無罪を勝ち取ったメリケ・バルカンさん(左)とオズギュル・ギュルさん(右)。2人は2020年夏に大学を卒業した後、NGOを立ち上げ、LGBTIの若者の権利のために活動している

無罪を勝ち取ったメリケ・バルカンさん(左)とオズギュル・ギュルさん(右)。2人は2020年夏に大学を卒業した後、NGOを立ち上げ、LGBTIの若者の権利のために活動している

トルコの首都アンカラの中東工科大学の学生だったメリケ・バルカンさんとオズギュル・ギュルさんは、2019年5月に校内でLGBTI(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー、インターセックス)の権利を訴えるための座り込みを行なったために、他の学生、教員とともに逮捕・起訴されました。

有罪となれば3年の実刑を受けるおそれがある中、新型コロナウイルスの影響で裁判は2年以上にわたって延期。逮捕から2年以上が経った2021年10月、ようやく最終的な判決を行うための審理が行われ、同月8日、アンカラの第1審刑事裁判所は、全員に無罪判決を言い渡しました。

同性愛嫌悪が高まるトルコ、禁止されるプライドマーチ

メリケさんとオズギュルさんが在籍していた中東工科大学では、2011年以来、毎年プライドマーチが行われていました。ここでいう「プライド」とは、LGBTIであることに誇りを持ち胸を張って生きていくという意思を示す言葉であり、プライドを祝う、あるいはLGBTIの権利を主張する、さまざまな催しを指す言葉でもあります。

「トルコのLGBTIの人たちにとって、プライドは非常に重要です。トルコではLGBTIの人たちが自分らしく生きることがとても難しい。しかし、プライドでは、仲間と一緒になれる、ありのままの自分でいられる。それは重要な感覚であり、癒しの力があるのです」 -メリケ・バルカンさん

しかし、エルドアン大統領率いる現政権のもとで同性愛嫌悪が高まるトルコでは、各地でプライドイベントを禁止する動きが広まっています。トルコ最大の都市イスタンブールでは、2003年にイスラム圏で初めてとなるプライドマーチが開催されました。しかし、2015年に同都市で開催されたプライドマーチは、催涙ガスやゴム弾を使った警察の妨害に遭い、2016年以来、同都市でのプライドマーチは禁止されています。

トルコ、イスタンブールのプライドマーチ(2019年)。市内各所でのマーチは禁止されたが、交渉の結果、参加者はタクシム広場近くのミス・ストリートに集まることが許され、プライド組織委員会の代表が声明を読み上げた。 

トルコ、イスタンブールのプライドマーチ(2019年)。市内各所でのマーチは禁止されたが、交渉の結果、参加者はタクシム広場近くのミス・ストリートに集まることが許され、プライド組織委員会の代表が声明を読み上げた。©Amnesty International Turkey/Fırat Doğan

中東工科大学でも2011年以来、毎年恒例となっていたプライドマーチが、2019年、大学当局によって中止されました。

これに抗議して、メリケさんとオズギュルさんをはじめとする大学のLGBTIサークルのメンバーは、マーチの代わりに座り込みを行いました。これに対し、大学側は警察を呼び、警察は催涙ガスなどを使って参加者を追い散らし、教師・学生あわせて23名を逮捕しました。検察は、プライドの座り込みを「違法な集会」とみなし、集会とデモに関する法律に基づいて、「警告されたにも関わらず解散しなかった」として19人を起訴したのです。

2年の時を経てメリケさんたち19人は、無罪を勝ち取りました。しかし、依然としてプライドマーチは禁止されており、トルコのLGBTIコミュニティは困難に直面しています。トルコ政府は、プライドマーチを禁止するすべての法律や条例をなくすべきです。

アムネスティの取り組み

LGBTIの権利を平和的な手段で訴えただけで投獄の危機にさらされている学生たちを救うため、アムネスティは世界中で起訴取り下げを求める活動を展開し、日本でもオンライン署名や2020年のライティングマラソンで手紙書きを行いました。ライティングマラソンには、メリケさんとオズギュルさんも積極的に参加し、各国支部のオンラインイベントに登壇したほか、外交官や他団体にも働きかけ、自分たちのケースを通じてトルコのLGBTIの人たちがおかれている現状を広く世に伝えました。

要請活動に参加してくださった皆さん、ありがとうございました!

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2019年5月、台湾でアジア初の同性婚が認められるなど、LGBTを取り巻く状況が大きく前進した国がある一方で、偏見や嫌悪が根強い国、法律で罰する国もあります。「世界のLGBTニュースブログ」では、そうした世界のLGBTの最新情報を伝えています。世界の状況を知り、日本がどこに向かうべきなのか、考えてみませんか。

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