2016年度も、世界各地でテロ、紛争が激しさを増し、世界的な難民危機が続いている。また、多くの国で人権よりも国益が優先され、安全保障の名の下で過酷な政策がとられた結果、市民の基本的な自由と権利があらゆるところで脅かされている。

国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によれば、2015年、家を追われた人の数が初めて6,000万人を超えて6,530万人となった。また母国を離れざるを得なかった難民も2,130万人となり、世界的な難民保護が求められている。こうした状況から、アムネスティは2016年、最も弱い立場にある女性や子どもといった難民が安全な場所で暮らせるよう、日本を含む先進国に行動を求めるキャンペーン「I WELCOME」を開始した。

国際キャンペーン(海外の活動)

「I WELCOME 難民の未来は、あなたがつくる。」キャンペーン

「I WELCOME 難民の未来は、あなたがつくる。」キャンペーン
© Marie-Anne Ventoura Amnesty International

10月、最も弱い立場にある女性や子どもといった難民が安全な場所で暮らせるよう、先進国に行動を求めるキャンペーンを世界中で開始した。「難民を受け入れよう」という市民一人ひとりの声を日本政府に届けるため、公式サイトとハガキでの署名活動を推進している。

それに先立ち9月には、国連で開催された難民・移民に関するハイレベル会合やオバマ米大統領主催の首脳級会議で、日本がより積極的に「責任分担」をはたすよう日本政府に要請し、他団体と共同で記者会見を行った。

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拷問廃止キャンペーン

拷問廃止キャンペーン

2014年に始まったグローバルキャンペーン「Stop Torture 拷問なんて、いらない!」が6月に終了。2016年は、拷問被害者のアルメンタさんのケースをはじめ、メキシコで軍や警察による女性への性暴力が横行している問題を取り上げ、署名活動やフォトアクションを行った。

2年間でキャンペーンに参加した人は世界で200万人を超え、日本からも11,000人以上が声をあげた。アムネスティが取り組んだ16ケースのうち、半分の8ケースで、被害者が受けた拷問の調査開始、加害者の処罰、釈放、無罪判決を勝ち取った。重点対象国であるメキシコ、ナイジェリア、フィリピンでは、国の制度や取り組みにも変化があった。

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北朝鮮の家族をつなげ!Connection Denied

北朝鮮の家族をつなげ!Connection Denied

朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)の通信への取り締まりと規制で、苦境に追いやられる北朝鮮の人びとを守るために、外務省への申し入れや署名活動などを行った。12月の国連総会決議にアムネスティの報告書の内容と要請が反映された。

記者会見の様子

コバルトと児童労働

児童労働

アムネスティが1月に発表した報告書「命を削って掘る鉱石(原題: This Is What We Die For)」で、コンゴ民主共和国のコバルト鉱山で起きている人権侵害が明らかになった。採掘されたコバルトは、スマートフォンやノートパソコン、デジタルカメラなど、わたしたちの身近なものに使われてることから、アムネスティはその調達過程での人権侵害をなくすため、企業を指導するよう日本政府に求める署名やフォトアクションを行った。

迷信で命の危険にさらされるマラウイのアルビノの人たち

駐日マラウイ大使館を訪問し、公使に直接署名を提出

東アフリカ・マラウイで、迷信によって誘拐や手足の切断、殺害といった危険にさらされているアルビノ(先天性白皮症の患者)の人びとを守るため、署名活動を行い、2,100人以上が参加した。また、駐日マラウイ大使館を訪問し、公使に直接署名を提出した。この活動では、世界で22万人以上がアクションに参加、アルビノの人たちを暴力から守る国内法制度の改善につながった。

報告:公使に直接署名を提出

2016年に展開した主なアクション

イベント

ライティングマラソン

ライティングマラソン
「一人ではないのだと知り、心から嬉しく思っている」と語るマキシマ・アクーニャさん

暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人びとの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」。2016年も、全国30カ所でグループチームが主催し、手紙書きのイベントなどを開催した。

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講演会を全国4カ所で開催「難民危機に日本は何ができるのか」

「難民危機に日本は何ができるのか」

深刻化する難民問題。問題解決に向けて市民団体や国際社会、日本政府が果たすべき役割とは何か、について広く伝え、一緒に考える講演会を、東南アジアで難民の人道支援に取り組む専門家リリアン・ファンさんをゲストにお招きし、11月27日から12月6日、全国4カ所で開催した。

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アムネスティ映画祭・関西2016

アムネスティ映画祭・関西2016

5月21、22日の2日間、関西では初となるアムネスティ映画祭を開催。2日間で述べ479名の方にご参加いただいた。また、映画上映後、お二人の講師をお招きし、映画に関連した講演会を行った。

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国内法制度への取り組み(国内の活動)

表現の自由に関する特別報告者の公式訪問

4月、表現の自由に関する特別報告者が日本政府の招待により公式訪問した。その際、市民社会の側から情報提供に協力した。

人種差別に関する政策・法律に関する日本支部声明を発表

4月、国際人権基準の観点から、朝鮮学校の補助金に関する文科省通知について、「政治的判断に基づいて特定のマイノリティ集団の教育の権利に対する差別的取扱い助長する恐れ」があるとの懸念声明を出した。5月、ヘイトスピーチ解消推進法が成立したが、同法に紗月の定義がなく保護対象が狭い問題を指摘、より包括的な差別禁止法の成立の必要性を訴える声明を出した。

死刑廃止

4月6日、統計報告書「2015年の死刑判決と死刑執行」の記者説明会を参議院会館で開催した。また、「世界の死刑統計2015~死刑とテロ 終わらない報復の連鎖~」と題し、駐日欧州連合代表部公使参事官・政治部部長ファビアン・フィエスキさんをお招きし、EUの死刑廃止に対する取り組みとテロ行為に対する刑罰や報復としての死刑を選択しないことについて講演を行った。

3月25日に2人、11月11日に1人、計3人の死刑執行があり、抗議声明を出すとともに、記者会見および法務省前での抗議行動を行った。

さらに、危機にある個人として死刑確定者の支援を行っており、松本健次さんの支援の一環として精神疾患を有する死刑確定者の処遇の問題について情報収集を行っている。執行停止を呼びかける署名を集めるほか、国際事務局と連携し世界の医師会へ問題を取り上げるよう要請を行っている。袴田巖さんについては、再審開始に向けて他団体と協力して検察庁へ要請を行っている。

難民

国際キャンペーン「I WELCOME」と連動し、日本での受け入れを求める政策提言を他団体と連携して行った。

9月19日の国連総会の難民・移民に関する国連ハイレベル会合と20日のオバマ大統領主催の難民に関する首脳級会議に向けて、日本の難民支援の充実を求める申し入れを22団体と共に外務省、内閣官房に対して行った。また、国連会合に関しては、アムネスティ単独での要請も行った。

2015年に第5時出入国管理基本計画が発表され、運用の見直しが進んでおり、その影響等についてUNHCRなど他団体と情報共有を進めている。

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