰などでしばってもだめなのです。

不景気の時は、犯罪が増えます。経済政策、社会政策がもっとも犯罪抑止には大切です。

(この原稿は、アムネスティの死刑廃止入門ビデオ「死刑廃止を考える」作製のため、1998年に行われたインタビューの一部を、読みやすく書き直したものです。)

 

中山千夏さん(作家)

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