2021年、ミャンマーでは国軍によるクーデターで、アフガニスタンではタリバンの復権で、市民が勝ち取ってきた自由が一瞬にして崩れ去り、人道危機に陥りました。この事態を前に国際社会の対応は足並みが揃わず、危機的な状況は続いています。世界のあちこちで自由や平和のために声を上げる市民が押さえつけられている現状も相変わらずです。こうした状況の中、アムネスティ日本は、人権を守りたい、取り戻したい、と願う人たちと力を合わせ、2021年もさまざまな活動に取り組みました。

国際的に行ったキャンペーン

新疆ウイグル自治区での大量収容と拷問を止めて!

新疆ウイグル自治区で不当に拘束されている人たちの釈放を求める嘆願書を、世界各国の中国大使館に提出

中国の新疆ウイグル自治区では、カザフ人やウイグル人などイスラム系住民が大量に拘束され「再教育センター」や「就職訓練センター」と呼ばれる収容施設に収容されています。その数は100万人以上とも言われています。

アムネスティは新疆ウイグル自治区での人権侵害の実態を、20カ月以上にわたって調査して調査結果を公表するとともに、収容されている人たちの解放を中国政府に求める活動を世界中で行いました。日本でもオンラインで署名活動を行い、日本の5,382筆を含む、世界184の国と地域から323,832筆の署名が集まり、各国の中国大使館に提出しました。

緊急対応

■ミャンマー

外務省大臣政務官と意見交換および要請書を提出

2月、ミャンマー国軍がクーデターにより政権を掌握。その後、国軍は大規模な抗議デモを行った市民に対し、戦闘用の武器まで使用して過酷な弾圧を続け、100日間で800人もの市民が殺害されました。

アムネスティ日本は、2月8日に外務省人権人道課へ要請書を送付、また、6月9日には外務大臣政務官との面談を通じ、ミャンマーへの武器禁輸措置、平和的なデモ参加者に対する暴力行為の停止、アウンサンスーチーさんらの即時釈放などを呼びかける国連総会決議案を日本政府が支持するよう要請しました。また、国連安全保障理事会がさらなる行動を起こすよう、日本政府があらゆる外交努力を行うことも求めました。

その他にも、オンラインでの署名活動やミャンマーの民主化運動に30年以上にわたり携わってきたキン・オマールさんを招いて、オンライン講演会「ミャンマーの今」を開催しました。

■アフガニスタン

アフガニスタンでは、過去に強制連行や集団強かん、大量殺戮など、組織的な人権侵害を行ったタリバンが、8月、米軍撤退直後に政権を掌握しました。その結果、人権活動家、市民活動家、ジャーナリスト、学者、女性の指導者などが、迫害や攻撃の危機にさらされました。

アムネスティ日本は9月9日、外務大臣政務官と面会し、アフガニスタンに関する国連調査機関の設置に向けて行動するよう、そして市民の安全な避難を支援するよう求める要請書を手渡しました。

中西大臣政務官との意見交換の様子

国内法制度の取り組み

LGBT差別の撲滅をめざす「Love Beyond Genders」キャンペーン

性的指向や性自認を理由とした差別禁止の法制化によってLGBTに対する差別をなくすため、2017年から引き続き、キャンペーン「Love Beyond Genders」に取り組みました。新型コロナ感染症の拡大のために開催が延期された2020東京オリンピック・パラリンピックを機にメディアを活用した世論形成を行ったほか、国会で与野党がLGBT関連法案を協議した際には、性的指向や性自認を理由とした差別禁止を明確に規定するよう求める要請書を日本政府に提出しました。

難民・移民の権利を守る

前年に引き続き、日本における外国籍の人たちの収容問題に焦点を当てて活動しました。日本の法律では、収容の合理性と必要性、期間の上限が明確に定められていません。しかも裁判所による審査もなく、行政機関の権限で収容が行われており、このことは恣意的な拘禁であり国際法違反だと、アムネスティ日本は国際人権基準に則った法改正を求めてきました。

しかし、2021年2月に閣議決定され国会で審議されることとなった入管法改正法案は、国際人権規準を十分に満たすものでないばかりか、迫害を受ける恐れのある国への送還を禁じるノン・ルフ―ルマン原則に反するなど、現行法よりさらに人権擁護が後退するものでした。

アムネスティ日本は、国際人権規準に則った法改正を行うよう求める提言を発表するとともに、パートナー団体や弁護士と協働して院内集会の開催や議員に対するロビー活動、国連人権理事会への介入要請、記者会見などを行いました。

死刑廃止

4月に2020年死刑統計(日本語抄訳)を発表したほか、死刑廃止ネットワークチームが中心となり、東京と大阪で定期的に「死刑廃止を考える」入門セミナーを開催して死刑廃止を訴えました。また他団体と連携して「響かせあおう死刑廃止の声2021『司法がつくる差別、司法がただす差別』」や没後一周年の免田栄さんを偲ぶ会を開催しました。危機にある個人として支援を行っている袴田巖さんへの支援活動の一環として、再審を求める活動を引き続き行い、12月10日にはパートナー団体とともに「東京高裁は今度こそ再審開始を」集会を憲政記念会館で開催しました。12月21日には約2年ぶりに再開された3人の死刑執行に抗議して声明を発表し、記者会見を行いました。

衆議院選挙の機会を活用した人権意識の啓発

10月の衆議院選挙の機会を活用し、市民および立候補者の人権意識啓発に取り組みました。人権の視点で選挙を考えてもらおうと、「#選挙は人権で考える」ハッシュタグキャンペーンを展開し、政治家に取り組んでほしい人権問題をハッシュタグをつけてツイートするよう呼びかけました。また、特設サイトを開設して日本社会が抱える7つの人権課題をイラストでわかりやすく開設し、インスタグラムなどのSNSでも訴求しました。一方、立候補者に対しては人権意識のアンケートを実施し、特設サイトで回答を公開しました。

衆議院選挙の機会を活用した人権意識の啓発 #選挙は人権で考える

オンラインアクションとセミナーの連動

国際交流カフェ「タイの民主化運動の学生リーダーが、デモの現状と警察の暴力について語る! 」

2021年は13件のオンラインアクションを展開しました。このうち、ベラルーシ、カンボジアタイのケースではオンラインセミナーを開催し、当該国の活動家の声を直接伝えました。

<2021年に展開した主なオンラインアクション>

イベント

ライティングマラソン2021

ライティングマラソン

暴力をもちいていないのに、自らの信念や人種、宗教、肌の色などを理由に囚われの身となった人びとの自由を求め、世界中の仲間とともに手紙を書く、アムネスティ恒例のイベント「ライティングマラソン」は、2021年で20周年を迎えました。新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、2021年も世界120の国と地域で、たくさんの人たちがオフラインやオンラインで行動を起こし、4,657,104通の手紙やハガキ、署名が関連当局や人権侵害に遭っている人たちに届けられました。日本国内でも、24のグループとチームが全国各地でイベントを行いました。

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